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王座はく奪から4年…NYの殿堂で世界タイトルに挑む尾川堅一にインタビュー

杉浦大介スポーツライター
Photo By Danny Suriel

11月27日 ニューヨーク MSG Huluシアター

IBF世界スーパーフェザー級王座決定戦

同級2位

アジンガ・フジレ(南アフリカ/25歳/15勝(9KO)1敗)

12回戦

同級3位

尾川堅一(帝拳/33歳/25勝(18KO)1敗1分1無効試合)

 *尾川のインタビューは現地23日、マンハッタンで催された公開練習時に収録された

望んでいた2度目の米リング

――大一番が今週末に近づきましたが、現在の状態はいかがですか?

尾川堅一(以下、KO) : 今日も先ほど練習を終えまして、体重ももう1キロちょっとオーバーと順調です。日本でやるのと変わらない体重調整ができているので、あとはコンディションの調整。ちょっと寒いので、その辺を気をつけるだけですね。もう今さら何かをやっても変わらないので、あとはコンディションだけです。

――「いつになく試合が楽しみ」というコメントをされているのを読みましたが、それはどういった理由でしょう?

KO : まずは世界タイトル戦というモチベーションが大きいです。あと、アメリカでやりたかったというのもあります。(開催地が)ドバイからアメリカに変わったわけですけど、そのへんもモチベーションになっています。また、試合がなかなかできていなかったので、自分がどれぐらい成長しているかという楽しみもあります。試合の緊張感はやはりワクワクするものがあり、それをこのニューヨークという地でできるというのは楽しみです。

――ドバイからニューヨークに開催地が変わったのは嬉しい変化だったんですね。

KO : 4年前、(ラスベガスで戦った)あの興奮は忘れていないので、もう一度その興奮を味わいたいというのはあります。だからアメリカでもう1回という気持ちです。

――アメリカの興行は試合直前まで各種のイベントが行われるのも特徴ですが、まだ体重調整が厳しい時期でもそれほど気にならないですか?

KO : これが普通なのかなと思うので、別に嫌でもないですし、受け入れていますよ。相手も一緒ですし、その辺は楽しんでいこうかなという感じです。こういうのが世界タイトル戦だなという感じで、楽しいです。日本みたいにチャンピオンだから、世界戦だからっていっぱい気を遣ってもらうよりも、こうやって自由な感じでやる方が僕は好きですね。

――先ほど初めて相手のフジレと対面しましたが、印象は?

KO : もう少し小さいかなと思ったんですけど、身長も同じくらいですね。低く構えるので、(リング上では)僕より小さくなるのかなと思いますけど、まあ予想通りかなという感じです。そんなにイメージと変わらないです。(少し接した限りでは)とりあえずいいやつでした(笑)

――さっそく一緒に写真撮影していましたね(笑)。フジレの戦力的に気を付けるべきはどんな部分でしょうか?

KO : サウスポー特有のボクシングをするので、やはりジャブですね。そこで相手を見ないこと。やっぱり見ちゃうと相手のペース、ゆったりとしたペースになってしまうので、どこか強引にいく部分はいかないといけないと思います。相手を慌てさせること。慌てさせればスピード、パワーでは負けないと思っています。あとはもうリングに上がってみて、です。

村田諒太も憧れたMSGの大舞台へ

――相手がシャフカッツ・ラヒモフ(ロシア)からフジレに変更になったことは特に気にならなかったですか?

KO : ノンタイトルになったわけではないですし、世界タイトルは世界タイトルなので。(フジレも)挑戦者決定戦を勝ち上がってきた選手なので、いつかは絶対に戦う相手という感じではありました。だから順番が変わっただけかなという考え方です。

――「イメージは2回KO」と仰っていたのを読みましたが、想定通りの戦いができればそうなるということでしょうか?

KO : 最初から踏み込んでいって、強いパンチを振っていくつもりでいます。それがしっかりとマッチすれば、自然とそういう形になると思います。それがダメでも、アウトボクシングすればいいと思っています。いい状態で来ているので、今のイメージはそんな感じです。

――すでに何度も聞かれたと思いますが、“聖地”と称されるマディソン・スクウェア・ガーデンで戦うことに関して改めていかがでしょう?

KO : 実はあまり知らなくて、名前だけ聞いたことがあったくらいだったんです。ただ、村田諒太さんが「フェリックス・トリニダードが戦ったMSG」と言っていたので、そんな場所で先にできて「やった!」って感じですね(笑)。今後、シアターからメインアリーナに昇格できるように、チャンピオンになって、人気出してとイメージできるので、テンションは高くできますね。

――同じ帝拳ジム所属で、ボクシングマニアとしても知られる村田選手は少し羨ましく感じているのでしょうか?

KO : 帝拳のホームページに「大好きなトリニダードがホプキンスとやった場所。そこで同僚が試合するとは・・・・・・」とコメントを出してくれていました。あれはうれしかったですね。

――調整段階で村田選手からアドバイスはありましたか?

KO : アドバイスはないです。「頑張れ」の一言ですね。「頑張れよ」って送り出してくれました。その中にいろいろな想いがあると思いますけど、とにかく「頑張ります」ということ。頑張らなければ何も生まれないですし、チャンピオンになって帰って来いということだと思うので、しっかりと期待に応えたいです。

Ed Mulholland/Matchroom
Ed Mulholland/Matchroom

――4年前は最終的には禁止薬物の陽性反応ということで世界タイトルは取れなかったですが、テビン・ファーマー(アメリカ)という後に実績を残す選手と互角以上に戦ったことはやはり自信になっていますか?

KO : ファーマーとやり合ったという事実は変わらないですし、勝ったというのは自信にはなっています。その試合前から(自分は世界レベルだと)自信はありましたけど、あの試合で確信に変わったというのはあります。

――今回は特にテオフィモ・ロペス(アメリカ)の防衛戦のセミファイナルということで世界中の多くのファンが見ると思いますが、尾川選手のどういったところを見てもらいたいですか?

KO : 評価は後からついてくるものだと思っています。ボクサーなら誰しも世界のベルトを目指すもの。ファンだったり、家族、チーム帝拳のサポートがあってここまで来れたので、まずはベルトを取るという結果で恩返しをしたいですね。世界へのアピールがどうだったかは、あとは周りの人が試合内容で決めてくれればいいかなという感じです。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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