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井上尚弥との対戦に近づくのは? カシメロ対リゴンドーの結果を現地メディアが予想

杉浦大介スポーツライター

8月14日 カリフォルニア州カーソン

WBO世界バンタム級タイトル戦

王者

ジョンリエル・カシメロ(フィリピン/32歳/30勝(21KO)4敗)

12回戦

WBA同級正規王者

ギジェルモ・リゴンドー(キューバ/40歳/20勝(13KO)1敗1分)

 世界バンタム級最強との評価を受けるWBAスーパー、IBF同級王者・井上尚弥(大橋)との対戦に大きく近づくのはカシメロか、リゴンドーか。8月14日、注目の一戦をプレミアケーブル局ショータイムが生中継する。

 この試合を在米メディアはどう見ているのか。今回、軽量級に詳しい3人の記者に4つの質問をぶつけ、バンタム級の強豪対決の行方を占ってみた。

パネリスト

ライアン・サンガリア(リングマガジンのライター。フィリピン系アメリカ人。アジアのボクシングに精通する Twitter : @ryansongalia)

ショーン・ナム(Boxingscene.comの通信員として活躍する韓国系アメリカ人ライター。精力的な取材で構築したネットワークによるインサイダー情報に定評がある Twitter : @seanpasbon)

ライアン・オハラ(リングマガジンのライター。コロラド州在住。丁寧な取材に裏打ちされた流麗な記事を執筆する Twitter : @OHaraSports)

マルコス・ビレガス(Fight Hub TVの創始者、インタヴュアー。FOXのボクシング中継で非公式ジャッジを務める Twitter @heyitsmarcosv)

1. カシメロがリゴンドーに勝つためにやるべきことは?

サンガリア : カシメロはリゴンドーを追い詰め、打ち合いに持ち込むことだ。リゴンドーの機動力は以前ほどではなく、おかげでファンを喜ばせるような試合も何度か見せてきた。今回もそんな展開になればカシメロは有利になる。

ナム : カシメロは雄牛のようにプレッシャーをかけていく必要がある。現在のリゴンドーには付け入る隙があり、より不安定なことはもはや秘密ですらない。コンスタントにプレッシャーをかけ、接近戦で強打を当てることができたなら、ストップ勝ちの可能性も出てくる。

オハラ : カシメロはより若く、アグレッシブで、強打者でもある。リゴンドーを相手に成功を収めるためには懐に入らなければならないだろう。ただ、しばらく試合から遠ざかっているとはいえ、依然として技術に秀でたリゴンドーを相手にそれをやり遂げるのは簡単なことではない。

ビレガス : カシメロには非常に難しい戦いになる可能性がある。勝つためには若さを生かし、プレッシャーをかけ、手数で勝り、運動量でリゴンドーを上回らなければいけない。結果として、リゴンドーを疲れさせるか、強打を浴びせることができれば勝利が見えてくる。

2. リゴンドーがカシメロに勝つためにやるべきことは?

サンガリア : 無鉄砲なまでにアグレッシブになりがちで、ディフェンスにも難があるカシメロをアウトボクシングできればリゴンドーは勝利に近づく。そのためには足を使い、規律正しく12ラウンズを戦い抜く必要がある。

ナム : カシメロとの距離を保ち、最大の武器である左ストレートを当てられればリゴンドーの勝機は膨らむ。カシメロはディフェンスに秀でているわけではなく、被弾する選手でもある。焦点は今のリゴンドーに力が残っているかどうか。まだ足が動くのであれば、判定勝ちを手にできるだろう。

オハラ : 最も最近のリング登場となったリボリオ・ソリス(ベネズエラ)戦でのリゴンドーは依然として必要な時にスイッチを切り替えられることを示した。ファンを喜ばせるスタイルではないが、そのやり方で複数階級制覇が可能になったのだから、本人は周囲の声などそ気にしない。リゴンドーは身長、リーチでも勝っており、それゆえにカシメロに難しい戦いを強いることができるはずだ。

ビレガス : 上質なフットワークを保っていることが勝利の条件になる。脚力が衰えていたならば厳しい戦いになるが、リゴンドーが全盛期に近い能力を保っていた場合、極めて容易なファイトになるんじゃないかと思う。距離を取り、テクニックを生かしてカシメロに付け入る隙を与えないだろう。

Sean Michael Ham/Premier Boxing Champions
Sean Michael Ham/Premier Boxing Champions

3. 試合予想

サンガリア : リゴンドーがアウトボクシングし、カシメロが後半に追い上げるという2段階のファイトになると見る。若さで勝るカシメロが判定を勝ち取るだろう。

ナム : 予想は難しいが、リゴンドーが際どい判定はもぎ取るのではないかと考えている。

オハラ : カシメロの方がアクティブだが、リゴンドーは依然として現役屈指の優れたボクサーだ。リゴンドーの3-0判定勝利を推す。

ビレガス : まだ十分に力を残したリゴンドーが大差の判定勝ちを飾る。加齢したからといって、リゴンドーがアンダードッグ扱いされているのは理解できない。

Sean Michael Ham/Premier Boxing Champions
Sean Michael Ham/Premier Boxing Champions

4. 井上尚弥との対戦はどちらが面白いと思うか

サンガリア : 井上絡みで面白い試合が見たいのなら、カシメロはその相手としては完璧な選手だ。本来であれば昨年4月に実現していたファイトで、依然として行われるべき試合。カシメロは口が立つだけではなく、実際にそれだけのことをやるだけの準備はできている。

ナム : スタイルを考えれば、リゴンドーの方が難しい相手だ。井上が消極的な選手をどう仕留めるかが興味深いという理由で、リゴンドー戦を見てみたい。カシメロは一部の人たちが考えているほど井上に脅威になるとは思わない。井上対カシメロが実現すれば、大方の予想通りに井上がKO勝ちするはずだ。

オハラ : 井上にとってはスタイル的にリゴンドーの方がやり難いと思う。カシメロには圧勝するだろう。

ビレガス : 井上対カシメロは序盤KOの可能性もあり、ファンを喜ばせるファイトになると思う。ただ、熱心なボクシングファンでもある私としては、井上がリゴンドーをどう攻略するかの方に興味がある。これまでリゴンドーに勝ったのはワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)だけ。井上にとっても試練の試合になるが、やり遂げれば歴史的な評価に大きく影響し、特別なボクサーだとアピールできる。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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