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伝説の名王者リカルド・ロペスが語る「大橋秀行、井上尚弥、ソト対高山勝成の予想」

杉浦大介スポーツライター
(写真:ロイター/アフロ)

 初の世界戦となった大橋戦の勝因とは

 現在の私はメキシコのTUDNというテレビ局で放送されるボクシング番組のアナリストを務めています。そのほかにも様々な形でコメンテーターの仕事をしています。今ではゆっくりと、幸せに暮らしていますよ。

 現役時代のことは良い思い出になっています。キャリアを通じて無敗を保てたことはもちろん誇りに思っていまし、何より幸福なのは、大きなダメージもないまま引退できたこと。振り返ってみると、私はボクサーとして、もともと想像していたよりもはるかに大きなものを手にできたと言って良いでしょう。

 幸いにも多くの試合に勝つことはできましたが、対戦した中で強いなと思うボクサーはたくさんいました。名前は忘れてしまいましたが、世界タイトル戦で対戦した韓国人ファイターは強い選手でした。それからもちろん私との対戦成績が1勝1分けだったロセンド・アルバレス(ニカラグア)。そして、大橋秀行(ヨネクラ)も良いパンチを持った選手でした。

 大橋との試合前、多くの人たちが私が負けると予想していたこともよく覚えています。だからハードなトレーニングを積んで日本に行き、おかげで予想を覆して大橋に勝つことができました。あの試合に勝てたのは、ジムでの練習によってしっかりとした準備ができたからだと今でも思っています。

2001年9月、ニューヨークでゾラニ・ペテロ(南ア)に勝った一戦がラストファイトになった。
2001年9月、ニューヨークでゾラニ・ペテロ(南ア)に勝った一戦がラストファイトになった。写真:ロイター/アフロ

 井上尚弥に抱く尊敬の念

 私は26戦もの世界タイトルマッチを戦い、その過程で多くの好敵手に出会いました。3戦(大橋、平野公夫(ワタナベ)、ロッキー・リン(ロッキー)戦)を行なった日本では、非常に素晴らしい経験をさせてもらいました。日本の人たちに親切に接してもらったことは今でも感謝していますし、日本のボクシングファン、関係者からは本当に多くのものを与えてもらったと考えています。

 大橋が今ではジムのマネージャーになり、ビジネスマンとしても活躍していることは知っていますよ。大橋は井上(尚弥)のマネージャーでもあるんですよね。井上が素晴らしいボクサーであることはもちろん知っていますし、そうやって大橋が引退後も成功していることを嬉しく思っています。

 現役時代の私が井上と対戦していたら?どんな戦いになるかは想像もできませんね(笑)。私が言えるのは、井上に尊敬の念を抱いているということだけです。 

 明日(5月8日)のエルウィン・ソト(メキシコ)対高山勝成(寝屋川石田)戦も良い試合になるでしょう。ソトはハードなファイトに備え、厳しいトレーニングキャンプを積んできました。勝敗、展開を予想をするのは難しいですが、両選手にとってタフな試合になると思います。

 プロボクサーとして成功し、こうして今でもボクシングの世界に関われている私は幸福です。今後もこれまで通り、日々の生活を楽しんで生きていきます。そして、私にこの人生を授けてくれた神に感謝し続けるつもりです。

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写真・杉浦大介
写真・杉浦大介

リカルド・ロペス:1967年7月25日生まれ。メキシコ出身。1990年10月、日本で大橋秀行に5回KO勝ちでWBC世界ミニマム級王座を獲得。この王座を21度防衛するとともに、後にWBO、WBAタイトルも獲得した。1999年10月にIBF世界ライトフライ級王座も獲得して2階級制覇を果たし、2002年に無敗のまま現役引退。愛称は”El Finito(フィニート、素晴らしい男)”。 生涯戦績は51勝(37KO)1分だった。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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