Yahoo!ニュース

夢のワシル・ロマチェンコ戦へと通じる道 伊藤雅雪(WBO世界Sフェザー級王者)インタヴュー

杉浦大介スポーツライター
Photo By Mikey Williams/Top Rank

5月25日 フロリダ州キシミー

WBO世界スーパーフェザー級タイトル戦

王者

伊藤雅雪(日本/28歳/25勝(13KO)1敗1分)

挑戦者

ジャメル・ヘリング(アメリカ/33歳/19戦(10KO)2敗)

注・今回のインタヴューは4月12日、ロサンジェルスのMaywood Boxing Clubで収録された。The Answerの「伊藤雅雪は世界的なスターになれるのか? ロマチェンコとのメガファイト実現の可能性」に一部が掲載されている。

米国のファンを喜ばせたい

ーー試合の際はファンの目は意識して戦っていますか? 

MI : めちゃくちゃしてますね。

ーー“ファンを喜ばせる”というのはどちらかといえばアメリカ的ですが、そう意識し始めたのはいつ頃からですか?

MI : 日本にいるときは安パイな形で勝ってきていました。ただ、世界を意識したときに、大介さん(岡辺大介トレーナー)にも「倒さないと世界のチャンスは回ってこない」と言われたんです。そこから倒すスタイルに変えていきました。(クリストファー・)ディアス(プエルトリコ)戦は相手も必死でしたけど、ああいう結果になって、いい試合をすれば評価されるんだって余計に意識するようになりました。やはりアメリカはエンターテイメントの国。勝ってるだけが面白いわけじゃない。そこはすごい気にしますね。

ーー今後はアメリカでやっていきたいという気持ちはあるんでしょうか? 

MI : どこでもいいです。トレーニングはロサンジェルスでやってますけど、意味のある相手とやっていきたいですね。ファイトマネーが同じで、強い選手と弱い選手のどっちと戦うかを選べるなら、強い選手とやっていきたい。名前がある選手と戦いたいですね。イギリスだろうが、日本だろうが、アメリカだろうが、戦って、勝ったときのリターンが大きい選手、自分の評価が上がる選手とやっていきたいです。

ーー5月11日にWBC王者ミゲール・ベルチェル(メキシコ)と前王者フランシスコ・バルガス(メキシコ)が戦って、その勝者の対戦相手候補に挙がっているという報道が出ています。そういった話はもう聞いていますか?

MI : (ベルチェルとの対戦の)話はたぶんこっちからしていると思います(笑)。ルディ・ヘルナンデス・トレーナーも“ベルチェルトとやらせろ”と言ってくれていて、もちろん本田(明彦)会長と帝拳プロモーションにも「ベルチェル、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)とやりたい」とは伝えています。ベルチェルは統一戦をしたがっているのは知っているし、僕の名前が出ているのも知っています。だからやりたいし、そこは意識していますよ。

ーー早ければ秋にも統一戦が実現しても不思議はないですが、ベルチェルの印象は?

MI : 強いですよ。パンチがあって、手が出て、ぽんぽんぽんぽんとこっちのリズムは無視で打ってくる。普通だったらブロックして打ち返すのに、プレッシャーをかけられ続けてしまうというか。当たり前ですが簡単な相手ではないんで、難しいですけどやっぱりやりたいですね。

ーー絶対に面白い試合ができる相手ですよね。

MI : いやー、できますよ。確実に激闘になりますから。まあ激闘がしたいわけじゃないですけどね(笑)。ただ、盛り上がる試合をして勝ちたいです。

最強王者ロマチェンコの攻略法とは

ーー先ほどロマチェンコの名前も出ましたが、ロマチェンコ戦までたどり着いたら伊藤選手の名前は本当にアメリカでも全国区になりますよね。 

MI : はい、いや、でももうあり得るじゃないですか、ロマチェンコとやれる可能性も。

ーー現実的なシナリオとして見えるのが楽しみですね。 

MI : 夢があるなっていうか。ボクシングをやっていてもそれが見えなくなったら終わりじゃないですか。世界のトップでの夢を見れるっていうのは、幸せだなと思います。

ーーまだちょっと早いですが、ロマチェンコと実際に対戦するとしたらどう戦いますか? 

MI : 削りますね。身体でプレッシャーかけて、(サイドに)回られると思うんですけど、それも捕まえて、身体のそこら中を殴っていって、後半に倒すというイメージです。パワーは僕の方があると思うんで、どれだけ逃さずにコーナーに詰めていけるか、コーナーで戦えるか。リングの真ん中で戦ったら勝てないんで、うまくプレッシャーをかけて、コーナーで戦える時間をより多くすることが大事だと思います。

ーーこれはもっと気が早いですが、スーパーフェザー級には他にも面白いチャンピオンがいますね。  

MI : ジャーボンタ(・デイビス(アメリカ)/WBA同級王者)、怖いですね。あれは怖いですよ。けどやりたいです。すごい難しいとは思います。僕はロマチェンコより相性的にはジャーボンタの方が難しいと思いますね。もちろんジャーボンタとロマチェンコが対戦したらどうなるかわからないですけど、僕としてはジャーボンタの方が難しい相手だと思います。

ーーそれでもやってみたいですか? 

MI : やってみたいですね。ただ、今はまだロマチェンコの方がネームバリューがあるんで、そういう意味ではロマチェンコとの方がやりたいです。

ーー伊藤選手にとってボクサーとしての最終目標とは? 

MI : 世界チャンピオンになれて、何回防衛したいとかはないです。それよりもマニー・パッキャオ(フィリピン)のように、需要があるというか、誰もが見たいと思う選手になりたい。“またあいつの試合が見たい”と思うような試合をしていって、アメリカで確固たるポジションがある選手になりたいです。何階級制覇とかも考えてないですし、10回、20回防衛したいとかじゃない。すごく強い選手と対戦し、ギリギリの試合に勝っていきたい。もちろんチャレンジした上で負けることだってあると思うんですけど、負けた後でも需要がある選手になっていきたいです。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

杉浦大介の最近の記事