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「ウェルター級で世界の扉を開ける日本人は自分しかいない」小原佳太 IBF世界ウェルター級挑戦者決定戦

杉浦大介スポーツライター
Photo By Top Rank

3月30日 フィラデルフィア 2300アリーナ

IBF世界ウェルター級挑戦者決定戦

同級4位

クドラティーリョ・アブドカハロフ(ウズベキスタン/25歳/15戦15勝(9KO))

12回戦

同級5位

小原佳太(三迫/32歳/20勝(18KO)3敗1分)

3度目の海外戦

ーーフィラデルフィアに入って以降も体重調整は順調に進みましたか?

KO : ウェルター級なので余裕はありました。1週間前くらいにちょっと体調を崩して、動けない時間ができてしまったのですが、逆に予想外に体重が落ちたので最終調整は思っていた以上にうまくいきました。

ーーヘルペスを患ったということですが、それもむしろプラスに働いたということですか?

KO : 長いラウンドのスパーリングはやっていないので、そこはマイナスです。ただ、体重調整に関してはおかげで問題なく、はい。まあそれがあってもなくても、ウェルター級なので大丈夫だなとは思ってはいたんですが。

ーー以前にフロリダ、モスクワで試合経験があり、今回が海外での3戦目になります。やはり気持ち的には余裕がありますか?

KO : 初めてのときに比べれば、少しくらい自分が予想していないことが起こっても、海外はこういうものだよなと考える余裕がありますね。

ーー今回も予想外の事態はあったのでしょうか?

KO : 唯一あったとすれば、日本発の飛行機が遅れたんですよね。それでデトロイトでの乗り継ぎに間に合わず、便を1つ遅らせなければいけないというトラブルはありました。それでも結局は問題なくここまで来れました。

ーーアブドカハロフの印象はいかがでしょうか?アマで実績豊富な選手ですが、映像などを見てどう感じましたか?

KO : トップアマだったという評判は聴いているんですけど、僕が想像するトップアマの動きではなく、やりづらい感じの選手ですね。やってみないとわからないところがあると思います。

ーーテクニシャンというより、頑強なタイプという声もありますね。

KO : そういうイメージもあるんですけど、それでもアマチュアの経験があるのでうまさも備えているだろうなと考えて構えています。

日本にも強い選手はいると知って欲しい

ーー今回の興行はESPN+で生配信されるということで、オンディマンドまで含めてアメリカでも多くのファンがこの試合を見るはずです。小原選手のどういったところを見てもらいたいですか。

KO : マイアミでの試合のときも考えていたんですけど、スーパーライト級でもウェルター級でも僕が海外の扉を開けないと今の日本人ボクサーは開けられないと思うんです。僕が一番強いと思っているんで、僕が開けないといけない。日本人にも強い選手がいるぞっていうところは見て欲しいと思っています。

ーー過去の敗戦試合はインパクトのあるKO負けでした。ご自身でも打たれ脆さはあると考えていますか?それとも中量級で良いパンチをもらえれば誰でも倒れるということでしょうか?

KO : 打たれ強くはないと思っています。ただ、弱点までとは思っていないですね。クリーンヒットでもらえば倒れるものだと思っているので。今回の相手は打たれ強そうな顔をしているので、倒れるかなと思いますけど・・・・・・とは言ってもこの体重で当たれば倒せる自信は僕には今のところあります。

ーー小原選手というとやはりパワーが魅力ですが、そこもセールスポイントとして見て欲しいと感じていますか?

KO : 僕(のパワー)が日本人の標準ではないと思っているんですけど、日本人でも面白い試合ができるぞっていうのは見て欲しいですね。(パンチを)いいところに当てる当て勘、見栄え、一瞬の爆発力というのが自分の強み。そこを見て欲しいというか、生かしたいと思っています。

ーー今回はIBF挑戦者決定戦ということで、勝てばエロール・スペンス・ジュニア(アメリカ)の指名挑戦者になります。何度も聞かれてきたと思いますが、スペンスの印象を改めて聞かせてください。

KO : スペンスは強すぎるんで見てないです(笑)。パーフェクトとは言わないですけど、難攻不落。本当にモンスター級だと思っています。

ーー対策は戦うことになったら考えるという感じでしょうか。

KO : いや、もう特攻しかないです。死なないように頑張ります(笑)

ーー(笑)。スペンスももちろんですが、今回はトップランク興行なので、良い勝ち方をすれば対戦相手探しの大変なWBC王者テレンス・クロフォード(アメリカ)の挑戦者候補にも浮上すると思われます。個人的にはそっちの路線の可能性の方が高いかもしれないと思っているんですが、クロフォードはどう見ますか?

KO : こっちはパーフェクトですよね。パワーとかではなく技術が飛び抜けている。ウェルター級の頂上はすごいですね。

ーー世界最高級といえる2人ですよね。今回のエリミネーターはそういう場所に足を踏み入れられるかという一戦になります。

KO : はい、勝てばやはり世界で戦うチャンスが出てくる。それだけ大きい試合だと思っています。

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これが最後の挑戦

ーーところで、ロッキーの銅像の前での写真をソーシャルメディアで見ました。フィラデルフィアが舞台の映画ロッキーシリーズも見られたんですね。

KO : まったく見ていなかったのですが、やっと見ました。一番面白かったのはやはり1ですかね。“ザ・ボクシング”という感じ。良くも悪くも、一昔前の打たれて打って人を熱狂させてのボクシングなので、僕にはなかなかないものでした。真似しようとは思わないですけど、面白い映画。自分にはない部分が見える映画でしたね。

ーーまあボクシングのシーンはかなり問題がありますよね。

KO : (笑)

ーー好きなキャラ、シーンはありましたか?

KO : ロッキーが奥さん、家族を大切にするところはすごく好きでした。それも僕には難しい部分なんで(笑)

ーーそこは突っ込まないでおきます(笑)。さて、これまでマニー・パッキャオ(フィリピン)とのスパーであるとか、海外での世界戦であるとか、様々な経験を積み重ねてきました。そんな小原選手にとって今回の試合はどんな位置付けですか?

KO : ”最大の挑戦”ですね。アマチュアでも海外に出たことなかった僕が世界で戦えるのか。相手はアマで強かった選手で、僕はプロでも海外で勝ったこともない。そういった劣等感をすべて払拭する試合だと思っています。

ーー後がない、最後の挑戦だという気持ちはあるのか、それとも・・・・・・

KO : いえ、最後の挑戦です。勝てば広がりますが、負ければ海外ではもうできなくなると思うので。海外のチャレンジはこれで最後です。

ーーそれでは最後に明日の一戦をこんな風に戦いたい、という意気込みを聞かせてもらえますか。

KO : 最初は自分の技術がどこまで通用するか、駆け引きまで含めてチャレンジして、もしも届かないようならば特攻する。その時は打ち合います。どちらにせよ盛り上がる試合になると思っていますので、見ててください。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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