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アイリッシュ期待の星、コンランがMSGでタフガイに判定勝利 2019年中に“次の段階”に進めるか

杉浦大介スポーツライター
Photo By Mikey Williams / Top Rank

3月17日 ニューヨーク マディソン・スクウェア・ガーデン・シアター

WBOインターコンチネンタル・フェザー級タイトル戦

王者 

マイケル・コンラン(アイルランド/27歳/11戦11勝(6KO))

10回判定(100-90, 100-90, 100-90)

挑戦者

ルーベン・ガルシア・ヘルナンデス(メキシコ/25歳/24勝(10KO)4敗2分)

デビュー11連勝

 トップランクが期待をかけるコンランがまずは順当に階段を上った。ノニト・ドネア(フィリピン)にもKOされなかったタフなヘルナンデスを倒すことができなかったが、フルマークの判定勝利。フルラウンドにわたって精力的に動き続け、MSGシアターを埋め尽くしたアイリッシュのファンを喜ばせた。

 実践的な強さを備えたコンランだが、アマエリートらしい迫力を感じさせないという声も聴こえて来る。今回も試合内容で周囲を感嘆させるには至らず、トップ戦線浮上にはまだしばらく時間がかかりそう。業界最強のマッチメーカーを揃えたトップランクも、この選手は慎重にマッチメイクしている印象がある。今回のヘルナンデスも確かにタフだったが、危険を感じさせる難敵ではなかった。

 「僕のスキルを見せられたと思う。彼はタフな選手。何度か詰められると感じたこともあったが、それよりも練習してきたことを試そうとしたんだ」

 試合後にコンランはそう述べたが、遠からずよりわかりやすいパフォーマンスが求められるようにもなっていく。そして、スターになる選手は、キャリアを積む過程で急成長する瞬間があるものだ。

 ヘルナンデス戦はコンランにとっての“ブレイクスルー・モーメント”にはならなかった。アイリッシュのプロスペクトには特にニューヨークでは千金の価値があるがゆえに、上位と対戦させる前に、トップランクも“その瞬間”を辛抱強く待っているのだろう。

アマ時代からの宿敵

 ボーイッシュなコンランももう27歳だけに、どこかで何らかのハイライトを作りにいかなければならない。タイトル戦準備を始める前に、まず視界に入ってくるのはアマ時代からの元ライバルとの決着戦だろう。

 もともとコンランの名前が世界的に知られたのは、リオ五輪バンタム級準々決勝でロシア選手に微妙な判定で敗れた際の顛末がゆえ。試合後、判定への不服からリング上でジャッジに中指を立てるパフォーマンスで一躍有名になったのだ。その時の相手、 ウラディミール・ニキティン(28歳/3戦3勝)も後にトップランクと契約。17日にはコンランのアンダーカードで6回判定勝ちを飾っている。

 「ウラディミール、ここにいるのは知っているよ。ファンのためにも再戦しなければいけない。誤りを正さなければいけないんだ」

 ヘルナンデス戦後、コンランはリング上からそう呼びかけてスタンドを沸かせていた。同じトップランク傘下でマッチメイクも容易だけに、実際にこのリマッチが遠からず実現する可能性は高い。

 3年連続でセントパトリックデー週末にMSGシアターのリングに立ち、今回も日曜日の夕方という難しい時間帯に3712人の観衆を集めたコンランの人気は本物。ニキティン戦は特に大きな話題を呼ぶはずで、晴れてリベンジを果たせばその商品価値はさらに上昇するだろう。コンランのプロボクサーとしての成長とともに、アマ時代から続く因縁に終止符を打つ一戦の行方も楽しみにしておきたいところだ。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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