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村田諒太(帝拳)対ロブ・ブラント(米国)の独占配信はなぜ実現したか DAZN 大崎貴之氏インタヴュー

杉浦大介スポーツライター
(写真:Motoo Naka/アフロ)

 村田諒太(帝拳)対ロブ・ブラント(アメリカ)の独占配信はどういった経緯で実現するのか。DAZNの上級副社長マーケティング&パートナーシップ、大崎貴之氏に話を聞いた。

ーーまずは村田選手のタイトル戦の独占配信が決まった経緯を話して頂けますか?

TO : 我々はスポーツ全般への情熱が非常に強く、Jリーグに加え、今年から野球も始め、さらにヨーロッパ各国のスポーツも配信させて頂いています。そんな中で、やはりボクシングは重要なスポーツだという考えがまずありました。村田さんという国民的ヒーローであり、私たちがリスペクトするアスリートの試合をライブで放映したいという希望も以前からありました。今回ようやくこのような機会が持ていたという次第です。

ーーこれまで村田選手はフジテレビとの結びつきが強かったと思います。今回はDAZNで独占放送ということですが、契約は1試合限りのものになるのか、それとも今後も継続的に放送していくという方向なのでしょうか?

TO : 契約の内容は具体的には申し上げられませんが、引き続き熱意を持ってお話させて頂いているというのが現状です。当然我々としてもワンオフのイベントではなく、ボクシングというカテゴリーを盛り上げていきたいというビジョンがあります。長期的にボクシング界を盛り上げていきたいという気持ちでおります。 

ーー村田選手とは間近で接していらっしゃっていると思いますが、魅力はどんなところにあるのでしょう?

TO : 今回の話の前からアンバサダーという形でお付き合いをさせて頂いてますが、人間的にも素晴らしい方です。もちろん選手としてはオリンピックの金メダリストという魅力があり、非常に強い。それに加え、クリーンなボクサー。正統派であることも我々が惚れ込んでいる1つの要因です。最激戦区と言われ、“神の階級”とも呼ばれているミドル級で世界チャンプとして活躍するというのは日本人の誇りでもあるし、アジア人としてもレアなので、私たちとしても応援していきたいという気持ちは強いです。付け加えると、前に進む姿勢とか、僭越ですが、前に前にっていうところでは村田選手のスタイルは我々のブランドとも被るところがあるのかなと考えています。

ーー前回の防衛戦は「見逃し配信」だったということですが、独占生中継を行うことのインパクトをどう予想されますか?

TO : 我々のブランドの売り物はあくまで生中継、生配信です。Netflixなどはドラマ、映画などの配信を行っていますが、スポーツはやはり生、その瞬間が大事ですし、当然我々としては生中継を最優先としていきたいと思っています。時代が大きく変わってきていて、若い人だけでなく、動画をいろいろな端末でいつでもどこでも見るっていうのは世界中のメガトレンドであると思っています。アクセスが増えることによって、1人でも多くの人に見てもらえる。もちろんお茶の間で大きいテレビで見ていただくこともできますが、それと同時に外出先でも時間、場所などに縛られずに見ていただけるということで、一人でも多くアクセスして頂くことによって、そのスポーツ全体をもっと盛り上げていきたいなと。ただ、ずいぶん浸透はしてきていますが、テレビのスイッチを入れるような習慣になるまでにはまだ至っていないのは事実です。それを理解した上で、今後に違うライフスタイルも促進できるような起爆剤の1つになればいいかなと思っています。

ーービッグファイトが仰る通りに日本人の生活の一部になっているテレビで流れず、DAZNが独占することによって、一時的に視聴者の枠を狭めることにならないでしょうか?

TO : 私たちのビジョンとは、お手頃な価格で、いつでもどこでも見れるというもの。より束縛されない形で見ていただけるはずです。仰ったように50年以上も続いてきたテレビという習慣とは少し違うところだと思いますが、特にアメリカご在住ならでは今ではスマートフォン、タブレット、スマートテレビなどが浸透してきていると肌で感じてらっしゃるかと。人々のライフスタイルは大きく変わってきている。我々としては逆にさらに解放するんだという気持ちでやっています。

ーーなるほど。狭めるのではなく、逆に違うやり方で解放するのだという考え方ですね。

TO : はい、そうですね。そう思っています。

ーー先ほどお話があったように多くのスポーツを中継されていますが、村田選手に限らず、ボクシングのコンテンツとしての魅力はどこにあるのでしょう?

TO : ボクシングは格闘技のピナクルだと思っています。ファンベースも非常に広く、日本でも長い歴史がある。そういった意味で非常に重要なコンテンツだと思っています。

ーー現在のボクシング番組は1興行ごとに買っているのか、あるいはHBO、Showtimeといった一部のテレビ局と何らかの契約をされているのでしょうか?

TO : そこに関しては、申し訳ないですが詳細はまだお話できません。冒頭の話通り、今回をきっかけにボクシング中継を長期的にやらせて頂ければとは考えています。

ーーアメリカでもDAZN USAがローンチし、9/22からエディ・ハーンが陣頭指揮を執っての新ボクシングシリーズが始まりました。また、DAZN USAではワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)の2ndシーズンも中継されます。DAZN USAで中継される興行は今後日本のDAZNでも優先的に放送されるのでしょうか?

TO : それらに関しても、現在正式に決定した内容としてお話できる詳細はございません。

ーーアメリカではしばらくビッグファイトはPPV中継が主流でしたが、日本でもカードを厳選してPPVビジネスに乗り出す可能性はありますか?

TO : 今のところはまったく考えてないですね。我々のビジネスモデルとしては、ストリーミングのワンパッケージで「いつでもどこでもどんなコンテンツでも好きなだけ見れる」というのが信念。お客さんにどんどんスポーツを見てもらいたいというのがあるので、PPVというのは我々とはまったく逆のビジネスモデルだと考えます。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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