「ボクシングを続けたい。だから勝ちたい」 大竹秀典 WBO世界Sバンタム級タイトル戦直前インタヴュー

Photo By Mikey Williams/Top Rank

8月25日 アリゾナ州グレンデール 

ヒラリバー・アリーナ

WBO世界スーパーバンタム級タイトル戦

王者

アイザック・ドグボエ(ガーナ/23歳/19戦全勝(13KO))

挑戦者

大竹秀典(金子/37歳/31勝(14KO)2敗3分)

*インタヴューは8月21日に電話で行われた

初挑戦失敗から4年。ついに巡ってきた2度目のチャンス

ーーもうタイトル戦直前ですがコンディションはいかがでしょう?

HO : これまでと変わらず調整できていると思います。

ーーウェイト調整まで含めて特に問題なく? 

HO : はい、そうですね。

ーー現地入り後は計量後に食べる日本食レストランが見つかるかを心配されていたということですが、良い店がありましたか? 

HO : 近くにある日本食を謳っているレストランは、やはりちょっと違うみたいなんです。(減量中の)僕はあまり食べないんで、陣営の人に食べに行ってもらって聞いただけなんですけど。ちょっと離れたところに、ローレン・グッドマン(マッチメイカー)が紹介してくれた日本食屋さんがあると聞いて、計量終わった後はそっちに行ってみようかなと思っています。

ーーちょっと心配ですね。 

HO : そうですね。まあでもこだわればそうですけど、なければないでしょうがないと思っていたので、はい。

ーーキャリア36戦中35戦は後楽園ホールで試合をされていますが、2014年の世界初挑戦でイギリス遠征を経験していることはやはり大きいでしょうか? 

HO : 初めてではない、という意味ではやはりそうかもしれないです。(タイトルマッチまでの)流れが大体わかるし、気持ちの面ではちょっと違うかもしれないですよね。

ーー当時のWBA世界スーパーバンタム級王者スコット・クイッグ(イギリス)に挑んだタイトル戦は、最終的なポイントほどに差がある試合にも見えませんでした。それでも試合後には引退を考えたという報道も見ました。

HO : ポイントほど差はないという風に仰ってくれる方も確かにいらっしゃったんですが、どちらかに振り分けるとしたら、というのであれだけのポイント差が出てしまった。それまで日本タイトルを防衛しているときは、「本当に死ぬ気でやればなんとかなる」と思えていたんです。それがクイッグ戦では、実際に面と向かって勝負してみて、自分がやることを全部読まれているというか、わかっているなと感じてしまって、ああやはり違うなと。33歳か34歳になって、ここから自分がまだ伸びるのか、どうするべきか、と考えたというのはありましたね。 

ーー簡単には埋められない差を感じたということですね。 

HO : そうですね。そういうのもあって、職場の方にもっとトレーニングに集中できるように休みを下さいとお願いして、そうやって今に至るという感じです。

ーー最終的に引退を思い留まり、現役続行を決めた理由はどこにあったのでしょう?

HO : ジム関係者にもウチの職場の横浜に来てもらって、社長、自分の陣営と話し合いをして、いろいろと結論を出しました。やれることは全部やれていないという思いもありました。トレーニング方法を変えれば良いとか、今流行りのフィジカルトレーニングを取り入れれば良いとか、そういうことではないんですけど、周囲の声も聞き入れるようになって視野が広まった。やはりやれることを全部やりきっていなかったんだと。それでもう一回挑戦しようと思いました。

ーークイッグ戦前後、体制はかなり変わったということですか? 

HO : ガラッとというわけではないです。僕のセコンドは今はジムの金子会長と、チーフトレーナーの飯田(勇司)さん。あとはフィジカル面を見てもらっている川人(将裕)トレーナーにも入ってもらい、今回はそのチームで臨もうと思っています。ボクシングが大きく変わったとかではないんですけど、僕の想いとか気持ちは変わりました。

ボクシングを続けたいという想いが何よりのモチベーション

ーー年齢は重ねていますが、初挑戦時よりも強くなっているんじゃないかという意見も聞きます。ご自身でもその手応えはありますか?  

HO : もちろん落ちているとは思わないです。あいつ勢いだけでいっちゃうけど、年齢いってるからもう落ちてるよねとか言われたことはないです。まだそこは大丈夫かなという感覚はあります。

ーー今回の相手のドグボエはアメリカでも注目され始めている勢いのあるチャンピオンですが、印象はいかがでしょう? 

HO : パンチも重そうだし、キレもありそうだなと。(ノニト・)ドネアに勝った(ジェシー・)マグダレノに勝ったわけですからね。相性もあるからなんともいえないですけど、強いチャンピオンには間違いないと思います。

ーードグボエの映像を見て研究されていると思いますが、経験をはじめ、自分が勝っていると感じる部分はありますか? 

HO : 勝っている部分・・・・・・年齢とかですかね(笑)。歳をとっているというだけですかね。僕が自分でものを考えて練習に取り組めるようになったのは、2014年の世界戦が終わった後。そういう意味で、まだ伸びるかなとは感じます。ただ、向こうもロンドン五輪に出た経験がありますし、小さい頃からやっているっていうのもありますから、経験で勝っているとは全然思わないんですよ。だから、年齢だけですね(笑)。長生きした分だけ、駆け引き、やりとりを含めてやれればなっていう風にしか思わないですね。

ーーシェアできる範囲で構わないので、想定している戦い方を話していただけますか? 

HO : KOしたいと思ってます。相手も前に出て強振してくるので、それに合わせた対策は一応やってきました。ただ、奇想天外なことをやってくるかもしれない。アマチュア上がりの選手だから急にアウトボクシングするんじゃないかとか、その辺はいろいろと想定はしています。対策という意味では、フックに対してどうしていこうか、どっちに回ろうかなとか考えています。(ドグボエは)スイッチもたまにしますね。こういう対策を練ったという具体的なことよりも、全部を視野に入れて、練習はして来ています。

ーー身長で大きく上回っていますが、大竹選手も打ち合いが得意です。良い試合になりそうですね。 

HO : そういう風にしたいと思いますし、相手が前に出てきてくれればくれるほど、僕にとってチャンスはなくはないかなと。噛み合うかなと思いますけど、戦法を変えてくるかもしれません。クイッグもそういうところがありましたし。そうなったときも考えて練習は積んでいます。

ーー37歳1ヶ月で勝てば日本人史上最年長での世界タイトル奪取になります。同じ世代を代表して戦うといった思いもありますか? 

HO : 同世代を代表して、といったことは考えてなかったです。ただ、さっきも申し上げた通り、2014年の世界戦で負けてから、いろいろと考えてやってきたところがあるので、まだボクシングやりたいですし、続けたい。自分はまだ伸びる。この試合で負けたら引退とか言われちゃいますし、そこは頷くしかないかなというところもあるので、そういう意味でも自分のために勝ちたいと思っています。

ーーこれがラストチャンスという意識はやはりありますか? 

HO : そうですね。前回負けてから、(ここに辿り着くまで)4年かかっているわけですから。まあ負けてもどういう試合内容かによるんでしょうけど。(興行主の)トップランクさんは、「お客さんを盛り上げるファイトをしたら、それで引退とか言うな」と言ってくれるんですけど(笑)。ただ、もちろんここで獲るつもりです。

ーー仰る通り、ESPNと契約延長したトップランクは選手を探していて、日本のマーケットにも視野を広げているところです。日本で岩佐亮佑(セレス)選手に勝ったTJ・ドヘニー(オーストラリア)との統一戦も視野に入るでしょうし、勝てばさらに夢が広がりますね。 

HO : 統一戦でも、そうでなくてもいいんですけど、やっぱりそういう試合は盛り上がりますよね。まずは自分がボクシングを続けるってことが何よりのモチベーション。そして、そうですね、まだまだ道は広がるかなという風には思っています。

ーーアメリカでもESPNが動画配信ではなくテレビで全国中継する舞台で、かなり多くの人が試合を見るはずです。ファンに大竹選手のどういった姿を見てもらいたいですか? 

HO : 37歳だといろいろと(メディカルの)チェックが必要みたいで、アメリカでも検査もあったりします。アメリカはそんなことないというイメージだったんですけど、年齢いってるというのは事実として思われているんでしょう。重量級ではなく、軽量級で、(30代後半での)初奪還はなかなかないこと。まだまだ諦めず、まだ伸びていけるという姿を見せたいですね。