サイバーエージェントの社員動画から学ぶ、ソーシャル時代の企業の採用に求められる社会的報酬・動機付け

「社会的報酬・動機付け」という概念

先日から一週間程、某企業さんのエンジニア採用絡みのお手伝いで台湾に出張に行っておりました。

私は台湾に行くのは今回が初めてだったのですが、街並みも人も日本と文化が非常に近しく、LINEやペアーズなどの日本のサービスも流行っており、日系企業が最初に海外進出をする国としてとても良い国なのでは、と感じました。

相変わらず、エンジニア採用に困っている日本企業は非常に多く、いよいよ日本だけでなく、台湾まで触手を伸ばす流れになっているのだとしみじみ感じていたのですが、そんな中でエンジニアの定着についての以下の記事が目に飛び込んできました。

「外発的動機付けをフルで与えるのは難しいため、内発的動機付けを発動してそれで埋め合わせようとしてきた。しかし人事がコントロールするのは難しい。そこでもう一つやる気に関わってくるのが、社会的報酬・動機付け。ソーシャルメディアが発達したことにより、可視化しやすい状況が生まれている。この3つを考えて辞めない状態を考える必要がある」とサカタ氏は言う。

出典:人事・脳科学・統計学の視点で考える「エンジニアが辞めない組織」とは?

その中でも、上記引用部分にあるサカタさんが仰っている「社会的報酬・動機付け」というキーワードを知り、これからのソーシャルメディア時代、企業の採用や定着において非常に重要になってくる考え方であると感じましたので、こちらでシェア・考察してみようと思います。

話題のサイバーエージェント社員のダンス動画

同時期に私も過去に在籍していた事もあるサイバーエージェント社の社員のダンス動画がネット上で話題になっているのを見かけました。

以前も、AKBのフォーチュンクッキーを踊る同社の社員の動画が話題になりましたね。

前回もそうでしたが、今回もやはりサイバーエージェントの女性社員が可愛すぎる的な論調で話題になっているようです。

職業病的な私自身は、ちょっと変わった視点でこの動画を眺めておりました。(もちろん可愛いなと共感はしつつ・・)

サイバーエージェントは今回の動画を含め、前述の「社会的報酬・動機付け」をうまく演出する事で成功している会社なのではないかと感じたのです。

いまや転職・就職先人気企業のサイバーエージェント

サイバーエージェントは、新卒・中途ともに今や人気企業となっています。

実際、弊社にもサイバーエージェントに関心を持たれたと転職希望者が毎月多くご登録にいらっしゃいます。

こうした人気の秘密が、サイバーエージェントによる社員への「社会的報酬・動機付け」への取り組み・努力の成果なのではないかと感じるのです。

動画に出演する事で、日々の現場仕事以外で、社外においてある意味での表彰台にのぼる機会が提供されるわけです。

動画に出演する社員だけでなく、出演していない社員にとっても、ネット上で話題になっている会社に所属しているロイヤリティーが高まるでしょうし、ソーシャルメディアで閲覧した友人や飲み会などで、「お前の会社は楽しそうで良いな~」といった話題をふられる機会が増え、社員はなんだかんだまんざらではない気持ちになるでしょう。

表彰という社員を主役にする取り組み

同社は実際の仕事上の表彰台の演出についても非常に力を入れており、定期的に行われる社員総会での表彰の場は、ものすごく大きな金額を投資して凝った演出をしていると聞きます。

私のfacebookのタイムライン上で、サイバーエージェントの総会がある度に、同社の複数の社員がタイムライン上で、表彰された事を喜んだり、次回こそは必ず表彰台に上がるぞ、と決意表明している投稿を多く目にします。

同じく社員のモチベーションが高く、就職先として人気と言われるリクルート社も、社内表彰制度をうまく活用しており、多くの社員が表彰台に立てるよう表彰の頻度と種類を多く設計し、満遍なく社員が表舞台で賞賛される演出がされています。

そもそも世の中のほとんどの会社は話題にされない

世の中のほとんどの会社は、ポジティブなイメージを持ってもらえる以前に、社名も知られていません。

仮に、社名は知られているような大手企業であっても、そもそもそうした会社の社内イメージを知ってもらえている事は稀でしょう。

社員のプライベートな飲み会の話題にあげてもらうなんてほとんどの会社ではないでしょう。

弊社が転職支援で得意とするインターネット業界では、転職者の多く(特にエンジニア)が、自社サービス・プロダクトを持つ会社を志望されます。

転職者に、その理由を尋ねてみると、平たく言えば、大体が「自分が作ったサービスなんだぜ」と周りに言いたい!という理由です。

これも「社会的報酬・動機付け」が人が働く場所の選択する上での動機付けとして大きいものではあると示しているのではないでしょうか。

サイバーエージェントも、あのAppleミュージックとも競合するミュージックアプリ「AWA」をリリースし、テレビCMを打つ事で、社員にとっては社会的な動機付けが更に大きく高まった事でしょう。

飲み会で「AWAやってる会社でしょ?」と認知し話題ふりをしてもらえる機会が実際増えているようです。(同社社員談)

ソーシャルメディア時代の社員との関わり方

経営者や管理職の方々からすれば、そんなミーハーな理由で入ってきてほしくないと思われたり、本質的ではないように思うかもしれませんが、一定レベルの給与や待遇を担保した前提での、人材獲得競争においては、なんだかんだこうしたわかりやすさが差別化になるのはないでしょうか。

新卒の学生や、20代の転職者は、ほとんどが自分が所属していない業界の企業名やビジネスモデルなど認知・理解していません。

自社サービスのテレビCMや、今回の社員のダンス動画、「社内で表彰された!」という大学時代の同期のfacebookのタイムライン上のシェア画像などでその会社を認知し、自分もその輪の中に入ってみたいと無意識に動機付けされていっているのだと思います。

社員のほとんどがソーシャルメディアのアカウントを持つ時代では、企業がソーシャルメディアでの社員の情報発信を恐れて制限するのではなく、サイバーエージェント社のように、むしろ積極的に企業から社員を主役にしたコンテンツを企画・設計していくべきではないでしょうか。

短期的な採用PRではなく普段から全社として取り組む事の重要性

特筆したい点として、恐らくサイバーエージェントは、採用PR上でこうした取り組みをしているわけではなく(一定の狙いはあるのかもしれませんが)、コーポレート・全社としてこうした取り組み・努力をしているところが、強い点なのだと思います。

実際、全社でこうした取り組みをするには、経営TOPの理解やコミットメントが必要になると思います。

短期的目標達成のための施策ではなく、中長期的な投資という視点が必要だからです。

簡単に実行できる事ではないが故に大きな差別化になり得るのでしょう。

社員のソーシャルメディア上の口コミを設計していく視点

採用時の自社アピール情報は一定レベルでは有効でしょうが、入社者からは自社をよく見せようとしているんだなといった色眼鏡で見られがちですし、そもそも人気企業には勝手に応募が集まるものです。

候補者が就職先・転職先を選ぶ瞬間に見る採用媒体上の広告PRよりも、就職や転職を考えていない時期から、日常の中で、実際にその企業に所属している社員が動画で楽しそう踊っていたり、表彰された感動をタイムライン上でシェアしているのを眺めている事が何よりの企業PRであり、説得力のある信頼情報なのだと思います。

今回話題となったサイバーエージェントの社員動画のように、社員を主役にし、コンテンツ化し、ソーシャルメディア上で積極的に露出させていくマネジメントが、どの会社でも再現できるかは別として、社員に対して社会的報酬・動機付けを提供していくための大きなヒントになるのではないでしょうか。

具体的な手段や手法は今後各社が試行錯誤の中で研究されていくのだと思いますが、採用とは別に社員を主役にした情報・コンテンツ発信がこれからの企業の採用・定着に大きく貢献し、人気企業とそうじゃない会社の明暗を分けてしまうかもしれませんね。