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「ChatGPTが法務大臣でいいのでは?」お笑い芸人が驚愕―AIが答えた入管問題の最適解

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
国会前で入管法改悪反対を訴える集会で、発言する榎森耕助さん 筆者撮影

 現在、国会で審議されている、入管法改定案*1。難民その他、家族が日本にいる等、帰国できない事情を抱える外国人の人権を著しく侵害する恐れがあるとして、国内外から批判を呼んでいるが、お笑い芸人の「せやろがいおじさん」こと榎森耕助さんは、今、話題の対話型AI「ChatGPT」に入管法改定案について質問。その回答に「ChatGPTの方が法務省や入管より優秀!」と驚いたのだという。

〇AIが指摘する入管法改定案の問題点

 入管法改定案について、政府与党や法務省/出入国在留管理庁(入管)は「(強制送還を拒む)送還忌避者や(入管施設への)長期収容を減らす」として、今国会の成立を目指す。その内容は、難民認定申請を3回以上した人を強制送還できるようにしたり送還を拒む場合に刑事罰を科す等であるが、支援団体や各弁護士会等、さらに国連の人権関連の委員会などが、「難民として保護すべき人を迫害の恐れのあるところへ強制送還することは国際法違反」「そもそも日本の難民認定審査に問題があるため、複数回の申請を余儀なくされている」等として批判・懸念している。入管法改定案を巡り、与党と立憲民主党、国民民主党、日本維新の会が修正協議を始めたことを受け、同法案に反対する人々が、21日夜、国会前で約2000人が抗議の声を上げた。この集会で、榎森耕助さんも発言。入管法改定案の問題点についての質問にChatGPTが回答した内容を読み上げた。

「『いくつか問題点をあげます。1.人権侵害の恐れがあること、2.透明性の欠如があること、3.このような問題点から、難民支援機関や国連から抗議があること』って書かれているんですけど、ChatGPT、法務省より入管より優秀やないか~!」

「続いて、書き込みました。もう、あなたが法務大臣になればいいんじゃないでしょうか、と。ChatGPT、なんと答えたか。『有難うございます。ですが、私はAIシステムなので、法務大臣には就任できません』という、これ、皆さん、今の入管に聞かせたいですよね。権力をより欲しがる入管に比べて、権力に対して非常に自制的なChatGPT。是非、(入管には)見習っていただきたい!」

〇ChatGPTの回答の的確さ

 これらのChatGPTの回答や、榎森さんのコメントは非常に的を得ている。難民を難民として認定し、保護の対象とする難民認定審査で、日本は他の先進国のそれに比較して異常に認定率が低いことが、国内の支援団体等のみならず、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)からも指摘されている。また、支援団体や弁護士会等からは、難民認定審査の基準が曖昧で、審査結果の根拠も十分に示されず、審査での面接で、弁護士の同席が許されないこと、録音・録画等の記録もない中で、入管側が難民認定申請者を頭ごなしに「制度の濫用者」と決めつけ暴言を吐くことが珍しくないことが問題視されている。そうした中、今国会に提出された入管法改定案の通りの制度になると、本来、難民として保護すべき人を難民として認めず、迫害の恐れのある母国に強制送還してしまうことや、帰国を拒む難民認定申請者を「送還忌避者」として、刑務所での懲役刑など刑事罰を科すことが起こり得るのだ。

 また、難民認定申請者を迫害の恐れのあるところへ強制送還することを禁じる難民条約の規定や国際的な慣習法としての「ノン・ルフールマン原則」に対し、これを入管側が遵守しようとせず、強制送還を可能とする例外規定*2を設けようとしていることを、榎本さんは「権力をより欲しがる入管」と皮肉っているのだ。

〇日本の難民保護について、ChatGPTが回答

 榎森さんはさらに「日本の難民保護はどうあるべきか?」とChatGPTに質問してみた。

「そしたら、こんな回答が来ました。『難民認定者の心身の健康を考慮したサポートや(難民)審査制度の改善、社会全体での難民への理解促進が必要だと思います。また、人道的な観点や国際的な責任を果たす意義から、難民受け入れ数の増加を検討する必要があります』と答えたんですね」(榎森さん)

 集まった人々から歓声や拍手があがると、榎森さんは「僕は思いましたよ。ChatGPTには、今の日本政府には無いものがある。AIだけに愛があるなぁ、と」とオチをつけ、さらに拍手を浴びた。

〇今の日本政府には「愛」が無い

 このオチも本質を突いている。長年、入管問題を取材し続けて筆者が感じることは、これは最早、単なる制度上の問題だけではなく、入管及び法務省に外国人に対する差別意識や人権軽視が根深くあり、そうした行動原理を憲法や国際法よりも優先するという入管及び法務省の振る舞いこそ、根本的な問題であるということだ。

21日の集会には、一昨年3月に名古屋入管で死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの遺族らも参加、「入管法改悪反対」を訴えた。
21日の集会には、一昨年3月に名古屋入管で死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの遺族らも参加、「入管法改悪反対」を訴えた。

 つまり、榎森さんの言葉を借りるなら、入管及び法務省は人間に対しても、法に対しても、「愛が無い」ということだ。こうした組織としての問題を放置しまま、入管法改定案を通してしまっては、必ずや、また深刻な人権侵害を招く。やはり、野党合同の対案*3のように、入管・法務省から難民認定審査の権限を引きはがし、より人権や法を尊重する独立した機関によって、難民認定審査を行わせるべきなのだろう。

(了)

*1 今回の法案は「改正ではなく、むしろ改悪」との批判も高まっているため、本稿では「入管法改定案」と表記する。

*2 入管法改定案では、難民認定申請を3回くり返した者を強制送還できるという「送還停止効の例外」を設けるとしているが、実際の難民認定申請では、3回目の申請で難民認定されたり、不認定を不服とする裁判で勝訴し、難民認定されたり、在留特別許可を得たりするケースもある。

*3 野党対案については以下リンク先を参照。

https://cdp-japan.jp/news/20220422_3554

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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