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【コラム】ウクライナ危機に便乗、「火事場泥棒」的な改憲派(と護憲派の一部も)を叱る

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
G20大阪サミットにて安倍首相(当時)とプーチン大統領(写真:ロイター/アフロ)

 今年2月24日に、ロシアがウクライナへ侵攻したことは、誰にとっても大変な衝撃だったろう。プーチン大統領の理不尽さ、圧倒的な悪意、対話を拒絶する姿勢は、まさに脅威だ。だが、ウクライナ危機に便乗するようなかたちで、自民党などから改憲論が出てきているのは、条件が全く異なるウクライナと日本を雑に一緒くたにした「火事場泥棒」的な暴論であり、戦禍に苦しむウクライナの人々を利用するやり方は、無神経かつ卑劣なものだ。他方、いわゆる護憲派の著名人や論客の一部にも、ウクライナの人々の頭越しでの「交渉による平和」を押し付けているような傾向もあり、この間、現場で取材してきた者としては違和感を感じざるを得ない。

◯改憲は必要ない

 ウクライナ危機を受けて、自民党や日本維新の会などから、改憲を求める主張が相次いでされている。とりわけ、活発に発言しているのが、安倍晋三元首相だ。各地の講演などで、「憲法9条に自衛隊の存在を明記する必要がある」等と繰り返し主張している。これらの改憲派の主張は、まるで、憲法9条を変えないと日本を護れないような言い草だが、これまでの憲法解釈と乖離し、人々の不安につけ入る、「火事場泥棒」的な暴論であろう。まず、日本国憲法の第9条は「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とあるが、だからと言って、他国が日本を軍事力を持って侵略してきた際に一切の無抵抗を強要しているわけではない。国際法で保障された個別的自衛権、つまり、軍事侵攻に対し国民の命と国家の主権を守ることは、日本国憲法の下でも有効であると、大多数の憲法学者が認めるところだ。要するに憲法を変えなくても、人々の命を守る実力行使は可能なのである。安倍元首相は「戦い抜く人たちには誇りが必要だ」と9条に自衛隊明記の必要性を主張するが、日本国憲法の下では個別的自衛権がないかのような主張こそ、自衛隊の存在意義を否定するようなものであろう。第一、安倍元首相は無意味な改憲論を披露するより、もっとやることがあるだろう。在任中、27回もプーチン大統領と会談し、個人的なつながりの強さをアピールしていたのは、安倍元首相自身だ。それこそ、単身モスクワに乗り込み、戦争をやめるよう、プーチン大統領を説得してきてほしいものである。

安倍首相(当時)とプーチン大統領 2019年 東方経済フォーラム 日露首脳会談にて
安倍首相(当時)とプーチン大統領 2019年 東方経済フォーラム 日露首脳会談にて写真:ロイター/アフロ

ロシア軍の侵攻に対し抗議する在日ウクライナ人の人々 今年3月 都内で筆者撮影
ロシア軍の侵攻に対し抗議する在日ウクライナ人の人々 今年3月 都内で筆者撮影

破壊されたブチャの住宅地 筆者撮影
破壊されたブチャの住宅地 筆者撮影

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フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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