小泉進次郎氏は、今月1日、環境大臣として最後の会見の中で、地球温暖化対策に関する日本での議論やキャッチフレーズは「国際社会では通用しない」と断言。温暖化やその対策への認識が危ぶまれている岸田文雄新首相に国際会議等での発信で気をつけるよう促した。

○危ぶまれる岸田首相の認識

 「日本の中では通用する議論が、そのまま国際社会で通用するわけではない」―小泉氏の実感のこもった言葉を引き出したのは、NHKの岡本基良記者。先の総裁選討論会で、岸田首相が温暖化対策として「省エネ電球」「シャワーではなくお風呂」といったものを例示したことについて、岡本記者は、脱炭素に向けた社会変革や国際社会での発信という面でどのように受け取っているかを小泉氏に質問したのだった(会見動画)。

 温暖化の脅威は異常気象として今まさに世界中の人々を襲っており、「気候危機」とも言われるようになっている。その破局的な影響を防ぐためには、少なくとも2030年までに世界の温室効果ガス排出を半減する必要があり、省エネ電球や節水が無駄とは言わないが、ささやかな個人の取り組みではなく、社会そのものの変革が必要とされるのだ。このような背景から、岸田首相の発言は、気候危機対策を求める人々から「唖然とした」「ヤバイ」等と呆れられていたのだ。

 前述の岡本記者の質問に対し、小泉氏は岸田首相の発言について直接批判することは避けたものの、「(気候危機対策を協議する国際的な場は)まさにプロが集まったコミュニティーですから、その場で発信をするときに、日本の議論や言葉をそのまま持っていってしまうと、的確に日本の前向きなメッセージが伝わらない可能性がある」と語った。

○「クリーンな石炭」という詭弁は通じない

 国際社会で通じない日本の言葉の具体例として、小泉氏が指摘したのが「クリーンコール」だ。「日本の中では通用する『クリーンな石炭』ということかもしれませんが、国際社会では全く通用しないですね」(小泉氏)。大量のCO2を排出する火力発電の中でも、石炭火力は特にその割合が高く、国連のグテーレス事務総長も日本を含めた各国に最優先で廃止することを求めている。

 ところが、日本の政府や企業は「日本の石炭火力発電は高効率でCO2排出が少ない」と主張し、「クリーン・コール・テクノロジー(CCT)」と称して高効率型の石炭火力発電の普及を推進しているのだ。だが、最も高効率な石炭火力であっても、天然ガス(LNG)火力発電の2倍程度のCO2を排出する。「クリーンな石炭」など幻想なのだ。また、石炭火力発電所から排出されるCO2を回収し、地下や海底に貯留するCCS(二酸化炭素回収・貯留)も技術が確立しておらず、しかも莫大なコストがかかる。石炭とアンモニアを混焼させる方法も、コスト及び環境影響で得策とは言い難い。

環境省資料より
環境省資料より

 日本は石炭火力発電に依存する国として、これまでも、国際社会から厳しい批判にさらされてきた。バイデン政権の下、米国も脱炭素へと舵を切り、中国もこれに同調している中、いつまでも「クリーンな石炭」という誤魔化しは通じない。石炭依存から脱却し、再生可能エネルギー最優先で脱炭素社会を実現すべきだとの、小泉氏の環境大臣としてのラストメッセージの意味を、岸田首相もしっかりと受け止めるべきであろう。

(了)