米軍ヘリ墜落、「国難」放置に憤りと恐怖―沖縄県東村高江区

米軍ヘリは高江区に墜落後に炎上。田丸正幸さん提供。

 今月11日午後、沖縄県東村高江区の米軍北部訓練場近くで、米軍の大型輸送ヘリコプター・CH53Eが墜落し、炎上した。現場は最も近い民家から200メートルで、付近には学校もある。現場近くの住民達に、墜落時の状況や、現在の心境を聞いた。

◯「紙一重だった」「放射性物質が飛散しているのでは?」

 「もうもうと黒煙が立ち上っていて、大きな炎が見えた。けが人や死者が出なかったのは、紙一重。あと数秒、墜落するタイミングがずれていたら、民家に突っ込んでいたかも知れない」。そう語るのは東村の村議・伊佐真次さん。伊佐さんの自宅は墜落現場から1キロほどで、墜落後の一報を受けて、すぐ現場に向かったという。「米軍は今回の事故を"不時着”だと言っているようですが、あれは墜落でしょう。ヘリの機体の半分が潰れて溶けているのに、事故を小さく見せようとしていることが許せない」(伊佐さん)。

 「2004年の沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落した事故では、部品につかわれていた放射性物質が飛散しましたが、今回も同じことが起きたのではないでしょうか?」と懸念するのは、高江区在住のミュージシャン、石原岳さん。沖国大に墜落したCH53Dの回転翼監視システムには放射性物質のストロンチウム90が使用されており、米軍兵士らは放射能防護服に身を包み、機体の回収や土壌採取などにあたっていた。今回のCH53Eは同系統の別機種ではあるが、「米軍の調査結果の詳細は私達には伝えられない」と石原さんは不信感を募らせる。「はっきり言えば、日本は今なお米軍の占領下にあると自覚しなきゃいけないんですよ。日米地位協定も米軍が日本で好き勝手できる内容。このおかしさをメディアは人々に伝えて欲しい」(石原さん)。

◯日本は今も占領下=日米地位協定

 日米地位協定とは、在日米軍の権限などを定めたものだが、その内容を端的に言えば、「米軍には日本の法令は適用されない」という不平等条約である。やはり国内米軍基地があるドイツやイタリアでは、それぞれの国の国内法が適用され、米軍はその活動が制限される。それに対し、日本では在日米軍が事故を起こしても、日本は「再発防止」を要請するにとどまり、在日米軍の活動を制限することは出来ない。日米地位協定では、事故についての日本側の捜査権も極めて限定的だ。前出の伊佐さんは「今回、米軍ヘリの乗員には負傷者がいなかったと聞きますが、乗員たちは事故後、さっさと現場から逃げ去ってしまった」と、沖縄県警による事情聴取もなく、米軍ヘリ乗員達が現場を去ったことに不快感を示す。安倍首相は今回の事故後に出演したテレビ朝日『報道ステーション』で「大変遺憾だ。米軍に再発防止を求める」と発言したが、日米地位協定の改定には言及しなかった。

◯ヘリパッドへの不安も増大

事故後の現場付近は騒然となり、交通規制も。写真提供:田丸正幸さん
事故後の現場付近は騒然となり、交通規制も。写真提供:田丸正幸さん

 今回の事故を受けて現場近くの住民たちは一様に強い衝撃と不安を抱えている。それは、高江区では、米軍北部訓練場の一部を返還する代わりとして、新たにヘリパッド(ヘリコプター離着陸帯)を建設中で、これらの6つのヘリパッドは集落を取り囲むような位置にあり、一部で既に在沖米軍が訓練を始めている。そのため、かねてから住民達から事故を懸念する声があがっていたが、今回、その不安が的中したかたちだ。東村在住の畜産家・田丸正幸さんは、「米軍のことは、今までは喉元に刺さった問題だと思ってました。しかし、現実に目の前で燃え盛る炎を見たら、もう目の前に突き付けられた脅威だと確信しました」と言う。

 前出の石原岳さんの妻、理絵さんも「これまでは慣れみたいなものもあり、ヘリパッドから(米軍輸送機の)オスプレイが飛んできても、『うるさいな』くらいに思っていたのですが、今は怖くて仕方ない」と語る。「今後、ヘリパッドの運用が本格化したらどうなってしまうのか。訓練では、同じ空域を1日に10回以上飛ぶのですが、ヘリパッドの近くでは、民家の上を、乗員の米兵達の顔が見えるくらい米軍機が低空飛行していくのです。とにかく恐ろしいです…」(理絵さん)。

高江に飛来したオスプレイ 動画提供:高江現地行動連絡会

◯沖縄だけでなく、日本の政治全体の問題

 事故現場周辺の住民達が不満を募らせるのは、米軍に対してだけではない。本土の政治家達や有権者に対しても、沖縄の基地負担を他人事の様に思わないで欲しい、と口々に語る。「沖縄だけの問題じゃないですよ。米軍基地のあるところなら、日本中どこでも同じようなことは起きうるのです」(石原岳さん)。「沖縄を日本国内だと考えているのなら、日本全体の問題として考えて欲しいです。沖縄に基地負担を押し付けている、日本の国策がおかしいと、政治家達には考えてもらいたいし、本土の有権者の皆さんにも考えてほしいです」(田丸さん)。「このところ、大分空港や、岩国基地、石垣島と、米軍機のトラブルが相次いでいます。米軍側はかなり緩んでいるのではないでしょうか。命に関わることなので、もっと真剣に事故防止に努めてほしいですが、本音を言えば、米軍には出ていってもらいたいです」(伊佐さん)。

 今回の衆院選では、安倍首相の「国難」発言など、北朝鮮問題への対応など安全保障が争点の一つとなっているが、翁長雄志・沖縄県知事が言うように、在日米軍による事故が相次ぎながらも抜本的な対策も行われず、基地周辺の住民達の負担が軽減されないという状況もまた「国難」なのだ。

(了)

パレスチナやイラクなどの紛争地での現地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、入管による在日外国人への人権侵害、米軍基地問題や貧困・格差etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』(扶桑社新書)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。

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