【共謀罪】国連人権専門家が日本政府に批判文書、国内も大規模デモが各地で
政府与党は、共謀罪(テロ等準備罪)を新設する組織犯罪処罰法改正案を、23日にも、衆院本会議で採決する構えだ。だが、共謀罪をめぐっては、現行法でテロ対策は可能なことや、政府方針に反対する人々への弾圧に使われるのではないか、警察等の盗聴やネットの監視が無制限になるのではないか、との懸念から、各地で大規模な反対デモなどが行われている。さらに、国連の人権理事会が選任した専門家から、共謀罪の内容に強い懸念を伝える文書が日本政府へ送られるなど、内外で共謀罪は大きな問題となっている。
◯国連の人権専門家が共謀罪に懸念、日本政府に問いただす
今月18日、国連人権理事会が選任するプライバシーの権利に関する特別報告者である、ジョセフ・ケナタッチ氏が、日本政府に対し、共謀罪について懸念し、その内容について問い合わせる書簡が公表された。書簡では、
- テロ対策を掲げていることに反し、共謀罪の対象にテロや組織犯罪とは関係ない行為が処罰対象になっていること、
- どのような行為が処罰の対象になるのか曖昧で、第三者によるチェック機能もないこと、
- 人々のプライバシーに重大な悪影響があること、
- 政府の方針に反対するNGOに対する監視が強まること、
などを問題視しており、国際的な人権関連の規約を守るよう強調している。
ケナタッチ氏は書簡の中で日本政府に対し、国際人権法の規範および基準と法案との整合性についてや、法案の審議に関して公的な意見参加の機会について、市民社会の代表者が法案を検討し意見を述べる機会があるかどうか等の情報を提出するよう求めている。日本政府は、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の批准を共謀罪新設の根拠としてきたが、国連側から共謀罪への重大な懸念を示されるという状況となった。
◯国内各地で大規模デモ
国内でも共謀罪反対の声は高まっている。今月19日、国会正門前で総がかり行動実行委員会と共謀罪NO!実行委員会、未来のための公共などの各団体が呼びかけた、共謀罪に対する抗議行動では、主催者発表で約1万人が参加。さらに21日には全国で共謀罪関連の反対デモなどが行われ、大阪でデモでは4000人、東京では、若者憲法集会が主催したデモに1800人が参加した。こうした反対運動は今後さらに行われる予定だという。
高まる内外の懸念の声に、野党も共謀罪について徹底的な追及をするとしており、仮に23日に衆議院での採決を行ったとしても、参議院での審議はこれまで以上に厳しいものとなりそうだ。
(了)
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