東京MXテレビとDHCの開き直りに反感、デモや不買運動もー『ニュース女子』沖縄ヘイト放送

26日に行われた、東京MXテレビ前の抗議で発言する泰真実さん

沖縄での米軍基地反対運動の取り上げ方が批判を呼んでいる、東京都のローカルテレビ局、東京メトロポリタンテレビジョン(東京MXテレビ)の番組『ニュース女子』。26日の午後、沖縄から駆けつけた参加者を含め約120人が集まり、東京MXテレビに謝罪と訂正を求めた。番組を提供したDHCシアターにも批判の矛先は向けられ、ネット上では不買運動も始まっている。

◯事実誤認、歪曲だらけの放送

『ニュース女子』への批判が収まらない。同番組は、「今話題のニュースを女性とともに考え、面白くわかりやすく解説する、 大人の社交界型ニューストーク番組」と銘打ち、化粧品やサプリメントで知られるDHCの関連会社「DHCシアター」が提供、東京MXテレビで放送されている。問題となったのは、今月2日の放送。沖縄県本島北部の集落・高江付近で建設中の米軍ヘリパッドへの反対運動についての『ニュース女子』の内容が、著しく事実と異なり、偏見に満ちたものだと批判されているのだ。主な論点だけでも、

『ニュース女子』の主張:

「基地反対派の暴力で抗議活動が行われている現場までに近づけない」

実際の状況:

在京のテレビは何の問題もなく現場取材を行っている

『ニュース女子』の主張:

「反基地派が道路を封鎖、救急車の往来を妨害している」

沖縄タイムスの報道:

「現地消防に確認したが、その様な事実はない」

『ニュース女子』の主張:

「基地反対運動には日当が支払われており、デモ参加者は仕事でやっている。日当の資金源は不明」

名指しされた市民団体「のりこえねっと」の反論:

「一人でも多くの人々に沖縄の状況を知ってもらいたく、現地を訪問・報告する『市民特派員』を募集、交通費などの費用の一部として集めたカンパから支払った。『日当』というのは事実と異なる。そもそも取材を受けていない」

『ニュース女子』の主張:

「警察がデモを取り締まらない」「翁長知事がトップだから」

実際の制度/状況:

日本全国からの機動隊が派遣され、デモ参加者を強制排除している。各地の警察に指揮・命令する権限を持つのは警察庁。

などの事実誤認や根拠が乏しいなどの問題がある(関連記事)。他にも「沖縄県民のほとんどは基地建設に賛成している」と、現地世論調査の結果と異なるコメントを根拠も無くしたり、基地反対派を「テロリスト呼ばわり」するなど、およそニュース番組とは言えない有様であった。こうした事実誤認や歪曲だらけの番組内容に対し、沖縄地元2紙だけでなく、朝日新聞や東京新聞、神奈川新聞等でも批判記事を掲載し、BPO(放送倫理・番組向上機構)も東京MXテレビ側に報告を求める事態に発展しているのだ。

◯東京MXテレビ前で沖縄の男性が訴え

26日午後、市民有志の主催で行われた東京MXテレビ前での抗議活動では、約120人の人々が、『ニュース女子』の放送内容について、訂正と謝罪を求めた。東京MXテレビ前には、沖縄県与原町の作業療法士で辺野古基地移設や高江ヘリパッドへの反対運動に参加している、泰真実さんも参加。マイクを握って訴えた。

『ニュース女子』は現場にも来ないで、さも、反基地運動がカネ目当ての活動であるかのように伝えましたが、ふざけるなと思います。沖縄で基地に反対している人々が実際にはどのような人々なのかご存知ですか?ある人は、学童疎開船を米海軍が撃沈した対馬丸事件の生き残りです。また、ある人は、母親を米軍兵士に殺されました。その方は、コンクリートブロックで殴打されて殺された自身の母親の姿をその目で見た。そういう人々が、もう戦争や嫌だ、もう基地は嫌だと、反対運動に参加されているのです」(泰さん)。

東京MXテレビ本社
東京MXテレビ本社

主催者の一人として今回の抗議活動に参加したNGO職員の野平晋作さんは、「人権」「環境」「平和」などを掲げた東京MMテレビの放送基準を読み上げ、「素晴らしい内容で、是非その通りにしてもらいたいです」と呼びかけた。また、東京MXテレビの放送基準に“放送が真実でなかったり不適切だったことが判明した時は、できるだけ速やかに明確な訂正、取り消しの放送をすると共に再発防止に努める”と書かれていることをあげ、「『ニュース女子』の放送内容は、訂正してもらいたいです」と訴えた

主催者らによると、今後も東京MXテレビ前での抗議活動を続けるとのことで、次回は2月2日16時半から行い、沖縄からヘリ基地反対協議会の安次富浩さんも参加する予定だという。

◯DHC側の開きなおり、不買運動にも発展

東京MXテレビ前での抗議
東京MXテレビ前での抗議

『ニュース女子』の制作は、化粧品やサプリメントで知られるDHCの関連会社「DHCシアター」が行っており、東京MXテレビほか、地方ローカル局に提供している。そのため、人気SNS「twitter」上では、「#DHC不買」というタグがつけられた投稿が相続くなど、DHCへの批判も高まっている。これに対し、DHCシアターは、1月20日、そのウェブサイト上に『ニュース女子』についての見解を掲載。

https://www.dhctheater.com/information/2017-01-20-283265/

米軍ヘリパッド抗議現場から車で1時間以上離れた、二見杉田トンネル前までしか取材に行かなかった件について、

“トンネルから高江ヘリパッドの間では基地反対派によって車両のナンバープレートが記録され、基地ゲート前に到着する前に暴力的に阻止された、等々の証言がある”

“番組制作者としては事前調査の段階で、こうしたリスクも踏まえ、現場取材者や協力者、撮影スタッフの安全に配慮するのは当然のことと考えます”

“そもそも法治国家である日本において、暴力行為や器物破損、不法侵入、不法占拠、警察官の顔写真を晒しての恫喝など数々の犯罪や不法行為を行っている集団を内包し、容認している基地反対派の言い分を聞く必要はないと考えます”

出典:DHCシアターのウェブサイトより

等と、主張している。

また、「のりこえねっと」側の抗議声明についても、

“これら言論活動を言論の場ではなく一方的に「デマ」「ヘイト」と断定することは、メディアの言論活動を封殺する、ある種の言論弾圧であると考えます”

出典:DHCシアターのウェブサイト

等と、主張している。

しかし、DHCシアター側の主張は、誹謗中傷、事実誤認の上塗りだとも言える。上記したように、高江ヘリパッド抗議活動現場では、在京メディアも全く問題なく取材しているし、高江ヘリパッド建設を推進する安倍晋三総理大臣の身内である安倍昭恵さんも何の危害も加えられることなく、視察を行えている。さらに、「暴力的に阻止」という証言についても、DHC側が「裏が取れていない」と認めている

反基地側が“暴力行為や器物破損、不法侵入、不法占拠、警察官の顔写真を晒しての恫喝”をしているという主張も歪曲、拡大解釈だ。高江のヘリパッド反対運動は筆者も何度も取材しているが、非暴力をつらぬいている。その一方、基地賛成派の活動家らが、反対派の女性の顔を至近距離で本人が嫌がっているのに執拗に撮影し、女性が手でカメラを払ったら「暴行を受けた!」と主張するという事例もある。また、沖縄県八重瀬町の南山法律事務所所属の小口幸人弁護士も、高江のヘリパッド周辺で「不当逮捕が行われていることは明らか」と指摘している(関係情報)。

“言論弾圧”という主張も、滑稽ですらある。ろくに取材を行わず、裏も取れていない不確かな情報で、他者の名誉や尊厳を傷つけるような行為が、メディアとしての「言論」なのか。筆者は、『ニュース女子』の上記したような論点について、DHCシアター側に問い合わせたが、「ウェブサイトの見解が全て」と、筆者の質問に対し一切答えることはなかった。

高江での抗議活動参加者らを強制排除する機動隊。抗議活動は非暴力で行われている。
高江での抗議活動参加者らを強制排除する機動隊。抗議活動は非暴力で行われている。

いずれにせよ、『ニュース女子』の放送内容がDHCへの反感を招いていることは確かなようだ。筆者の取材に対し、幾人もの人々が「DHC製品はもう買わない」と答えている。

「私もここ数年ずっとDHC商品を使っていました。DHCシアターを始めるという広告を見た時にとても嫌な気持ちになったものの、その後も商品購入は続けていたのです。でも、今回のニュース女子の問題で、DHCをやめる決心がつきました。いい商品を作ることと、その会社の思想とは関係ないようでいて、やはり重要なことだと思います」(匿名希望・女性)

「これまではコンビニで急なときとかに買っていましたが、『ニュース女子』の一件以降、1円たりともDHC に使わないようにしています」(匿名希望・女性)

「実は数年前まで、夫婦で結構なユーザーでした。永久汚名の烙印を確定し、退会します。絶対に許しません。あの会社で働いている人の中には良心的な人もいるのでしょうが、越えてはいけない一線を超えています」(匿名希望・男性)

◯徹底的な事実関係の確認を

 報道によれば、『ニュース女子』の今回問題となった回を、地方ローカル局「ミヤギテレビ」(仙台市)は「事実を曲げた」として放送しなかったという(関連報道)。東京MXテレビもDHCシアターも、最初から開き直るのではなく、まずは徹底的な事実関係の確認が必要ではないだろうか。

(了)

パレスチナやイラクなどの紛争地での現地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、米軍基地問題や貧困・格差etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』(扶桑社新書)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。

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