安倍首相、戦場ジャーナリストが安保法制閣議決定会見を赤ペンチェックしましたよ!

前略 安倍晋三さま

 日々の公務お疲れ様です(とは言いましても、残業代ゼロ法案や派遣法改悪、原発再稼働や原発輸出、武器輸出、辺野古への米軍基地移設etc、全くありがたくないので、この辺りに関しては、頑張らないでいただきたいのですが)。

さて、この度、首相は安保法制(戦争法案)を閣議決定され、これについて会見されました。私は、主に中近東でイラク戦争での現場取材含め、この10年以上対テロ戦争をウォッチしてきた者です。そうした経験から見て、首相のご発言には、いくつもの疑問点、はっきり言わせていただければ、ウソや詭弁、ツッコミどころがあると思います。つきましては、僭越ながら、首相のご発言の赤ペンチェックをさせていただきました。また、ご発言にからみ、質問もさせていただきます。

「もはや、一国のみでどの国も自国の安全を守ることはできない時代であります。この2年、アルジェリア、シリア、そしてチュニジアで日本人がテロの犠牲となりました」

出典:http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2015/0514kaiken.html

 シリアでのテロの犠牲とは、いわゆる「イスラム国」、ISILに殺害された後藤健二さんと湯川遥菜さんの事件のことですね。確かにお二人が殺害されたことについては、私もとても悲しく、また憤りを感じております。しかし、ISILに人脈を持つ、中田考さん、常岡浩介さんが湯川さん救出のために昨秋動いていたにもかかわらず、彼らの人脈を有効活用されることはありませんでした。それどころか、北大生が戦闘目的でシリアに渡航しようとした疑いに絡み、中田さんと常岡さんは『私戦予備陰謀罪』の被疑者として家宅捜索を受け、ISIL側と連絡を取ることができなくなってしまった。つまり、公安警察がみすみす、湯川さん救出のチャンスを潰したのですが、この件について首相はいかがお考えでしょうか?

 また、後藤さんについても、ISIL側から後藤さんのご家族にメールが届いており、ご家族を通じて外務省や政府もその内容を把握していたにもかかわらず、まったく交渉をおこなわなかった。そもそも、安倍首相の「対ISILの2億ドル支援」発言が事態を悪化させたことについては、いかがお考えでしょうか? 

「それでもなお、『アメリカの戦争に巻き込まれるのではないか』。漠然とした不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。その不安をお持ちの方に、ここではっきりと申し上げます。そのようなことは絶対にありえません」

「自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは今後とも決してない、そのことも明確にしておきたいと思います」

出典:http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2015/0514kaiken.html

 第一次安倍内閣の際、安倍首相は国会でウソをつかれています。その貴方を信用しろというのは、なかなか難しいことです。具体的に言いますと、イラクに派遣された航空自衛隊の活動についてです。たとえば、平成19年04月24日・衆議院本会議で首相は、

「自衛隊がイラクにおいて行う人道復興支援活動等は、多国籍軍の司令部との間で連絡調整を行いつつも、その指揮下に入ることはなく、我が国の主体的な判断のもとに、我が国の指揮に従い、イラク特措法に基づき行われるものであるため、武力行使と一体化することはありません」「航空自衛隊は、人道復興支援活動として国連の人員、物資等を、また人道復興支援活動及び安全確保支援活動として多国籍軍の人員、物資を輸送しています」

と国会答弁していますね。

 あたかも「人道復興支援」が中心のようにアピールされてきた航空自衛隊の活動ですが、その実態は「米軍の空のタクシー」でした。名古屋の市民運動家らの情報開示の求めに応じ、民主党政権交代後の2009年9月に防衛省が開示した、イラクでの活動実績によれば、航空自衛隊が輸送した人員の割合で「国連関係者」はわずか6%にすぎず、全体の6割以上が、米軍を中心とする多国籍軍関係者でした。当然、米兵達は銃火器で武装しており、そうした事実は記録にも残っています。

イラクに派遣された航空自衛隊の輸送人員実績
イラクに派遣された航空自衛隊の輸送人員実績

国際的な戦争の常識で言えば、戦闘人員及び武器弾薬の運搬、つまりロジスティクス(兵站)は戦闘行為の一環と観られます。2008年4月に名古屋高裁が下した航空自衛隊のイラクでの活動を「違憲」とする判決も、戦闘人員や武器弾薬の運搬が、憲法で禁じられる集団的自衛権の行使にあたる、つまり「自衛隊の活動が米軍と一体化している」と判断したことによるもの。会見で安倍首相は、

「国会の承認が必要となることは言うまでもありません。極めて限定的に集団的自衛権を行使できることといたしました」

「戦争法案などといった無責任なレッテル貼りは全くの誤りであります。あくまで日本人の命と平和な暮らしを守るため、そのためにあらゆる事態を想定し、切れ目のない備えを行うのが今回の法案です」

出典:http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2015/0514kaiken.html

と発言されましたが、それならば、まず第一次安倍政権において、航空自衛隊のイラクでの活動実態を国会で明らかにせず、国民を欺いたことについて謝罪し、航空自衛隊が輸送した米軍の部隊およびその部隊が従事した具体的な任務について、情報を開示すべきです

「わが国の平和と安全に資する活動を行う米軍をはじめとする外国の軍隊を後方支援するための法改正も行います。しかし、いずれの活動においても武力の行使は決して行いません。そのことを明確に申し上げます。これらはいずれも集団的自衛権とは関係のない活動であります」

出典:http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2015/0514kaiken.html
米軍が投下したクラスター爆弾で負傷、苦しむイラクの少年
米軍が投下したクラスター爆弾で負傷、苦しむイラクの少年

  米軍は、国際人道法違反の戦争犯罪の常習犯と言えますが、米軍が現地で非人道的行為を繰り返してもなお、米軍への支援を行うのでしょうか?具体的には、イラク戦争において、米軍は人口密集地への爆撃、しかもクラスター爆弾や白リン弾などの非人道兵器を多用しました。また、日本の法律では厳重にその取扱いが管理される放射性物質である劣化ウランを原料とする兵器を、米軍は劣化ウラン重量にして約2000トン使用したと推計されます。さらに、アブグレイブ刑務所などの捕虜収容所において、電気ショックや殴打、さらにはレイプなどを含めた性的虐待を米軍兵士が行っていました。さらに、ラマディやファルージャなどでの都市攻略では、救急車や医療施設を攻撃し、女性や子どもまで狙撃し、無抵抗の負傷者や捕虜まで殺害したことが明らかになっております。これらの行為は戦争犯罪として処罰されるべきことは明白です。米軍の支援を行うということは、自衛隊はこうした戦争犯罪の共犯者ということになるかもしれません。

米軍の攻撃で破壊された救急車。ファルージャにて2004年6月撮影
米軍の攻撃で破壊された救急車。ファルージャにて2004年6月撮影

 さらに申しますと、ISILの指導者であるバグダディもその側近も、イラク人であり、米軍の刑務所での虐待から過激思想を培った、いわば対テロ戦争が生んだモンスターです。ISILの前身である「イラクの聖戦アルカイダ」は、イラク戦争を支持し自衛隊を派遣したことから日本を敵視し、2004年10月にはイラクを訪れていた日本人旅行者の香田証生さんを星条旗の上で殺害しました。つまり、自衛隊が米軍の活動を支援することで、新たなリスクが発生する可能性は極めて高く、過去の事例からもそれは明白なのですが、首相はそうしたリスクを増大させる責任についてはご自覚されているのでしょうか?

 また、前述しましたように、後方支援は武力攻撃と一体化したものです。古今東西、戦争を遂行する上で、最も重要なことの一つが後方支援=ロジスティクス(兵站)です。人員や武器弾薬、食糧等を前線に補給すること、そのための補給路を確保し、また相手の補給路を断つこと。これはもっとも基本的な戦術の一つです。ですから、ロジスティクスが戦闘行為の一環とみなされるのは国際的な常識です。「戦闘行為はしないけども後方支援はする」「集団的自衛権とは関係ない」というのは、まったくの詭弁に他ならないでしょう。

 まだまだ、いろいろありますが、長くなりましたので、今回はここまでとしたいと思います。機会がございましたら、ぜひ、私の質問にも、お答え下さいませ。

                              草々

                              志葉 玲

パレスチナやイラクなどの紛争地での現地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、入管による在日外国人への人権侵害、米軍基地問題や貧困・格差etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』(扶桑社新書)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。

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