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チョコで世界を救う!?バレンタインデーに贈りたい紛争地・被災地の子どもたちへの愛

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
日本イラク医療支援ネットワークの募金チョコ
日本イラク医療支援ネットワークの募金チョコ

あと数時間だが、今日はバレンタインデー。そしてバレンタインチョコというと、志葉はイラク、シリア、そして福島に思いを寄せる。それは毎年、日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)が、「チョコ募金」というものをやっているからだ。これは、JIM-NETが2006年から始めた募金キャンペーンで、ワンコイン500円の募金をした人へお返しにチョコレートを送るというもの。イラクでは、米軍が使用した劣化ウラン弾による放射能汚染が原因と疑われる、子ども達のガン・白血病が、湾岸戦争・イラク戦争の頃から増加している。米国は健康障害と劣化ウラン弾との関係を認めようとしないが、イラク現地の医師達に実感では、明らかに子ども達の健康障害は増え、9歳の女の子が通常40~50歳代に多い乳がんを患うなど、それまでに経験することのない症例を診るようになった、という。

1991年の湾岸戦争から経済制裁の対象だったイラクでは、十分な医療設備がなかった上、イラク戦争によるフセイン政権の崩壊後の混乱で、現地の医療現場の窮状はさらに酷いものとなった。そのため、ちょうど、今から10年前に結成されたのが、JIM-NETだ。日本で募金を集め、ガンや白血病に苦しむイラクの子ども達のために、抗がん剤を届ける。一昨年秋に来日した、ザイナブ・カマルさんのようにJIM-NETの支援でガンや白血病から快癒した子ども達も多い。その一方で、混迷し続ける情勢の中で貧しい人々がより貧しくなる中で、親が病気の子ども病院につれて行った時には手遅れ、という様なケースも少なくない。

JIM-NET事務局長の佐藤真紀さんは、あるイラクの少女のことが忘れられないという。

サブリーンさん
サブリーンさん

「イラク南部バスラに住んでいたサブリーンは2005年、11歳の時に目のガンで現地の病院に行ったのですが、すでに手遅れで右目を摘出しなくてはなりませんでした。サブリーンの家は貧しくて病院に通うお金もなく、JIM-NETの経済支援プロジェクトで、4年間、病院に通いました。彼女は、学校に行ったこともなく、病院の院内学級で初めて絵を描くことを習ったのです。彼女の絵はとてもユニークで、私達は彼女の描く絵をJim-netのポストカードやチョコ募金のチョコ缶のイラストに使うようになりました。それが好評だったのか、約1000万円もの募金が集まり、イラク医療支援に役立てることができました」(佐藤さん)

サブリーンさんの描いた絵を使ったチョコ缶
サブリーンさんの描いた絵を使ったチョコ缶

「でも、サブリーンのガンは2007年の春に再発してしまった。治療したのですが、2008年の8月にも再発し、手術をしています。そして、2009年の8月、また再発。頭蓋骨内にガンができて、左目も見えなくなってしまった。大好きな絵も描けなくなって、悔しがっていました。翌月、サブリーンは入院しましたが、ベッドが足りなく、地べたで寝ていたのです。その後、ベッドに寝れるようにはなったのですが、手術や放射線治療を行った後での再発です。手の施しようがありませんでした。その年の10月17日、サブリーンは亡くなりました」(同)。

ガンが再発してしまったサブリーンさん
ガンが再発してしまったサブリーンさん

サブリーンさんは亡くなる直前、JIM-NETのイラク人スタッフにこう語ったという。

「わたしは死にます。でも、幸せです。なぜなら、わたしの絵をチョコレートに使ってくれるといっていたから。イラクの子ども達を(チョコレートの募金で)助けてください」

佐藤さんは「だから、僕たちは、チョコレートで、募金を頑張ってあつめ、薬を送り続けなければいけない。今までやってきたことをまた延々と続けていく」と語る。劣化ウランの半減期は44億年。イラクの人々は半永久的に放射能汚染に苦しめられ続ける。日本の人々が自国の政府がイラク戦争を支持・支援したことを忘れていく中、佐藤さん達は募金を集め続け、今年は約8000万円の募金が集まった。

これらの募金は、イラクだけでなく、シリア難民や福島の子ども達のためにも使われる。

「JIM-NETの拠点があるイラク北部アルビルは比較的治安が安定しているので、シリアからの難民達が避難してきています。彼らのこともほっておくわけにはいかず、難民キャンプへの支援を行っています。また2011年からは福島への支援を始めました。劣化ウラン弾が原因と疑われる被害を訴えてきたイラクの子ども達にとっても、私達にとっても、福島の原発事故は正に人事ではありませんでした。放射線測定などの『見える化』、血液検査などの健康診断、より放射線量が少ないところへの保養といったプロジェクトを福島の人々と協力しながら行っています」(佐藤さん)。

今日14日から19日まで、東京・日比谷のギャラリーで、JIM-NETの10年間の軌跡を展示する「絆ぐるぐる展」が催される。サブリーンさんの描いた絵など、この間のチョコ募金に使われたイラクの子ども達の絵の原画も展示されている。志葉としても、是非、多くの人々に訪れてもらいたい、と願う。

「絆ぐるぐる展」

会場 : ギャラリー日比谷  東京都千代田区有楽町1-6-5 ギャラリー日比谷ビル

日時:2月14日(金)〜2月19日(水) 11:00〜19:00(最終日は17:00まで)

JIM-NETのチョコパッケージや原画の展示、アレッポ石鹸や、JIM-NETのチャリティグッズを販売。会場(3F)ではイベントも。

詳細http://www.jim-net.net/event2/2014/02/post-13.php

*本稿の写真はいずれも佐藤さん提供。

*チョコ募金等、 JIM-NETの活動については、http://www.jim-net.net/

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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