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「昔の日本の女性はひとり300kgの米俵を担いだ」は誤り。観光用に撮影された宣伝写真

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
拡散している投稿。Twitterより。モザイクは筆者加工

 2人の女性が5つの米俵をかついだ写真を掲載し、「昔の日本人の体力はハンパじゃない。一人300kgの米俵を担いだ」などという投稿が拡散していますが、写真は観光用に撮影されたものです。

2020年の投稿が2022年になって拡散

 問題の投稿は2020年6月に行われたもので、なぜか2022年のいまになって拡散し始めました。

 あまり身体の大きくなさそうな女性が米俵を5つも担いでいるこの写真は「5俵かつぎ」として有名ですが、すでに多くの人の調査によって「300kg(米俵1つが60kg、5俵で300kg)は担いでいない」ことがわかっています。

写真は観光用。2俵には「もみがら」が入っていた

 この件を調査していて参考になるのは、国立国会図書館が全国の図書館等と協同で構築している「レファレンス協同データベース」と個人ブログ「のんびり生きてます」の2つのサイトです。

 前者は新聞の掲載情報をもとに解説、後者は山形県酒田市にある山居倉庫に掲載されている写真を撮影したものが掲載されています。

個人ブログ「のんびり生きてます」の方には新聞記事も掲載されているためわかりやすい。「のんびり生きてます」より。筆者キャプチャ
個人ブログ「のんびり生きてます」の方には新聞記事も掲載されているためわかりやすい。「のんびり生きてます」より。筆者キャプチャ

 これらの情報をまとめると、写真は観光用に撮影されたもので、実際にお米が入っているのは3俵、残り2俵には「もみがら」が入っていたそうです。

 とは言え、3俵の時点で180kgです。かなり力持ちだった印象を受けます。

運搬係の仕事は通常時で1度に2俵、ひどい時で3俵だった

 なお、実際に昭和8年に米俵を運ぶ運搬係をしていたという女性によると、船着き場から倉庫まで1人あたり1日1,000俵を運ぶノルマがあり、通常時で1度に2俵(120kg)、ひどいときは1度に3俵(180kg)運んでいたとのことです。

 「5俵かつぎ」が事実ではないとしても、すごい話です。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。スマホ、ネットの話題や炎上などが専門。ファクトチェック団体『インファクト』編集員としてデマの検証も行っています。最近はYouTubeでの活動も。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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