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「NHKがテレビがなくても受信料徴収を主張」はデマ。悪質なまとめサイトによるミスリード記事

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
拡散している問題の記事。『Share News Japan』より

 悪質なまとめサイト『Share News Japan』による「NHK大改革…「テレビがなくても受信料徴収」を主張へ」という記事がTwitterで約3.2万件も拡散し、トレンド入りしていますがデマです。

「#政府広報のNHKに受信料は不要だ」がトレンド入り

拡散しているツイート。アイコンは筆者が削除。Twitterより。
拡散しているツイート。アイコンは筆者が削除。Twitterより。

 問題のツイートは2.7万人のフォロワーを抱える政治系アカウント(@ppsh41_1945)が6月10日に投稿したもので、「「ふざけるな」と思った人はRTお願いします」のメッセージとともに、『Share News Japan』の記事が紹介されていました。

 このツイートは記事執筆時点で約3.2万件も拡散しており、ツイート内のハッシュタグ「#政府広報のNHKに受信料は不要だ」がトレンド入りする事態にもなっています。

トレンド入りしたことでさらに拡散中。Twitterより
トレンド入りしたことでさらに拡散中。Twitterより

「テレビがなくても受信料徴収」はジャーナリストによる推測

 それでは、本当にNHKは「テレビがなくても受信料徴収する」という主張をしたのでしょうか?

 『Share News Japan』が転載している週刊ポストの記事(2022年1月29日付)を確認すると、「テレビがなくても受信料徴収」は経済ジャーナリストの町田徹氏による推測であることがわかります。

総務省は1月11日に、NHKが未契約者向けに番組をインターネット配信する社会実証事業の計画を認可した。

「4月から、受信契約を結んでいない人も実験的に『NHKプラス』を視聴できるようになります。サービスの拡大は、いずれ『パソコンやスマホ、カーナビからNHKの番組を観られるならテレビがなくても受信料を負担すべき』と主張し始める布石とみています」(町田氏)

NHK大改革 配信は「テレビがなくても受信料徴収」を主張し始める布石か|NEWSポストセブン - Part 2

 NHKが主張しているわけではなく、町田徹氏による発言を『Share News Japan』はあたかもNHKが主張しているかのようにミスリードしているわけです。

カーナビはすでに受信料徴収の対象

 ちなみに町田氏は「いずれ『パソコンやスマホ、カーナビからNHKの番組を観られるならテレビがなくても受信料を負担すべき』と主張し始める」と話していますが、ワンセグ携帯やカーナビは「協会の放送を受信することのできる受信設備」として受信料徴収の対象になっています。

 ワンセグ携帯やカーナビについては2016年ごろより“受信設備の設置”かどうかで裁判で争われることが多くなり、最終的には2019年3月に最高裁判所から「受信契約を結ぶ義務がある」との判決が出ています(カーナビも2019年5月に地裁でNHK勝訴判決)。

 町田氏による推測は正確な情報に基づいていないあやふやなものだとも言えます。

総務大臣「NHKのネット受信料は考えていない」

 それでは、実際にNHKはインターネットユーザーに対して受信料を徴収するのでしょうか?

 この疑問に対しては、2022年4月8日に金子総務大臣が記者会見にて「現時点で、テレビを設置していないユーザーがNHK受信料負担の対象者とする考えはない」と答えています。

 また、NHKが2019年の改正放送法に基づいて提供を始めたインターネットサービス『NHKプラス』は受信料を原資としているため、NHKの契約者を対象とした放送の補完サービスとの建前で運営されています。

 こうした状況を考えると、現時点ではインターネットユーザーからの受信料の徴収は現実的ではありません。

 もちろんこの説明だと「現時点ではじゃないか!」との突っ込みが起きるでしょうが、まだ主張もされておらず、そもそものきっかけの記事がデマであることを考えると主張され始めてから怒った方が良いと思います。

 過去に何度も報じられていますが(記事123)、『Share News Japan』はPVのためにデマを拡散する悪質なまとめサイトのため、このサイトの情報をもとにあーだこーだ言い合うのは時間のムダです。今すぐ読むのをやめましょう。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。スマホ、ネットの話題や炎上などが専門。ファクトチェック団体『インファクト』編集員としてデマの検証も行っています。最近はYouTubeでの活動も。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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