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『あつまれ どうぶつの森』を使った選挙活動。なぜバイデンは許されて石破茂はダメなのか

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
バイデン氏の『あつまれ どうぶつの森』選挙活動キャンペーン。同氏サイトより

 任天堂の人気ゲームソフト『あつまれ どうぶつの森』を選挙活動に使うと、9月1日にアメリカのジョー・バイデン氏(民主党)が発表。続く7日、日本の石破茂氏(自民党)も自民党総裁選挙に利用すると発表しました。

 しかし発表直後から、石破氏に対して「規約違反だ」との指摘が殺到。翌8日には石破陣営は「選挙活動での利用を断念する」と発表しました。

 バイデン氏はokで、なぜ石破氏はだめなのか?

 その理由を解説します。

バイデン氏と石破氏の違いは利用規約

 バイデン氏と石破氏による『あつまれ どうぶつの森』の選挙活動は、どちらも用意したポスターをゲーム内の「マイデザイン」機能を利用してユーザーに貼ってもらうというものでした。

 石破氏はポスターにくわえて応援してくれた人の島に訪れるというファンサービス要素もありましたが、そこまで大きな違いはありません。

 違ったのは、国ごとの利用規約でした。

 じつは日本国内のニンテンドーアカウントの利用規約には、「政治的な主張を含むものの共有や送信を禁ずる」との項目(規約内の“8.禁止事項”の(b)に該当)があります。

 一方、アメリカのニンテンドーアカウントの利用規約にはそのような記載はありません。

 あるのは「任天堂の行動規範(Code of Conduct)をユーザーも守ること」の一文であり、その行動規範では「なりすまし、虐待、ストーカー行為、脅迫、嫌がらせ、差別的、中傷的、憎悪的、わいせつ、肉体的に危険、その他違法なもの」が禁じられているだけで、「政治的な主張」は禁じられていません。

じつは国ごとに異なる利用規約

 利用規約と言えば統一されたものが使われていると考えがちですが、じつはビジネスを展開している国や地域によって内容が異なります。

 たとえばイギリスの任天堂では、同国の現代奴隷法第54条(年間の売上高が3,600万ポンドを超える企業や団体は、現代の奴隷労働や人身取引を防止する取り組みを開示しなければならない)に従って「現代の奴隷制度の透明性に関する声明」をページ内に掲載(※PDF)しています。

 つまり法律や慣習に従い、任天堂は国によって異なる利用規約を掲げているのです。

 これがバイデン氏の選挙活動は問題ないのに、石破氏の選挙活動はダメな理由でした。

 ちなみに両氏の許可や問い合わせの有無について任天堂に確認を取りましたが、同社広報によると「個別の事例について当社からコメントは控えてさせていただきます」とのことでした。

 石破氏も発表前に任天堂に問い合わせを行っていれば許可されたかもしれないし、そもそも「規約違反だ」と指摘されプチ炎上となる事態を防げたかもしれません。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。スマホ、ネットの話題や炎上などが専門。ファクトチェック団体『インファクト』編集員としてデマの検証も行っています。最近はYouTubeでの活動も。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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