グーグルの牙城、崩せるか。人気ゲーム『フォートナイト』が野良アプリで配信する理由とは?

フォートナイトAndroid版ベータの公式ページ。筆者キャプチャ

 世界中で大人気のゲーム『フォートナイト バトルロイヤル(Fortnite Battle Royale)』のAndroid版ベータの配信が8月10日(金)から始まりました。

 『フォートナイト バトルロイヤル』はPCをはじめ、PlayStation 4、Xbox One、Nintendo Switch、iOSですでに配信されており、今回のAndroid版は世界中のモバイルユーザーから待ち望まれていたものです。

 しかし、開発元のEpic Gamesは今回のアプリをAndroidユーザーなら誰もが利用しているGoogle Playからの配信ではなく、ゲームの公式サイトからアプリを直接インストールさせる仕組み(いわゆる野良アプリ。独自ストアとも)を採用したことから驚きが広がっています。

 一体、なぜ独自配信になったのでしょうか?

Googleの手数料30%に不満

 自社で独自に配信することについて、Epic Gamesのティム・スウィーニー(Tim Sweeney)CEOは海外ゲームメディア『TouchArcade』のインタビューで2つの理由を説明しています。

 ひとつは、Epic Gamesがユーザーと直接関係を結びたいと考えていることです。「インターネットにより、リアル店舗や中間代理店をはさむ必要がなくなった」とスウィーニーCEOは語っています。

 そしてもうひとつが――というよりもこれがメインだと思われますが――Googleによる手数料の問題です。

 Google Playで配信しているアプリは、基本的に売上の30%を手数料としてGoogleに支払わなければいけません。スウィーニーCEOはこの手数料の割合について、「Google Playが提供しているサービス内容と比較して釣り合っていない」と不満を述べています。

Epic Games独自ストアの手数料は12%

Epic Gamesが運営するマーケットプレイス。筆者キャプチャ
Epic Gamesが運営するマーケットプレイス。筆者キャプチャ

 じつはEpic Gamesはいま多くのゲーム開発で利用されているゲームエンジン『Unreal Engine』の開発元であり、同社のゲームエンジンを利用する開発者向けのマーケットプレイスでは、先月7月に手数料を従来の30%から12%へ変更しました。

 しかもこの手数料の変更は、2014年までに行われた取引のすべてにさかのぼって適用されます。つまり、最初から手数料が12%だった状態になるわけです。

 Epic Gamesはレートの変更(手数料の値下げ)について、マーケットプレイスの成長とフォートナイトの成功のおかげで大量の取引が行われるようになったスケールメリットを理由に挙げています。

 Google Playの規模には及ばないものの、同様のマーケットプレイスを運営して手数料の値下げができたEpic Gamesからすると、「なぜGoogle Playの規模でそのような手数料になるのか?」という疑問が出てくるのは不思議ではありません。

 実際、スウィーニーCEOは「コンソールゲーム機ではハードウェアの投資やマーケティングキャンペーンなど手数料に見合うサービスがあるものの、Androidのようなオープンプラットフォームでは支払い処理、ダウンロードにかかる回線のコスト、顧客サービスなどを考えても30%はおかしい」と訴えています。

Googleは最低でも5000万ドル(約55億円)の収入を失った

 それでは、フォートナイトが野良アプリとして配信されることでGoogleにどのような影響が出るのでしょうか?

 一番に挙げられるのは、フォートナイトがGoogle Playから配信されていた場合にGoogleが得られた手数料収入の機会損失です。

 フォートナイトの売上はいまや月間で数百億円にのぼるレベルであり(PC、PS4、Xbox、iOSの合計)、仮にGoogle Playで配信されていた場合、Googleは2018年で少なくとも5,000万ドルの手数料収入を得られたと調査会社Sensor Towerは分析しています。

 Google全体の売上高(1,109億ドル)からすると微々たるものですが、Google Play単体で見るとAppleのApp Storeに売上で95%の差をつけられている以上、見逃すには大きな魚です。

 影響の大きさを考えてか、GoogleもGoogle Playで「fortnite」と検索したユーザーに対して、「利用できない」との案内を表示するこれまでにない対応をとっています。

Epic Gamesが独自ストアを立ち上げる?

 もうひとつ話として出ているのは、今後、Epic GamesがAndroidユーザー向けに独自ストアを立ち上げるのではないかという点です。

 日本ではDMMが人気ゲーム『艦隊これくしょん』を武器に「DMM GAMESストア」に、Amazonが『Kindle Fire』を使って「Android アプリストア」にAndroidユーザーを集めています。

 今回のフォートナイトの独自配信によってEpic Gamesに多くのAndroidユーザーが集まるのは必然的な流れであり、Googleとは異なる独自ストアをEpic Gamesも始めるのではないかと噂されています。

 仮にそうなった場合、Google Playと比べて低くなるとみられる手数料とゲーム好きのユーザーを多く抱えている観点から、ゲーム開発者たちがGoogle PlayではなくEpic Games独自ストアでAndroidアプリの配信を行うことは十分に考えられます。

 それを避けるために、GoogleはGoogle Playの手数料を30%から引き下げるのではないか――というのがいま業界で注目されている話題です。

 今後どうなるのかはわかりませんが、「ユーザーと繋がりたい」と話しているEpic Gamesがフォートナイトで集めたユーザーに対して何もしないとは考えにくいでしょう。

セキュリティ上の問題も

 一方、Google Playで配信しないということは、先日、佐川急便の偽アプリで話題になったように「提供元不明アプリのインストールを許可する」との設定をオンにする必要があります。

 インストール後に設定を再びオフにすることで、フォートナイトのAndroidアプリ以外のインストールを防ぐことはできます。

 しかし、一度オンにしたユーザー全員がそれをオフにするわけではないため、攻撃アプリがインストールされやすい環境にある端末が増えることになります。

 この点についてAndroidユーザーは注意が必要です。

 なお、日本ではフォートナイトAndroid版ベータはiOS版の配信時と同じように現在は招待制になっています。遊びたい方は招待メールを登録しておきましょう。