【現地取材】ブラジル大敗の韓国で見た2002年→2022年。ヒディンクとベントの意外な共通点とは…
韓国に来ている。2002年ワールドカップ開催から20年の節目を迎えたことを記念して、KFA(韓国サッカー協会)は6月1日から6月7日までを『2022 KFAフットボール・フェスティバル 2002>2022 Glory & Beyond』と定めて、さまざまなイベントを企画。
昨日6月2日には韓国代表とブラジル代表とのAマッチが行われたが、試合はネイマールのPK2発を含む5得点でブラジルが圧勝。韓国はファン・ウィジョが決めたゴールのみで、5-1の大差で敗れた。
(参考記事:【独占写真】ブラジルに“1-5大敗”の韓国、PK2本献上にソン・フンミン不発…ベント監督の戦術通用せず)
この日の試合は6万4872名の大観衆だけではなく、パク・チソンにアン・ジョンファンなど2002年ワールドカップでベスト4進出を成し遂げた“4強戦士”たちも多数観戦していただけに残念な大差でもあったが、実は試合前に行われた「2002年ワールドカップ20周年記念午餐会」で、かつて5失点の大敗を喫した人物が冗談交じりでこんなことを語っていた。
「みなさんは私のあだ名を覚えていますよね? オ・デヨン(五対零の韓国語読み)。それが私のあだ名でしたよね? 成功まで本当に大変な道のりだった」
発言の主はフース・ヒディンク。2002年ワールドカップで韓国代表を率いた監督だ。母国オランダ代表を1998年フランス・ワールドカップで3位に導き、名門レアル・マドリードも指揮した名将も、韓国代表監督時代には大きな危機に直面したことがある。
日本と共同開催した2001年コンフェデレーションズカップでは当時世界最強だったフランス代表相手に0-5の完敗。その2か月半後には敵地でチェコ代表相手に、またしても0対5の大敗。ついたあだ名が、韓国風の名前で皮肉った「オ・デヨン」だった。
そのオ・デヨンならぬ「オ・デイル(五対一)」の屈辱を味わった現・韓国代表のパウロ・ベン監督だが、大敗してもさほどショックではなさそうだった。
試合後の記者会見では開口一番に「我々のミスからの失点が多かった。強豪ブラジル相手に正当な結果だった」と発言。オンラインでの記者会見だったため感情は伝わりづらく、表情も淡々としていた。
韓国記者からの質問ではベント監督が重視する「自陣でもボールを繋ぐビルドアップが失点を誘発したのではないか」との指摘もあったが、まったく動じていなかった。むしろ表情を一切崩さず、真顔で持論を展開していた。
「攻守両面でミスがあった。ただ、だからといってこれまでのスタイルを変えるのは話にならない。それに今日の試合の肯定的な部分としては、ミスをしながらも、我々のプレーをしたという点だ。 (ビルドアップが)最上のやり方だと思ったプレーをした。 攻撃で良い姿を見せたが、ブラジルが我々より多くのチャンスを作った。今日の試合で良かった点を出発点にして、修正すべきところは修正して、これから続く試合で最善を尽くしたい」
周囲の声や結果に動揺することなく、淡々と我が道を貫こうとする姿は20年前のヒディンク監督とも重なるが、ベント監督もヒディンク監督のようにマイウェイを貫き通せるだろうか。
韓国は6月6日にはチリ代表、10日にはパラグアイ代表、14日にはエジプト代表との強化試合が続く。そこで「オ・デヨン」や「オ・デイル」は避けられても連敗が続けば、軌道修正も迫られるだろう。
2002年ワールドカップ開催20年を記念して韓国で始まった『2022 KFAフットボール・フェスティバル 2002>2022 Glory & Beyond』。もう少し韓国にとどまり、取材を続けてみよう。