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女子ゴルフ賞金女王4度のアン・ソンジュ「私だけ日本行きを悩むも…」韓国専念の理由【一問一答】

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
アン・ソンジュ(写真提供=KLPGA)

今週から韓国に来ている。いよいよ「withコロナ」が動き出した韓国のスポーツやエンターテイントの現場を取材するためだが、済州島では昨日から女子プロゴルフのKLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)ツアーが開幕した。

今季は計33大会、賞金総額309億ウォン(日本円=約30億9000万円)という史上最大規模で行われる2022年KLPGAツアー。先日はツアーの顔とも言えるKLPGA広報モデルも発表になり、そのメンバーたちもそろい踏み。

(参考記事:イ・ボミらも経験者!! KLPGA広報モデル2022年の11人が決定【PHOTO】)

済州島で行われているのはその開幕戦となる「ロッテレンタカー女子オープン」だが、昨日の初日では日本でもその名が知られた選手が好スタートを切った。

日本女子ツアーで4度も賞金女王に輝いているアン・ソンジュだ。

2005年のプロ転向から2009年まで韓国女子ツアーで活躍した後、2010年からJLPGAツアーに参戦したアン・ソンジュ。日本ではこれまで通算28勝を挙げ、賞金女王にも4度輝いている。

その後、2020年12月に妊娠を報告し、翌2021年1月に産休制度適用が発表。同年4月、無事に男児と女児の双子(テリン、テユル)を出産した。

本来は今季からの日本ツアー復帰を目指していたがそうだ、子どもたちの事情も考慮し、今季は韓国女子ツアーに専念。昨日の「ロッテレンタカー女子オープン」第1ラウンドでは、5バーディ・2ボギーの3アンダーで「69」を記録して2位タイで終えて、記者たちの取材にも答えていた。

以下はアン・ソンジュの一問の一答。

-今日の感想は?

60打台のスコアを出せるとはまったく思っていませんでした。パープレーだけでも満足できるコンディションだったのに、こんなに良い成績を出すことができて本当に嬉しいです。ひとまず上手く試合を終えられましたが、まだラウンドは残っています。ゴルフは今日上手く行ったからといって緊張を解いたら、どうなってしまうかわからないスポーツです。運が良かったと思っています。それに、済州島の天気はとても変わりやすいので、緊張を緩めることはできません。残りのラウンドも一生懸命やりたいと思います。

―今年は韓国女子ツアーへの復帰を宣言したが、感じたことは?

後輩たちがあまりに上手なので、最年長として選手内で模範にならなければと思いつつも、上手な後輩たちを見て学ぶという考えも同時に持っています。それに、韓国語を話せるということが本当に良いですね。日本に10年以上いたので、韓国が恋しいときもありました。子どものことも考えての決定ではありましたが、自分自身にとっても良かったと思います。

―もう一度(日本に)挑戦するつもりはあるのか。

実際、子どもたちを韓国に残して、私だけ日本に渡ってツアーを戦うかとても悩んだのですが、子どもを置いて行くとなると心配で集中もできないし…。夫ともたくさん話しましたが、簡単に決めることは本当にできませんでした。

ただ、日本でもう1年産休が使えると聞いたので、気を楽にして韓国に帰ってきました。新型コロナウイルスだけでなく、あらゆる状況が良くなれば、来年にはまた日本に行くべきではないかと考えています。日本は永久シード権の条件が30勝ですが、残り2勝です。その2勝は決して簡単ではないと思いますが、最善を尽くして終わらせたいと思っているので、来年に再び挑戦してみたいです。

―今シーズンに向けた準備はどうだったのか。

子どもがいたので、平日は両親の助けをもらいながらトレーニングをしなければなりませんでした。自分が自分の体を見る時間があまりなかったので心配でした。妊娠と出産をしてから6カ月の間、太りすぎてしまったので、戻すことが難しかったのも事実です。それに、来る前日にはトルチャンチ(満1歳の誕生日を祝うパーティ)もしてきたので、とても大変でした。ただ、母親になったからか、プレーが少し慎重になったみたいです。

―今シーズン、最も注目している後輩を挙げるとすれば。

本当にみんな上手です。(パク・)ミンジも上手いし、(ジャン・)ハナや(パク・)ヒョンギョンもみんな上手いと思います。ただ、最初の大会なので生半可なことは言えません。私はただ新人に戻った気持ちで、学ぼうという気持ちでやっていますが、若い選手たちの覇気が羨ましかったです。私にもあんなときがあったのに…と思ったりもしましたが、最大限自分だけのゴルフをしようと努力中です。

―今シーズンの目標について聞かせてほしい。

どこまでやれば良いかを自分自身にたくさん問いかけました。子どもがいなければ、目標はもっと高く設定していたと思います。ひとまずの目標は、すべての大会で予選を通過することと、賞金ランキングで60位以内に入ることです。夫とは「賞金ランキング60位以内に入れば今季は成功だね」と話しました。

―出産後、すぐにプレーに復帰できたことについて、精神的に一番大きな力になったエピソードやアドバイス、力になった人はいるか。挙げるならば。

10年間日本で活動して心配しましたが、韓国女子ツアーに復帰することを決めたら、助けると言ってくださった方が多くて本当にありがたかったです。ただ、感謝しながらも負担に感じる部分もありました。それでも、メインスポンサーのナショナルビーフの会長が、「ゴルフは何もかも思うようにはいかない。後輩たちと笑顔で楽しみなさい」と言ってくださったおかげで、気が楽になりました。

―キャディーは誰が務めている?

夫がバッグを担いでいます。2人ともプロなので、意見に違いが出ることもあります。ただ、今は私の感覚がかなり衰えている状態なので、調子を取り戻すまで4ゲーム程度は夫がキャディーをして、1カ月後ぐらいからは知り合いの後輩がバッグを持ってくれると思います。

愛する子供たちのために今年は韓国でのプレーに専念するが、来年はまた日本に戻り、目標とする永久シード権獲得(30勝)に挑戦したいというアン・ソンジュ。まずは今季の活躍に期待したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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