リオデジャネイロ五輪・柔道男子73kg級で金メダルに輝いた大野将平。本日行われる東京五輪では連覇が期待されているが、その大野に挑む選手のひとりとして注目したいのが、韓国のアン・チャンリム(安昌林)だ。

2017年世界選手権優勝や世界ランキング1位になったこともあるアン・チャンリム。実は彼は京都で生まれ育った在日コリアン3世。

幼い頃は民族学校で学び、桐蔭学園高校時代にはインターハイにも出場。筑波大学在学時代は2013年全日本学生体重別選手権で優勝もしている。

そして2014年、「オリンピックで金メダルを取るため」に祖父母の故郷・韓国に。韓国代表として着実に結果を残し、前回リオ五輪に続いて今回の東京五輪の畳の上にも立つ。

57年前の東京五輪でも在日コリアンが柔道メダル

もっとも、日本で生まれ育った在日コリアンが東京五輪の舞台に立つのはアン・チャンリムが初めてではない。

何を隠そう今から57年前の1964年東京五輪。天理大学出身の金義泰(キム・ウィテ)氏が銅メダルに輝いている。それは韓国柔道初のメダルでもあった。

また、72年ミュンヘン五輪では天理大学出身の呉勝立(オ・スンリプ)が銀メダル、76年モントリオール五輪ではアン・チャンリムと同じ京都出身で東洋大学に籍を置いていた朴英哲(パク・ヨンチョル)が銅メダルを手にしている。韓国柔道の発展に寄与したのは、日本で生まれ鍛えられた在日コリアンの柔道家たちだった。

ただ、在日コリアンが韓国柔道界で成功するのは簡単ではない。在日コリアン4世として大阪で生まれ育った秋山成勲の例がその大変さを物語る。

周知の通り、秋山は日本に帰化し、引退後は韓国で芸能活動を始め、今では本人どころか妻のSHIHOさんや娘サランちゃんまで人気者だが、帰化する前に韓国代表としてオリンピック出場を果たすべく単身で韓国に渡った頃、韓国柔道界の派閥やしきたりに馴染めず、辛い思いもたくさんしたことをのちに明かしている。

(参考記事:3年半ぶりに格闘技復帰の秋山成勲、韓国と日本の国旗を同時使用へ)

そんな秋山も果たせなかった五輪代表の座を前回リオ大会で初めて掴み、今回の東京五輪にも出場するアン・チャンリム。

韓国ではその特異な境遇から「日本柔道と韓国柔道のハイブリッド決定版」と呼ばれたこともある男は、東京五輪ではどんな成績を残すだろうか。前回リオ五輪では16強戦敗退の悔しさだけが残る結果で終わっただけに、今回は勝ち進んで大野将平に挑んでもらいたい。

ちなみに大野将平とは同じ1992年生まれで、2018年アジア大会や2020年グランドスラム・デュッセルドルフ大会など、国際大会などでも何度も対戦してきた。

ただ、通算対戦成績6戦6敗と大野の前に屈してきたアン・チャンリム。大野との対決はふたりが決勝にまで勝ち進んでこそ、実現する。