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女子空手パワハラ問題で思い出される、韓国女性アスリートたちへの凄絶パワハラ事件簿

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
植草歩(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

空手の日本代表・植草歩がパワハラ被害を訴えた事件。なんでも香川政夫選手強化委員長が練習中に竹刀を使い、植草歩の目を負傷させたこともあったという。

植草歩は当初、傷害容疑での刑事告訴も辞さない構えで準備を進めたが、のちに刑事告訴は撤回。全日本空手道連盟の倫理委員会が「竹刀を用いた練習は大変危険で、まったく認められるものではない」としたことを受け、方針を転換したという。

この一連の騒動を聞いて真っ先に思い浮かんだのは、韓国スポーツ界で問題視されてきた女性スポーツ選手に対する指導者のパワハラ問題だ。

ただ韓国の場合は、刑事告訴まで行くことが少なくない。

韓国代表選手へのパワハラで刑事罰に

例えば、植草歩と同じくオリンピック選手であれば、女子ショートトラック韓国代表シム・ソクヒの“事件”があった。

(参考記事:コーチからの「常習的な性的暴行」に苦悶していた金メダリスト、シム・ソクヒの涙の訴え

国家代表コーチだったチョ・ジェボムが2014年8月から2017年12月にわたり、泰隆(テルン)選手村や鎮川(チンチョン)選手村、韓国体育大学スケートリンクなどで、シム・ソクヒにパワハラや性的暴行を加えていたことが発覚したのだ。

2014年のソチ五輪で金1、銀1、銅1のメダルを獲得し、2018年の平昌(ピョンチャン)五輪でも女子3000mリレーで金メダルを獲得したシム・ソクヒに常習的に暴行を加えた容疑で懲役1年6カ月を言い渡され、服務中だったチョ・ジェボムは今年1月21日、性犯罪容疑で懲役10年6カ月を言い渡されている。

シム・ソクヒの涙の訴えで、加害者が刑事罰を受けることになったわけだ。

さらに悲惨な事件もあった。元トライアスロン韓国代表のチェ・スクヒョンさんだ。

チェ・スクヒョンさんは2020年6月26日、所属する慶州(キョンジュ)支庁トライアスロンチームの監督やチームドクターを名乗る男、そして主将など先輩選手から過度なパワハラやいじめを受け、それを苦にして22歳でこの世を去った。

当然ながら韓国ではスポーツ界を超え、社会的な大問題に。今年1月29日、裁判所はキム・ギュボン監督に懲役7年、主将チャン・ユンジョンに懲役4年を言い渡した。

宣告に先立って裁判長が「被害者とチェ選手の遺族の苦痛を反映できないかもしれないが、被告人たちに宣告された量刑は、量刑基準と関連法によるものであること参酌してほしい」と伝えたことが印象的だった。

いずれのケースも刑事告訴され、加害者には罰が与えられている。何よりも警察の調査や裁判の過程で真相が明らかになったことで、問題点が浮き彫りとなった。

特にチェ・スクヒョンさんの事件を通じて韓国スポーツ界全体の体質にメスが入り、2020年8月にはスポーツ界の暴力・性暴力根絶のための根本的な対策と、アスリートの人権保護のためのいわゆる“チェ・スクヒョン法”が国会本会議を通過。「暴力体育指導者の資格停止期間拡大」「被害者保護のための臨時保護施設の運営」などが盛り込まれた改正法は、今年2月から適用されている。

そもそもパワハラ自体があってはならないが、問題が生じたとき、徹底的に真相究明がなされる必要はあるだろう。

植草歩のパワハラ被害についても様々な意見が出ているだけに、真実が解明されることを期待したいが…。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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