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BTS(防弾少年団)の“完全体”が見られるのは今年が最後?JINは入隊を延期できるのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
BTS、後列右がJIN(写真:REX/アフロ)

アメリカのビルボード「HOT100」で新曲『ダイナマイト』が1位を飾り、世界的な注目を集めているBTS(防弾少年団)。日本でもBTSの快挙が多数報じられたが、今のところ彼らが7人全員で活動できるのは、今年までとされている。

韓国人男性であれば避けることができない、兵役の義務があるからだ。

韓国の兵役法によれば、高等学校以上の学校に通う学生、司法研修院などの研修機関の研修生、スポーツ分野の優秀者に対してのみ、最長で28歳までの入隊延期の許可が与えられる。

これに基づけば、BTSメンバー最年長で1992年12月生まれのJINは、満28歳となる今年12月には入隊しなければならないことになる。

しかし、最近、新たな動きが報じられている。

兵役法改正の動きはあるが…

9月3日、共に民主党のチョン・ヨンギ議員が兵役法の一部改正法律案を発議したのだ。改正案の発議は、チョン議員をはじめ計14人が参与したという。

発議された改正案は、文化体育観光部長官が国威宣揚に著しい功績があると認め、推薦された大衆文化芸術分野の優秀者は、入隊を延期できるという内容だ。

チョン議員は「兵役の延期は、免除や特例とはまったく違う問題だ。20代だからこそ花開く職種など、新しい職種についても入隊を延期できるようにする選択肢を与えるべき」と主張した。大衆文化芸術だけでなく、eスポーツ選手なども入隊延期が可能なように協議中だと説明した。

もしこの改正案が通れば、今や世界的な人気を誇り、ある意味で韓国のイメージアップ=国威発揚に大貢献しているBTSのメンバーたちは、文句なく対象者となるだろう。

ただその改正案が実際に実現するのかは未知数。むしろ難しいといわざるを得ないかもしれない。

というのも、ちょうど1年前の2019年9月にも韓国では似たような議論があったのだ。

国防部、兵務庁、文化体育観光部で構成された『兵役特例関連制度改善タスクフォース(TF)』が兵役法に関して議論したが、当時の結論としては「現行のまま」という方針が固まった。2か月後の11月に「兵役代替服務制度改善方案」が発表されながら、BTSなどの韓流スターは「芸術・体育要員」としての代替服務の対象から除外されている。

当時の韓国政府の説明では「全般的に代替服務減縮の基調であり、兵役義務履行の公正性、公平性を考慮する政府の基本立場と合わず、検討から除外した」とした。

そもそも芸能人の兵役に関しては以前から問題が多く、『愛の不時着』で知られるヒョンビンの兵役から流れが変わったとはいえ、基本的には「特例は設けない」というのが韓国の世論なのだ。

(参考記事:俳優ヒョンビンの“兵役”は何がすごかったのか。今も語り継がれる理由

現行法でも延長は可能?「2021年末まで」

だからといって、JINが今年絶対に入隊しなければならないわけでもないという。

BTSの所属事務所Big Hitエンターテインメントは9月2日、上場のために金融委員会に提出した証券申告書にこう記している。

「主要アーティストであるBTSのメンバーたちは1992年生から1997年生まれの現役兵入営対象者だ。彼らのうち、出生年度が最も早いキム・ソクチン(JIN)は、兵役法に従った入営延期申請で2021年末まで入隊を延期できると判断する」

『東亜日報』などによれば、兵役法の施行令および『現役兵入営業務規定』に基づき、入隊対象男性は、2年を超える修士課程履修を理由に満27歳になる年の末日まで在学延期が可能で、その他の法定入隊延期事由を満たしている場合、最大5回にわたって2年まで追加の入隊延期が可能だという。

そのためBig Hitエンターテインメントは「2年を超える修士学位課程の進学者は、最大29歳になる年の末日まで法定入営延期が可能だ」と説明した。JINの入隊が今年ではなく、再来年になる可能性があるということだ。

通常の場合、BTSが全員そろって活動できるのはJINが満28歳となる今年12月までとなる。

しかし現在、兵役法を改正する動きがあり、また現行法でも「2年を超える修士学位課程の進学者」は満29歳まで延期できるため、JINが法定入隊延期事由を満たせば、来年まで入隊の延期が可能となるというわけだが、はたして。

いずれにしても世界的なグループとなったBTSだけに、兵役に関する議論が尽きない。どのような結論に至るのか、注視したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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