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日本ではアンチ多いキ・ソンヨンも韓国では大スター。11年ぶりKリーグ復帰の理由

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
キ・ソンヨン(写真提供=FA Photos)

韓国のプロサッカーリーグであるKリーグにスーパースターが帰ってきた。3度のワールドカップ出場を誇り、キャプテンとして活躍したキ・ソンヨンが、古巣のFCソウルで11年ぶりにKリーグに復帰することになった。本日、その記者会見も行われた。

日本でキ・ソンヨンと言えば、ネガティブ・イメージのほうが強いかもしれない。2011年アジアカップ準決勝の日韓戦でPKを決めた直後に見せたゴールパフォーマンスが日本を侮辱するようなポーズだったことから反感を買い、Yahooの検索欄で「キ・ソンヨン」と入力すると、「キ・ソンヨン 猿まね」「キ・ソンヨン事件」が関連ワードとして付いてくる。

今年2月には久保建英が所属するマジョルカに移籍するも、スペインではわずか1試合、それも途中交代で8分しか出場できず、6月30日に契約満了で退団した。

ただ、韓国では10代の頃からスター選手だった。高校卒業後の2006年に入団したFCソウルでは2年目からレギュラーの座を射止め、2008年には19歳で韓国代表デビュー。

以降、代表引退を表明した2018年ロシア・ワールドカップを含め、3度のワールドカップ出場を含めてAマッチ出場110試合(韓国サッカー歴代8位)を数える。

2012年ロンドン五輪では銅メダルに貢献し、2015年からは韓国代表のキャプテンも務め、ホン・ミョンボ、パク・チソンらとともに名キャプテンのひとりに数えられるほどだ。

と同時に、韓国サッカー界の“欧州組”の代表格でもあった。

2009年の夏にスコットランドのセルティックFCにスカウトされ3シーズン在籍したあと、2012年からはイングランドのプレミアリーグへ。

スウォンジー・シティ、サンダーランド、ニューカッスル・ユナイテッドなどでプレーしながら重ねたプレミアリーグ出場記録は、187試合15得点。プレミアリーグ出場試合数ではあのパク・チソン(149試合)よりも多い。

キ・ソンヨンの妻は、ドラマ『朱蒙』でヒロインを務め日本でも人気の女優ハン・ヘジンだが、イギリスと韓国を行き来しながら年下の伴侶を支えた“内助の功”も有名で、ふたりはサッカー界と芸能界の両方で“インオ夫婦(日本風でいうと“おしどり夫婦”)と呼ばれるほどである。

(参考記事:“日本旅行中” 女優ハン・ヘジン&キ・ソンヨン、夫婦ショット公開)

そんなスーパースターが古巣のFCソウルに戻ってくる。実に11年ぶりのKリーグ復帰となるだけに、韓国のサッカーファンやメディアが歓迎しないわけがないだろう。

もっとも、キ・ソンヨンのKリーグ復帰までの過程は紆余曲折だった。

2018年6月から所属したニューカッスルではコンスタントに出場できず、特に今季は出番が減り、今年1月に契約解消して自由契約の身に。

Kリーグの強豪である全北現代(チョンブク・ヒョンデ)が獲得に動くが、セルティック移籍時に「ソウル以外のKリーグのクラブに移籍する場合、一定水準以上の違約金を払わなければならない」という条項を契約書に加えられたことが足かせになり、当時はFCソウルも獲得に消極的だったこともあってKリーグ復帰は御破算となった。

それで向かったのが前出したマジョルカで6か月の短期契約であったが、さしたる活躍もできずに終わったのは前述した通り。失意の帰国とまでは言わないが、凱旋帰国というほどでもないのも事実だろう。

キ・ソンヨンも入団会見で言っている。

「この1年間、自分らしくないサッカー人生だったような気がする。ピッチに立つことができず、もどかしさが多かった。もちろん、選手としてもう少し欧州で頑張り、かっこよく終えたいという気持ちはあった。 人の心というものは思い通りに行かないものだ」

「新型コロナのこともあって、スペインと韓国と家族が離れ離れに暮らす中、家族に対する考えも深まった。この時期に家族を連れて海外で選手生活を送ることに悩みもあった。心の片隅では、Kリーグへの復帰をいつも念頭に置いていた」

「代表引退を表明したあと、この1年間はマンネリに陥っていたのも事実だ。モチベーションが不十分だった。その動機付けのためにも、韓国に復帰することが正しいと思った。これからはKリーグで大きなモチベーションを持って試合をすれば、第2の全盛期が訪れると確信している」

ピッチに立てないもどかしさと31歳の年齢。さらには新型コロナや家族のことなど、さまざまなことが相重なってKリーグ復帰を決心したのは間違いないだろう。

ただ、長らく韓国サッカーの“顔”を務め今も影響力があるキ・ソンヨンの韓国復帰によって、Kリーグへの注目度が高まることになる。

特に注目されるのは、キ・ソヨンヨンと同じ時代にイングランドやドイツで選手生活を送り、今季から蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)で11年ぶりにKリーグ復帰している元韓国代表イ・チョンヨンとの対決だ。

そもそもふたりは同学年(イ・チョンヨンは1988年7月生まれ、キ・ソンヨンは1989年1月生まれ)で、揃って活躍してFCソウル黄金時代を築き、その名にヨン(龍)の文字があることから“サンヨン(ふたつの龍)”とも呼ばれる名コンビだった。

その“サンヨン”の直接対決となる蔚山現代対FCソウルの試合が8月30日にある。

「コンディションをあげていき、8月には100%ではなくとも試合には出られるはずだ」というキ・ソンヨン。今季ACLに出場しているFCソウルが10月から再開されるグループリーグを突破すれば、決勝トーナメントでJリーグ勢と対戦することもあるかもしれない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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