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渋野日向子vs鈴木愛よりも激戦か。韓国でも熾烈化しそうな女子ゴルフ「東京五輪」出場権争い

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
今季アメリカ女子ツアーで大活躍だったコ・ジンヨン(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

鈴木愛が2年ぶりの賞金女王になったことで幕を閉じた2019年の国内女子プロゴルフツアー。渋野日向子の追い上げもあって最終戦までもつれた賞金女王レースは大いに盛り上がったが、すでに次の戦いが注目されている。

来年の東京五輪の出場権をかけた争いだ。

60名の選手で競われる東京五輪の女子ゴルフの出場選手は、来年6月末の世界ランキング基準で決まる。上位15位以内の選手なら1カ国につき最大4人まで出場可能となっており、それ以降でも各国・地域で上位2位までとなっている。

12月3日発表の世界ランキングでは5位の畑岡奈紗、12位の渋野日向子、17位の鈴木愛に絞られるが、実は先週末、韓国では東京五輪への出場が有力視される選手たちが多数顔を揃えていた。

11月29日から12月1日まで韓国の慶州(キョンジュ)で行われた「パク・インビ インビテーショナル」がそれだ。

パク・インビとは2012年と2013年にアメリカ女子プロゴルフ(LPGA)ツアーで賞金女王に輝き、世界ランキング1位はもちろん、2016年リオデジャネイロ五輪・女子ゴルフで金メダルに輝いた韓国女子ゴルフ界の女王。そのパク・インビを中心とするチームLPGAとチームKLPGA(韓国女子ブロゴルフ協会)が、それぞれ12人ずつ出場する対抗戦が行われた。

「韓国女子ゴルフのオールスター戦」と称され今年で5回目を数えるが、チームLPGAのメンバーにはリディア・コー(ニュージーランド)、ミンジ・リー(オーストラリア)、ダニエル・カン(アメリカ)など韓国にルーツを持ち、東京五輪出場が有力視される選手たちが顔を揃えた。

(参考記事:「実はあの美人プロもそうだった!!」世界で活躍する韓国系の女子ゴルファーたち

もちろん、今季アメリカ女子ツアーで大活躍した韓国人選手も勢揃いだった。

例えばコ・ジンヨン。アメリカ本格参戦2年目の今季、コ・ジンヨンはメジャー2勝(ANAインスピレーション、エビアン選手権)を含めて今季4勝を飾り、賞金女王に輝いた。

このコ・ジンヨンのほかにも今季はキム・セヨン(3勝)、パク・ソンヒョン(2勝)、ホ・ミジョン(2勝) 、チ・ウンイ(1勝)、エイミー・ヤン(1勝)、ジャン・ハナ(1勝)、イ・ジョンウン6(1勝)など韓国勢がアメリカ女子ツアー33試合中、15勝が韓国人選手だった。

韓国ではアメリカで活躍する女子プロゴルファーたちを“太極娘子(テグッナンジャ)”と呼ぶが、「今年もアメリカ・ツアーは太極娘子の天下だった」(『スポーツソウル』)。

そして、その太極娘子たちの東京五輪出場権争いも激しい。

現在の世界ランキングで見ると、1位のコ・ジンヨン、2位のパク・ソンヒョン、6位のキム・セヨン、8位のイ・ジョンウン6が有力だが、そのほかにも15位前後にはキム・ヒョージュ(13位)、パク・インビ(14位)、ユ・ソヨン(18位)、エイミー・ヤン(20位)、ホ・ミジョン(21位)と群雄割拠なのだ。

日本でも畑岡奈紗(5位)、渋野日向子(12位)、鈴木愛(17位)ら3人が世界ランク15位以内に入っていれば3人とも出場だが、韓国は15位以降にも実力者がゴロゴロ。韓国では「東京五輪でメダル獲得するよりも険しい韓国代表への道」(『スポーツソウル』)とされているのだ。

冒頭で紹介した今年のパク・インビインビテーショナルには、パク・インビや前出の韓国系選手に加え、コ・ジンニョン、イ・ジョンウン6、チ・ウンヒ、エイミー・ヤン、ホ・ミジョン、ユ・ソヨン、キム・ヒョージュ、シン・ジウンなどが出場。取材した『スポーツソウル』の記者によると、「さながら東京五輪代表候補たちの見本市のようだった」という。

ちなみにパク・インビインビテーショナルでは、チームLPGAをチームKLPGAが打ち負かした。

大会は1対1のマッチプレー形式で行われたのだが、前回紹介したKLPGA6冠王のチェ・ヘジンをはじめ、チョ・アヨンら“ミレニアム世代”も多く選ばれた平均年齢23.07歳のチームKLPGAが、平均26.85歳のチームLPGA相手に15-9で勝利を飾っている。若さと勢いではKLPGAも“太極娘子”たちには負けないということか。

いずれにしても韓国でも来年は東京五輪の出場権争いがひとつの注目ポイントとなる。そして、その競争を勝ち抜いた者はきっと日本勢にとっては強力なライバルとなって立ちはだかることだろう。

今や女子ゴルフ世界最強国となった韓国。来年の東京五輪でも手ごわい相手になりそうだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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