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ドラマ『ノーサイド・ゲーム』、ラグビー不毛の地・韓国でも通用しているのは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
チャンネルWの『ノーサイド・ゲーム』告知ポスター

毎週日曜日の午後9時からTBS系列で放映されているドラマ『ノーサイド・ゲーム』。池井戸潤の小説を原作とし、大泉洋扮するトキワ自動車の中堅サラリーマン君嶋隼人が、同社のラグビーチーム“アストロズ”のゼネラルマネージャー(GM)となって奮闘する姿が描かれており、好評を得ている。

韓国の日本専門チャンネルで放映中

筆者も毎週欠かさず楽しく視聴しているが、この『ノーサイド・ゲーム』が韓国でも放映されていることをご存じだろうか。

放映しているのは、韓国の“日本コンテンツ専門”ケーブルテレビ局であるチャンネルW。日本の最新ドラマやバラエティ、ドキュメンタリー番組などの独占放映権を取得し、過去にはドラマ『孤独のグルメ』をはじめ『深夜食堂』『逃げるは恥だが役に立つ』『ドクターX~外科医・大門未知子~』『過保護のカホコ』などを放映していた。

昨年12月に同局の経営総括理事キム・ヒョンジュン氏をインタビューした際、「韓国で放送されたことのない珠玉の名作を紹介しつつ、話題の最新作も放映する」と言っていたが、その作品選びの確かさには改めて敬服する。

チャンネルWでは日本の放送開始から2週間ほど遅れた7月24日からスタート。毎週水曜日の午後11時からオンエアされており、先週8月29日には第5話が放送された。

君嶋GMと選手たちの努力で、それまで人気もなく弱小だったアストロズが超満員のスタジアムでライバルのサイクロンズ相手に対等の勝負を演じるまでの話が放送されたわけだが、ネット上で上がっている『ノーサイド・ゲーム』の反応は上々だ。

「ノーサイド・ゲームが面白いということを否定できない」「スポーツ作品ならではの感動法則をそのまま因襲しているのに僕の中にある“涙のボタン”を押しまくる作品」という意見もあるほどだ。

韓国はラグビー不毛の地とされているが…

ただ、個人的に気になったのは、韓国の視聴者たちは『ノーサイド・ゲーム』で扱っているラグビーというスポーツを理解できているだろうかということだ。

というのも、韓国でラグビーは“不人気スポーツ(=マイナースポーツ)に分類されており、まったく人気がないのだ。

どれほど人気がないのか。例えばそのチーム数である。日本のラグビー競技者人口は約12万人で、毎年冬に大阪・花園で行われる全国高校ラグビー選手権大会には約800校が予選に参加すると言われているが、韓国のラグビー人口はその100分の1にもならない。

財団法人・大韓ラグビー協会に登録されているチーム数も中学22チーム、高校17チーム、大学9チーム、社会人3チームと国軍体育部隊ラグビー部の計52チームという少なさなのだ。

そんな状況だから代表チームはワールドカップ出場歴もなく、ラグビーとアメリカンフットボールの区別もできないという一般人も多い。

それでも『ノーサイド・ゲーム』を楽しみにしている韓国の視聴者たち。そのひとりに筆者の友人もいるのだが、彼の言葉を聞いて『ノーサイド・ゲーム』が韓国でも通用する理由がわかったような気がした。

「会社員出身のGMが母体企業から予算を引き出そうと苦労したり、母体企業の経営陣から“なぜスポーツチームを運営するのか。お荷物だ”となじられたり、それでもGMが選手たちを説得して地域社会活動に参加させ、愛されるチーム作りを目指して悪戦苦闘する姿に共感する。プロスポーツチームがどうやって運営・成長していくかを描いているので、参考にも刺激にもなる」と。

彼はKリーグのクラブ運営にも携わっているだけに、余計に君嶋GMと『ノーサイド・ゲーム』の世界観に感情移入してしまうそうだ。おそらくそのほかの視聴者たちも、そういった視点でドラマを楽しんでいるのだろう。

(参考記事:韓国のテレビ関係者に聞いた、韓国で人気の「日本ドラマBEST 5」は?)

いずれにしても、韓国でも放映されている『ノーサイド・ゲーム』。本日午後9時から放映される第8話も楽しみにしたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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