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U-20W杯日韓戦「イ・ガンイン効果で日本も軽々と超えるか」と韓国が注目するワケ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
イ・ガンイン(写真提供=KFA/FA PHOTOS)

ポーランドで行われているFIFAU-20ワールドカップの決勝トーナメントで激突することになった日本と韓国。ただでさえ注目を集める“宿命のライバル対決”がFIFA主催の国際大会で実現したこともあって、韓国でも関心が高い。

日本ではJ SPORTSとBSフジでの生中継だけのようだが、韓国ではKBS N SPORTS、MBC SPORTS+といったケーブルテレビのスポーツチャンネルはもちろん、KBS2、MBC、SBSといった地上波でも生中継が予定されている。

試合の展開予想や結果を占う報道も多々あり、U-20世代における対戦成績(韓国の28勝6敗9分け)や2012年ロンドン五輪3位決定戦、2014年仁川アジア大会、2018年ジャカルタ・アジア大会決勝といった過去の国際大会での分の良さ(2016年U-23アジア選手権・決勝では韓国が敗れているのだが‥)はもちろん、U-20日本代表のチーム状況を踏まえて韓国有利を予想するメディアが多い。

(参考記事:U-20W杯日韓戦を韓国メディアが展望「日本は戦力ダウンした。手強いが壁ではない」

そんな国内の期待と注目を一身に浴びているのが、イ・ガンインだ。スペインのバレンシアに所属するチーム最年少18歳のエースには、「イ・ガンイン効果で日本も軽々と超えるか」(『ソウル新聞』)と期待が集まっている。

イ・ガンインについては過去にも何度が紹介してきたし、日本でも要警戒選手として多くのメディアで取り上げられているのでここでは割愛させていただくが、韓国では6歳の頃から有名人だった。

人呼んで“リアル・シュットリ”。シュットリとは1990年代後半に韓国で流行し、その人気は日本の『キャプテン翼』を凌ぐほどとも言われたアニメ漫画『蹴球王シュットリ』のこと。

韓国代表やKリーガーの中にも「シュットリを見て育った」という選手は多く、まさに韓国版『キャプ翼』のような存在なのだが、イ・ガンインは6歳のときにそのシュットリの名を冠したサッカーバラエティ番組『ナルララ(はばたけ)シュットリ』に出演し、“サッカー神童” として脚光を浴びた。

(参考記事:18歳で「100億円の価値ある選手」とされるバレンシアの韓国人イ・ガンインとは?

そんなお茶の間の人気者だったチビッ子がスペインで順調に成長し、今年3月には韓国代表にも抜擢。Aマッチ出場はなかったが、代表合流中は連日のようにその名が報じられ、飛び級で選ばれたU-20代表合宿合流時にも多くの関心が集まり、ソン・フンミンがわざわざロンドンから警鐘を鳴らすほどフィーバーしたのだからその期待度の大きさが伝わってくるだろう。

もちろん、今回の宿命対決でもキーマンに挙げられている。日本と韓国は16年前の2003年U-20ワールドカップの決勝トーナメント1回戦でも対決しており、そのときは日本が勝利しているが、「16年ぶりに日本と…雪辱のカギは“イ・ガンインシフト”」(『ヘラルド経済』)とする声もある。

グループリーグ初戦のポルトガル戦ではサイドハーフ、2戦目の南アフリカ戦ではトップ下でプレーしたイ・ガンインだが、3戦目のアルゼンチ戦では2トップの一角としてプレー。守備の負担を減らし、ある程度の自由を与えながらその攻撃力を最大限に生かすための処置で、それが一部メディアでは“イ・ガンインシフト”と呼ばれているのだ。

2017年からU-20韓国代表を率いるチョン・ジョンヨン監督は、3バックと4バックを併用しながら守備に重きを置いた「先守備・後逆襲」というコンセプトのもとでチーム作りを進めてきた。

バイエルン・ミュンヘンに所属するチョン・ウヨンが大会直前に招集できなくなる変更も予期なくされたが、グループリーグの試合を重ねるたびに調子を上げており、今日の日本戦でも“イ・ガンインシフト”の3-5-2になる可能性が高いだろう。

GKイ・グァンヨン、DFは左からイ・ジェイク、キム・ヒョンウ、イ・ジソル、左右ウイングバックにチェ・スン、ファン・テヒョン、ワンボランチにチョン・ホジン、その前にチョ・ヨンウクとキム・ジョンミンが陣取り、2トップにはオ・セフンとイ・ガンインというのが、筆者の予想だ。

3バックと5人のMFで守り、オ・セフンとイ・ガンインは攻撃に専念。自由を与えられたイ・ガンインは左右両サイドや2列目にも顔を出しながら、チャンスメイクにもその左足を生かして日本の守備網を崩すそうと試みるに違いない。

いずれにしても韓国の若きエースを、日本はいかに抑え封じ込むのか。それが今日の勝敗を分けるポイントになりそうだが、両国の若い選手たちにはかつてアンダー世代で凌ぎを削り合いながらも友情を深めた“日韓サッカー黄金世代”たちのような、激しくも熱い名勝負を期待したい。

(参考記事:日本と韓国のサッカー黄金世代が語り合った伝説の“チェンマイの夜”【完全再現】

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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