女性アスリートの4割が「性暴力の被害者」の韓国、スポーツ界の性暴力の撲滅へ

(ペイレスイメージズ/アフロ)

韓国の国家人権委員会がスポーツ界の暴力・性暴力問題の解決に動き出す。国家人権委員会が4月5日、「スポーツ界の暴力・性暴力などの被害者たちの人権保護体系全般に対する職権調査することを決めた」と発表した。

韓国では近年、スポーツ界の暴力・性暴力が問題視されてきた。

2月26日に韓国の文化観光部が発表したところによると、韓国の主要プロスポーツの女性選手のうち、実に37.7%がセクハラをはじめとする性暴力を受けていたという。

韓国では今年に入って、ショートトラック韓国代表のシム・ソクヒがコーチから性的暴行を受けていたことが大きくクローズアップされたが、それも氷山の一角に過ぎないことが証明されたことになる。

(参考記事:コーチからの「常習的な性的暴行」に苦悶していた金メダリストの涙の訴え

韓国文化体育観光部(部は日本の省に相当)は昨年5~12月、韓国プロスポーツ協会とともにサッカー、野球、バスケ、バレーボール、ゴルフの5大プロスポーツの選手やチアリーダーなどの従事者を対象に、性暴力の実態を調査した。

回答した927人の内訳は、選手638人、コーチングスタッフ112人、職員156人などだ。

加害者は指導者が多い

それによると、調査対象のうち14.2%が性暴力を受けたことがあると答えており、選手に限定すると女性選手の37.7%、男性選手の5.8%が性暴力の被害に遭っていたという。ここ1年で性暴力を受けたという女性選手も11.3%に上るというのだから、看過できないだろう。

選手に性暴力を行った加害者は誰か。もっとも多かったのは監督を含めるコーチングスタッフで、35.9%に上った。

昨秋に神戸で行われた女子バレーボール世界選手権で、韓国は1次リーグ脱落(1勝4敗)し世論の集中砲火を浴びたが、そこにもコーチングスタッフによるセクハラ事件が関係したとされているだけに、その影響は計り知れない。

(参考記事:“神戸惨事”の始まりだった…女子バレー韓国代表に起きていた「セクハラ事件」の内情

韓国ではどんなスポーツであっても、指導者は選手起用やチーム運営、トレーニングなどで絶対的な権限を持っている。プロスポーツであれば、選手たちの年俸にもコーチングスタッフが影響を与えるだろう。選手の立場からすれば、抵抗が難しいことは想像に難くない。

実際に、一番の問題として指摘されているのは、被害者が内部または外部機関に被害を訴えられていないという点だ。

7割が“泣き寝入り”の現実

前出の調査によれば、被害を申告したという人は回答者の4.4%しかいなかった。被害者の69.5%は、周囲の人に相談することもできなかったという。

「大韓体育会会員種目団体、懲戒現況資料」によると、大韓体育会などがこの5年間に暴力、性的暴行、暴言による懲戒が124件に上ることがわかったが、そのうち性的暴行は16件だった。

(参考記事:驚愕!! 韓国スポーツ界の暴力・性的暴行による懲戒はなんと124件!! 最も多かったのは…)

しかし被害を申告する人は20人に1人もいないことから、実際の被害者はさらに多いと考えるべきだろう。

とある国会議員が「スポーツ界の閉鎖的な特性を考慮すれば、実際の被害はさらに多いだろう。韓国スポーツ界を抜本的に改革しなければならない」と話していたが、韓国文化体育観光部が発表した調査によって、その言葉にさらに説得力が増した格好だ。

選手をはじめとする回答者全体の性暴力被害の類型を見ると、「言語的・視覚的・その他のセクハラ」が12.7%(女性33.0%、男性5.1%)、「肉体的セクハラ」が4.3%(女性12.9%、男性1.0%)、「オンライン性犯罪」が1.1%(女性4.0%、男性0%)などだった。

オンライン性犯罪とはネット上でのセクハラ発言などで、昨年末に現役女子高生チアリーダーが被害を訴えたことが記憶に新しい。

(参考記事:韓国の現役女子高生チアリーダー、ネット民からの“セクハラ被害”を訴え

韓国文化体育観光部は遅まきながら、プロスポーツ団体の申告センターとは別途に「プロスポーツ性暴力被害者支援センター(仮称)」を新設して、申告の受付や訴訟など、被害者の相談窓口を作る計画だと発表していたが、国家人権委員会も職権調査に動き出す。

人権委員会の職権調査は、すべてのスポーツ団体だけではなく文化観光部、教育部まで調査範囲を拡大し、スポーツ団体が処理した暴力・性暴力事件の処理過程や、各スポーツ団体が設けた指針の履行状態までチェックするという。

性暴力問題で揺れ続けている韓国スポーツ界。今回をきっかけに膿を出し切って、一日も早い改善を願わずにはいられない。