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引退宣言でも収まらず…韓国芸能界全体を巻き込む“V.Iスキャンダル”に発展

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
芸能界引退を宣言したBIGBANGのV.I(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

人気グループBIGBANGのメンバー、V.Iが突然の“芸能界引退”宣言をして、波紋を呼んでいる。そのニュースは韓国を越え、日本でも大きな話題となった。

(参考記事:【全文】BIGBANGのV.I、芸能界引退を宣言。「私はここまでのようです」

本人が「国民逆賊にまで追い込まれる状況」と伝えた通り、V.Iには数々の疑惑が浮上し、被疑者として警察に立件されている。

事の発端は経営に参加していたとされるナイトクラブで暴力事件が起こったことだが、そこから麻薬、脱税、性接待、盗撮などの疑惑が次々と浮上している状況だ。

「デスノート」と化したV.Iのチャットルーム

そんな中、3月25日に兵役のために軍入隊すると発表したことでさらに大炎上。「警察の捜査から逃れようとしている」と火に油を注ぐ結果となり、さらにはV.Iのメッセンジャーアプリのチャットルームに参加した芸能人も盗撮などの容疑で立件されている。

今ではそのチャットルームは「V.Iのデスノート」と揶揄されている有様で、芋づる式に韓国芸能人に疑惑が広がっている状況だ。

(参考記事:「V.Iのデスノート」に韓国芸能界が震撼…名前が挙がれば引退を免れない

まずV.Iと同じく、容疑者として警察に立件されたのは、歌手チョン・ジュニョンだ。

ソウル地方警察庁広域捜査隊は3月12日、チョン・ジュニョンを性暴行犯罪の処罰などに関する特例法違反(カメラ等利用撮影)の容疑で立件した。V.Iが参加していたチャットルームに彼も参加しており、盗撮と思われる動画などを流布したとされている。

韓国メディアが報じたところによれば、チョン・ジュニョンは2015年末から約10カ月の間、盗撮した映像を知人に流しており、確認された被害女性は10人に上るそうだ。

この事実が明るみになるとチョン・ジニョンは急遽帰国。番組の撮影でアメリカに滞在していたが、同日夜に韓国に帰国している。

警察が立件したとなれば、証拠などもある程度確保していることが予想され、疑惑が事実となる可能性も高まると考えられる。

憶測だけのデマが拡散中

ただ、何よりも今、問題なのは「V.Iのチャットルームに参加したのでは?」という憶測だけで、さまざまな韓国芸能人に“疑惑”が飛び火し、そのせいで2次被害を受けていることだ。

例えばインターネット掲示板やSNSには、V.Iやチョン・ジュニョンとともにチャットルームを通じて盗撮動画を共有した芸能人として、人気ボーイズグループやアーティストの名が根拠もなく取り沙汰された。

彼らの所属事務所はすぐに「まったく根拠のないデマであり、虚偽の事実が無分別に広がり、アーティストと当事者の名誉を深刻に毀損する状況に広がっています」と否定し、法的措置をとると表明。

また、V.Iやチョン・ジュニョンと親交があったタレントや歌手たちにも疑いの目が向けられる始末。根拠のない悪質デマが次々と浮上し、それを否定しなければならないという生産性のない騒動が韓国芸能界で起こっている状態だ。

盗撮の被害者である芸能人の名前まで…

最も看過できないのは、V.Iやチョン・ジュニョンが盗撮したとされる動画の被害者として、人気女優や有名ガールズグループのメンバーたちの名が、根拠もなく興味本位で次々と挙がっていることだろう。

(参考記事:盗撮された「被害者」まで…V.Iの騒動でデマが拡散、飛び火した韓国芸能人は?

韓国で“チラシ”と呼ばれる怪文書がSNSやメッセンジャーアプリを通じて拡散されているのだ。

その中には日本でも圧倒的な人気を誇るガールズグループの名も上がり、所属事務所は関連デマに対して強硬に対応すると即座に表明した。二次被害を与えかねないだけに、到底許されることではないだろう。

いずれにしても、一連の“V.I騒動”は今のところ、収まるどころかますます余波が広がっている。「周りのみんなに迷惑をかけることは僕自身が到底容認できません」と引退宣言をしたV.Iだが、なんとも皮肉なことでもある。

ただでさえ四面楚歌の状況の中、引退を発表して所属事務所との契約も解除となり、孤立している中、自分のことが発端になって周囲にも多大な被害が及んでいると思うと、V.Iも自責と後悔の念に苛まされているに違いない。それでも冷静さを保てるようなケアがなされていればいいのだが。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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