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「ジャニーズの危機」「日本らしいと思った」嵐の発表を韓国はどう見る?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
写真はイメージです。(ペイレスイメージズ/アフロ)

国民的アイドルグループである嵐が2020年いっぱいで活動を無期限休止するというニュースは、韓国にも即座に伝わり、各メディアがこぞって報じている。

「“解散ではなく活動休止”最後までファンを配慮する嵐」(『スターニュース』)、「日本の国民的グループ嵐、2020年まで活動。不仲NO、美しきフィナーレ」(『イルガン・スポーツ』)といった具合で、あくまでも「解散ではなく活動休止」と強調しながら、惜しむ論調だ。

発表から一夜明けた1月29日、ファンクラブ会員数が約10万人も増加するなど、日本中が「嵐ロス」に包まれたというニュースも流れたが、韓国でも「嵐ロス」は起きている。

特に韓国の20〜30代の中には、「日本文化にハマったきっかけは嵐」「嵐の言葉を理解したくて日本語の勉強をした」という人も少なくない。韓国でジャニーズが人気を博していた2000年代の“日流ブーム”の中心には、嵐がいたと言っても過言ではないだろう。

2006年と2008年に嵐が韓国でコンサートを開催した時は、チケット販売開始と同時に15万人がアクセスし、30分で売り切れになってしまったほどだ。

また、メンバーたちが多方面で活躍していた嵐だけに、少しでも日本の文化や芸能に興味を持つ韓国人ならば、嵐メンバーたちのコンテンツを一度は目にしているはずだ。

特に松本潤の場合は、ドラマ『ごくせん』や、韓国リメイク版も制作された『花より男子』の主演として、一般人の間でも相当な知名度を誇る。

(参考記事:【2019年版】韓国でリメイクされた日本のドラマを一挙紹介。えっ、あのドラマまで!?

東野圭吾原作のドラマ『流星の絆』や、韓国映画『マラソン』のリメイク版に出演した二宮和也も有名で、筆者の友人の中には「ニノゆかりの地を巡るツアー」なるものをするためにわざわざ東京・下町まで足を運んでいたほどだ。

それだけに今回の活動休止報道に触れた韓国の嵐ファンたちは、動揺を隠しきれない様子だが、それでも「解散じゃないんだから、大丈夫だよね。ゆっくり休んでください」「20年間仕事ばかりしてきたから、休みたくなるのも当然。お疲れ様でした」「メンバーたちが話し合った結果というので尊重するけど、これから寂しくなるな」「引き続き応援します」と、応援のコメントが多く寄せられている。

かつて嵐にハマっていた韓国の知人にも感想を求めてみたが、こんな言葉も返ってきた。

「2年も前に発表するなんてすごい。真面目で日本らしいと思った」

確かに韓国では今回のようなケースは非常に珍しい。そもそも“7年目の呪い”が存在するK-POP界では、存続の可否をはっきりさせないまま“事実上の解散”状態で終わってしまうグループがほとんどなのだ。ボーイズグループの場合、メンバーの兵役入隊が続いて自然消滅してしまうケースも多々ある。

(参考記事:BTS(防弾少年団)の兵役入りも決して遠い話ではない

また、解散を発表するとしても唐突すぎることが多く、90年代に一世を風靡した男性グループH.O.T.やSechs Kiesなどが突然解散を発表した時は、ファンはもちろんメディアも騒然となり、大混乱したほどだった。

そういう意味では今回の嵐の発表は、ファンたちに心の準備の時間を与えるひとつの方法としてK-POP界で参考になりそうだ。

嵐ほどのトップニュースではないが、韓国では先日、人気グループWanna Oneが活動終了を迎えた。日韓合同グループIZ*ONE同様にオーディション番組『プロデュース』シリーズから誕生し、活動期間が1年6カ月と決められてきた期間限定グループだったが、1月27日に開かれた最後のコンサートでは号泣するファンが続出したという。

(参考記事:Wanna Oneが活動を延長しない理由は?「“破格の契約金”も提示されたが…」)

1年6カ月でもそうなのだから、20年も活動し続けてきた嵐となれば、ファンたちは計り知れない喪失感に襲われるだろう。

それでも彼らの決断を尊重し応援するのがファンというもの。日本や韓国の嵐ファンには松本潤のコメント通り、「楽しい思い出を最後まで描き続けて」ほしい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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