Yahoo!ニュース

スキャンダルに事件・事故、謎の死まで…韓国芸能界の都市伝説「11月の怪談」はあるか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:アフロ)

カレンダーも11月となり、紅葉の季節がやって来た。美しい紅葉を眺めているだけで心が和み落ち着くが、11月になると韓国の芸能界やメディア関係者たちは緊張感に包まれる。

というのも、11月になると韓国芸能界ではなぜか事件や事故が多発するのだ。もともと1年中を通してさまざまな事件・事故・トラブルが起きる芸能界ではあるが、11月になるととりわけ集中する傾向にある。

それも過去を振り返ると、薬物問題、飲酒運転、さらには謎の死などショッキングでスキャンダラスな出来事が明るみになり、いつしか韓国では「11月の怪談」という言葉が都市伝説のように語り継がれるようになった。

(参考記事:毎年11月には何かが起こる…。韓国芸能界の都市伝説「11月怪談」を一挙振り返る!!)

今年も11月怪談は始まっている。11月4日には韓国映画界の名優シン・ソンイルが死去した。60〜70年代に人気俳優として一世を風靡し、2000年から4年間は国会議員も歴任したシン・ソンイルは、2017年に肺がんステージ3の診断を受けていたという。

ただ、病状が好転を見せた今年の10月には第23回釜山国際映画祭のレッドカーペットを踏み、元気な姿を披露していた。その矢先に飛び込んできた悲報だけに、韓国メディアの中には「11月の怪談」という言葉を言及した記事もあったほどだ。

では、この「11月の怪談」はいつから始まったのか。それは、1968年11月10日に歌手のチャ・ジュンラクが、27歳で亡くなったことから始まったと言われている。

チャ・ジュンラクは、韓国歌謡界で囁かれ今ではBTS(防弾少年団)にも適用されている“曲名運命論”に導かれるように亡くなっただけに、当時はかなりショッキングだったという。

1987年11月には、当時26歳だった歌手ユ・ジェハが交通事故で死去。1995年11月には人気グループ「デュース」のキム・ソンジェが原因不明の死を迎えるなど、90年代には悲報が多かった。

ただ、2000年代になると訃報よりも交通事故や警察沙汰、麻薬問題などスキャンダラスな事件のほうが多くなっていく。韓国芸能界でリベンジポルノの犠牲者が出たのも、11月だった。

(参考記事:ク・ハラだけじゃない!! 人気女優に絶頂歌姫まで、韓国芸能界“リベンジポルノ“事件簿)

しかも、2010年以降になるとさらにエスカレート。2015年にはソロ歌手のIUが小説の幼い主人公を性的対象に描写した疑いで炎上。2016年にはYGエンターテインメントの2NE1が解散を発表し、2017年には少女時代のテヨンが交通事故に遭ったり、SUPER JUNIORの元メンバー、カンインが恋人を暴行したとして騒動を起こしたりしている。

韓国芸能界ではなぜ、このような事件が11月に多発するのか。

その理由については、フリーメイソンやイルミナティ顔負けの「情報操作陰謀説」から「季節の変化に伴う冬季うつ発病」説までさまざまだが、あくまで推測の域を出ない。そればかりか、最近はかならずしも「11月怪談」というわけではなさそうだ。

例えば2016年には、日本でも人気のJYJのユチョンが、複数の女性から性的暴行の容疑で告訴されたことに加え、女優キム・ミニとホン・サンス映画監督による“韓国版ゲス不倫”が世間を騒がせ、「韓国芸能界史上最悪の6月」「11月の怪談ならぬ6月の怪談の時代へ」とも言われた。

昨年には10月30日に俳優キム・ジュヒョクが交通事故で死去し、12月18日にはSHINeeのジョンヒョンがこの世を去るなど、11月を前後に悲報も続き、もはや「冬の怪談」という新しい“怪談”まで登場している。

今年10月には元KARAのメンバーだったク・ハラの自殺未遂説→健康不安説→元彼への暴行疑惑→リベンジポルノ問題と、社会問題にまで発展する騒ぎも起こっている。

(参考記事:自殺未遂説に暴行疑惑…元KARAのク・ハラに今、何が起きているのか)

今や芸能事件が起きるたびに、「怪談」という言葉だけが独り歩きしている印象もあるが、いずれにしても韓国芸能界に張り詰めた緊張感を与える“魔の11月”。今年こそ事件・事故・スキャンダルなどが発生せず、平穏無事に終わることを祈るばかりだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

慎武宏の最近の記事