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「ナッツ姫事件」は序の口か元凶か…トラブル続出の韓国航空会社の問題体質は改善されるのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
仁川空港に停泊する韓国の航空会社の航空機(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

韓国の済州航空が本日8月10日から、仁川(インチョン)空港-羽田空港の路線を週2回、運航するという。

韓国出国便は金曜22時50分に出発し、土曜深夜1時に羽田着。韓国への帰国便は羽田を日曜の午前2時に出発して、仁川に午前4時半に到着する。10月28日までの運航となるそうだ。

この路線を使えば、夜に韓国を出発して日本への“1泊3日旅行”が可能となる。済州航空が羽田路線を運航するのは、今回が初めてだ。

背景に、韓国人観光客の日本旅行人気があることは間違いないだろう。最近は日本に行ったら「かならず買うべき商品」というお土産リストまでネット上で出回っているほどなのだから。

一日2万人もの韓国人が日本に

日本政府観光局によれば、今年上半期(1~6月)の訪日外客数は前年同期比15.6%増の1589万9000人(推計値)に上る。そのうち韓国人観光客は、401万6400人(伸率18.3%)にもなったという。

訪日外国人観光客の実に4人に1人以上が韓国からの旅行者ということになり、一日に2万2000人もの韓国人が日本を訪れていることになる。

(参考記事:毎日2万人も訪れるが、お金はあまり使わない…日本を訪れる韓国人観光客の実態

こうした背景から韓国の航空会社も日本行きの飛行機を増やしているわけだが、気になるのは韓国の航空会社で続出しているトラブルだろう。

韓国の航空会社や空港は“世界最低レベル”?

『中央日報』によれば、今年1~6月に仁川空港で毎月200便以上の飛行機を運航した航空会社22社のうち、アシアナ航空が遅延率57.7%でもっとも高く、大韓航空も56.6%で3番目だったという。

遅延率上位5社のうち4社が韓国の航空会社というのだから、韓国人観光客の「不満が爆発」(『中央日報』)するのも無理はない。

航空会社だけでなく韓国の仁川空港もアメリカの航空統計専門サイトで酷評されたこともあった。

曰く、「遅延時間の平均は43・9分にもなり、定時運行率は世界最低レベルにある」と。

より深刻で看過できないのは、整備不足などによる事故だろう。

特に今年7月には、アシアナ航空のトラブルが多発。日本便など国際線で機内食を積み込めない、タイヤの圧力に欠陥が生じて空港にリターンするといったトラブルが続出して非難を浴びていた。

アシアナ航空と言えば、歴代の広告モデルがスター揃いであることが有名なのだが、最近は不名誉なトラブル続きでイメージダウンしている状態だ。

(参考記事:【画像&動画】“スターの登竜門”とされるアシアナ航空の歴代「広告モデル」が美しすぎる

筆者もよく使う航空会社だけに、残念でガッカリさせられるようなトラブルばかりでもある。

「半ドア飛行」に白煙発生…

最近も7月30日には離陸を準備していたアシアナ航空旅客機の後尾部分から白煙が発生して、消防車が出動する騒動も起きた。

また、8月7日にはクアラルンプールを出発した仁川行きの大韓航空旅客機が機体欠陥を起こし、上空で回航するという事態も起きている。

近年、韓国では格安航空(LCC)で「半ドア飛行」などのトラブルが続出していたが、韓国を代表する2大フラッグキャリアでも事故が多発しているのが現状なのだ。

ずさんな機体トラブルは大きな人的被害の予兆ともされているが、根本的な問題解決には時間がかかるかもしれないという意見も多い。トラブル多発の問題の根底には、経営陣の意識も影響していると指摘されているからだ。

言うまでもなく、大韓航空のオーナー一家の騒動はあまりに有名だ。

“水かけ姫”などと揶揄された大韓航空オーナー一家の娘チョ・ヒョンミン前専務のパワハラ騒動は日本でも知られるところで、3カ月が経った現在、大韓航空には新しい労組が結成しているという。

“ナッツ姫”などオーナー一家の意識

そもそも財閥一族の傲慢さが社会的イシューとなったのは、丸3年以上前に起きたナッツリターン事件からだろう。

大韓航空の副社長チョ・ヒョナがニューヨーク発・仁川行きの大韓航空機のファーストクラスに搭乗した際、皿に盛られて出されるはずのナッツを袋のまま提供されたとして激怒。動き始めていた航空機をリターンさせて責任者を降ろし、仁川への到着を11分遅らせたという前代未聞の事件である。

韓国中の非難の的となった“ナッツ姫”はその後、社会奉仕活動を行っていたというが、現在は離婚訴訟が始まろうとしているらしい。

(参考記事:あの珍事件から丸3年…韓国の“ナッツ姫”は今どこで何をしているのか

こういった傲慢な人々がトップにいる限り、組織が大幅に改善されることはなく、組織の体質が改善されなければ航空会社のトラブルも根絶できない。そう指摘されているのだ。

いずれにしても、飛行機の事故やトラブルは絶対に起こってはならない。まして昨今は日韓の人的移動が増えているだけに、冒頭で紹介した済州航空の仁川-羽田線も、多くの訪日韓国人観光客たちから重宝されるだろう。

そういった日韓をつなぐ空の便でトラブルや事故が起きれば、渡航を躊躇する人々も増え、それはそのまま両国の人の流れにも支障をもたらすことになる。

韓国の航空会社各社には、そういった自覚と責任感を常に忘れず、日本と韓国の空をつなげてもらいたいものだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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