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選手や主審への“SNSテロ”にIKEA不買運動…一部の韓国サポのモラルなき行為に喝

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
光化門広場では熱狂的な応援が繰り広げられているが…(写真:ロイター/アフロ)

西野ジャパンの躍進で日本でも盛り上がるワールドカップ熱。日本戦になると東京・渋谷のスクランブル交差点周辺は大勢のサポーターたちであふれ返っていると聞く。

今や渋谷スクランブル交差点は、日本代表を応援する“サポーターたちの聖地”とも言えるが、韓国にもサポーターたちが集う“聖地”がある。

首都ソウルの中心部の光化門(クァンファムン)広場からソウル市庁舎前のソウル広場に続く一帯だ。国中が赤く染まった2002年大会以降、韓国代表の試合になると多くのサポーターやファンたちがこの一帯に集まり、熱狂的な応援を繰り広げるようになった。

以前紹介した韓国の“歴代ワールドカップ美女“たちも、この一帯で発掘されているほどだ。

(参考記事:【画像】韓国の“歴代ワールドカップ美女”を一挙ご紹介!! ロシアW杯でも現れるか?

もちろん、今回のロシア・ワールドカップでも “聖地” に韓国代表サポーターたちが集まっている。ソウル警察庁の推算で、スウェーデン戦では2万人、メキシコ戦では1万3000人あまりが集まり、 “5代目ワールドカップ美女”とされるシン・セロムも姿を見せたという。

2002年大会時の大熱狂や2006年、2010年大会時の盛り上がり(2014年大会時は4月に起きたセウォル号事件の影響もあって自粛ムードもあった)に比べると、かなりボリュームダウンしてしまった感もあるが、それでも韓国代表を見捨てず応援するサポーターたちがいることは、選手たちにとって心強いことだろう。

ただ、今回のロシア・ワールドカップはこうしたサポーターたちの熱気よりも、一部の心無い人々のいびつで悪質な行為のほうが目立つ印象である。

選手の娘の外見を侮辱

例えば、ネット上での代表選手に対する人格攻撃だ。

スウェーデン戦にトップとしてスタメン出場したキム・シヌクは、この試合でこれといった活躍を見せられなかったとしてSNSなどで批判が殺到し、自身のSNSアカウントを非公開にした。

また、スーパーセーブを連発した技術力だけではなく、奇抜な髪形と長身色白のルックスも話題を呼んだGKのチョ・ヒョヌは、“美女パートナー”として知られる妻イ・フィヨンさんとの仲睦まじい写真をSNSにアップして人気を集めていたが、生後6カ月の娘の外見を侮辱するコメントが書き込まれたことを受け、アカウントを閉鎖した。

妻のイ・フィヨンさんも自身のアカウントを削除。「いつか娘がコメントを見て傷つくかもしれないと思い、数年間の日記のようなものたちを削除することを決めた」と説明している。

(参考記事:【画像】ソン・フンミンの「恋人」は? 韓国代表の「美女パートナー」たちがかわいすぎる!!

「代表永久除名」も序の口……

特に大きな批判を浴びているのは、FC東京でプレーするチャン・ヒョンスだ。

スウェーデン戦でのミスや、メキシコ戦でハンドを取られPKを献上したことに対して批判が集中。チャン・ヒョンスがネットニュースのコメント欄などで誹謗中傷や人格攻撃を受けていることは以前にも紹介した通りである。

現在は大統領府ホームページの国民請願コーナーにも、チャン・ヒョンスを批判する内容の請願が100件以上寄せられているのだが、その請願の内容もひどい。サッカーとは関係のないことも言及されており、日本では口にも出さないであろう明らかな誹謗中傷も少なくないのだ。

(参考記事:「代表永久除名」「刺青を消せ」はまだ序の口…FC東京チャン・ヒョンスへの批判がひどすぎる

もちろん、これまでも代表チームや選手が厳しい非難にさらされることは過去にもあった。

前回のブラジル大会後は、グループリーグで1勝も挙げられなかった代表チームが帰国した際、仁川国際空港に押しかけたサッカーファンが「韓国サッカーは死んだ」と書かれた横断幕を掲げながら葬式のような儀式をしたことが物議を醸した。

つまり、代表チームを批判すること自体は珍しいことではないということだが、それにしても、上に挙げたようなネット上での人格攻撃や誹謗中傷は、度が過ぎていると言わざるをえない。

しかも、現在は韓国代表選手にとどまらず、他国の選手や審判にまで被害が及んでいるというから深刻だ。

“IKEA不買運動”を呼びかける請願も

例えば、初戦でスウェーデンに敗れた後は、一部の韓国人がセバスティアン・ラーションなど一部のスウェーデン代表選手のInstagramに韓国語で暴言を書き込んだという。

また、スウェーデン戦で主審を務めたホエル・アギラールも被害者の一人だ。

韓国代表はビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の判定によってPKを取られ、それが決勝点となり敗北したが、このPK判定をはじめとしたジャッジに不満を抱いた一部のサッカーファンたちがホエル・アギラールのInstagramに殺到。誹謗中傷のコメントを書き込んだという。

結局、ホエル・アギラールはアカウントを非公開にしている。

現地で試合を観ていても主審のジャッジは正当だったと思うが、いずれにしても、判定が正しかったかどうかとは関係なく、審判への誹謗中傷は許されることではないだろう。

さらに、上述した国民請願コーナーにも、スウェーデンを敵対視する請願が数多く挙がっているという。

「スウェーデンに戦争を仕掛けましょう」「スウェーデンにミサイルを発射してください」などがそれで、スウェーデン発祥の家具チェーン店IKEAの不買運動や韓国撤退を呼びかける請願もあるというのだ。

怒りの矛先が韓国代表選手ばかりか、他国の選手や審判、企業や国そのものにまで向けられているわけだ。

こうした一部の韓国人たちのマナーの悪さには現地で取材する韓国メディアの記者たちもかなり頭を悩ませており、報道を通じて改善を呼びかけているが、筆者も20年以上韓国サッカーに携わってきた者として、たまらなく恥ずかしく感じる。

ただでさえ韓国代表がグループリーグで2連敗し、“ファウル最多国”という不名誉な記録も注目されているなか、自ら韓国サッカーの価値を落とすような行為は残念でならない。

(参考記事:2試合で計47回!! “ファウル最多国”に突き進む韓国を自国メディアはどう報じているのか

今、世界では日本代表サポーターたちのマナーの良さが関心を集めていると聞く。

観戦後に日本サポーターが会場のゴミ拾いを行う姿が海外メディアでも取り上げられ、その取り組みが各国のサポーターに広がっているという。

代表チームがグループリーグで快進撃を続け、サポーターの善行が海外からも称賛を受けている日本と、一部の人たちとはいえネット上で恥ずべき行為を繰り返す韓国。

韓国代表は西野ジャパンの戦いぶりに学ぶべきだと語る韓国記者も少なくないが、マナーやモラルもまた、日本を見習わなければならないだろう。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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