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BTS(防弾少年団)を悩ませ悲しませる不適切な行為…これもワールドスターの宿命なのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
BTS(防弾少年団)(写真:ロイター/アフロ)

最近、K-POPボーイズグループのBTS(防弾少年団)が世界中を驚かせている。

5月18日にリリースされた3rdアルバム『LOVE YOURSELF 転 ‘Tear’』は先行予約だけで150万枚を突破する反響を見せ、世界65ヵ国のiTunesトップアルバムチャートで1位という記録を達成。5月24日に行われた「ビルボード・ミュージック・アワード」では2年連続「トップ・ソーシャル・アーティスト賞」を受賞する快挙を成し遂げた。

しかも、つい先日は『LOVE YOURSELF 転 ‘Tear’』がビルボード誌の全米アルバム・チャート「Billboard 200」でK-POPアーティストとしては史上初の1位を獲得し、リード曲である『FAKE LOVE』はシングル・チャート「Hot 100」で10位を記録するなど、驚くべき記録も打ち出した。まさにBTSは今、名実ともに“ワールドスター”になったのだ。

(参考記事:「真のワールド・スターが誕生した」PSYやピ(RAIN)と差別化されたBTSの存在感)

これまで韓国出身の世界的歌手といえば、『江南スタイル』で大ヒットしたPSY(サイ)の名前が挙がることが多かった。

アジア大会やオリンピックといった音楽とは関係ない国際的なイベントが行われるたびにPSYの出演可否が話題になるくらいで、4月に行われた韓国歌手による平壌公演にも韓国政府が彼の出演を強く推していたが、北朝鮮側が難色を示したため頓挫してしまったこともあった。

そんなPSYがビルボードで達成した記録を、今度は7人の若者たちが次々と塗り替えていく勇姿は、なんとも痛快に映る。

韓国の著名人たちも彼らの活躍が誇らしく思えるようで、例えば世界的なポペラ・テナーであり現在ローマ大学声楽科の最年少碩座教授のイム・ヒョンジュは、自身のInstagramに「次はグラミー賞の候補にノミネート。BTSには夢ではなく、まもなく現実になると固く信じている」とコメントしていたほどだ。

極めつけは文在寅(ムン・ジェイン)大統領だろう。

BTSがビルボードのアルバム・チャートで1位に輝いたことを受けて、「格好いい姿で韓国国民はもちろん、世界の人々に感動を与えてくれてありがとう」と、お祝いのメッセージを送ったのだ。

「世界でもっとも影響力のある歌手になりたいというBTSの夢を応援します」とした文大統領のコメントは、ファンだけではなく世界各国のメディアからも注目を集めた。

今や“全米1位”という枕詞を冠するBTS。ところが、その人気と知名度が高まる中で、彼らを悩ませる問題も増えている。

その一つが、彼らに浴びせられる不適切な行為だ。

5月31日、韓国メディアが一斉に報じたところによると、メキシコのあるテレビ番組内でBTSに対するとある差別発言が飛び交ったという。ファンからは怒りの声が続出し、番組司会者の一人は謝罪のコメントを発表した。

(参考記事:BTSに対して差別発言を浴びせたメキシコのテレビ番組が炎上!!)

実は過去にも、BTSに対する不適切な行為はあった。

昨年11月にはコロンビアのテレビ番組でBTSの楽曲が紹介されると、出演者の一人が両目を吊り上げるポーズを取って問題になっているのだ。

また、今年1月にはアメリカのラジオ番組に出演したボーイズグループCNCOが、BTSの歌を嘲弄するようなコメントをして現地で批判を受けたらしい。

こうした仕打ちを受けているのは、BTSだけではない。昨年、ブラジルのテレビ番組に出演したK-POPグループ「KARD」も、番組司会者から目尻を引っ張る仕草を見せられるなど人種差別行為を受けている。

(参考記事:「目が細くなるぞ!!」発言に激怒。独、米国に続き、ブラジルでも“嫌韓トラブル”発生のなぜ?)

スポーツの世界では、昨年の米プロ野球ワールドシリーズ第3戦でアストロズのユリエスキ・グリエル選手がダルビッシュに向けて両目尻を吊り上げるようなポーズを取って物議を醸すなど、アジア人に対する人種差別問題が度々起きている。

K-POPアーティストが世界で活躍するようになった今、スポーツ界のように彼らが同じような状況に直面する確率も増えていってしまうのだろうか。その行為に明確な差別意識がなかったとしても、受け取る側の心境を考えれば悲しく残念なことだろう。

BTSの“全米1位”がもたらすのは、音楽的成功だけではないかもしれない。彼らの存在によって新しい価値観を受け入れる人々も多いのではないか。

世界中の音楽ファンがK-POPとアジアに注目している。若者の代弁者として古いしきたりに抵抗し続けてきたBTSだけに、今後、彼らの音楽が世界にもたらす良い影響に期待したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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