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金正恩夫妻も見た!!ガールズアイドルRed Velvetとは?北朝鮮公演に選ばれた理由は?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
Red Velbet(写真:ロイター/アフロ)

昨日、北朝鮮の平壌(ピョンヤン)で行なわれた韓国アーティストによるコンサート『南北平和協力祈願 韓国芸術団平壌公演〜春が来る』。

少女時代のメンバーであるソヒョンが司会を務め、韓国の国民的歌手のチョ・ヨンピルやイ・ソンヒ、ピアニストのキム・グァンミンなどが出演。当初は『江南スタイル』で知られるPSYの出演も予想されるも結果的に不参加となり、その盛り上がりも懸念されたが、大成功だったというのが韓国メディアの見方だ。

(参考記事:頓挫したPSYの平壌行き。北朝鮮の難色のせい? 『江南スタイル』の苦いトラウマのせい?

何しろあの金正恩(キム・ジョンウン)委員長とその妻である李雪主(リ・ソルジュ)氏も鑑賞したというのだ。北朝鮮の首脳が韓国アーティストの公演を鑑賞するのは異例なだけに、大きな話題になっている。

昨年もっとも人気ブレイクしたガールズグループ

そんな韓国アーテイスト公演の中で注目されたのは、唯一の“K-POPガールズグループ”として参加したRed Velvetだろう。

2014年にデビューしたRed Velvetは、東方神起や少女時代などを抱えるSMエンターテインメント所属の5人組。強烈な「Red」と柔らかい「Velvet」という二つのコンセプトを交互に披露したり、時には調和させたりしながら、ユニークなアイデンティティーを構築してきたガールズグループである(今回、メンバーのジョイだけドラマ撮影で参加できなかった)。

(参考記事:昨年の活躍が目覚ましかったRed Velvet。思わずうっとりする新年一発目のグラビアに注目!

平壌での公演に韓国のガールズグループが参加するのは、2003年の「平壤柳京鄭周永体育館開館記念統一音楽会」に出演したBaby V.O.X(ベイビーボックス)以来、15年ぶり。当時、Baby V.O.Xの公演に対してほとんどの観客が硬直していたとの報道もあったが、今回はRed Velvetの歌にも拍手や反応を示したという。

Red Velvetのイェリも、「思ったよりも(北の観客たちが)大きな拍手をしてくれて、続いて歌ったりもしてくれた」と韓国メディアの平壌公演共同取材団に話している。北朝鮮でもK-POPガールズグループが受け入れられたということか。

メンバー2人が「世界でもっとも美しい顔100人」に

メンバーたちは最長で7年、最短で1年半ほどの練習生時代を経ているため、歌やダンスのレベルは文句どころか注文もつけるところがないくらいレベルが高い。

デビューから着々と人気を広げ、昨年夏には『Red Flavor(赤い味)』が大ヒット。今や日本でおなじみのTWICEと1、2位を争うガールズグループとなっている。

そのTWICEのメンバーたちがそうであるように、Red Velvetも韓国のみならず世界から関心を向けられている。昨年末にアメリカの映画情報サイト『TC Candler』が発表した「世界でもっとも美しい顔100人」の中にも、Red Velvetのメンバーが2人(スルギとアイリーン)が入っていた(韓国の芸能人が計9名選ばれている)。

(参考記事:「世界で最も美しい顔100人」に選ばれた韓国美女を一挙公開!!

以前、今年開催された平昌五輪期間中にも、その名前が何度か話題に上がった。開会式の選手入場時にはPSYの『江南スタイル』 やTWICEの『LIKEY』などに加え、前述の『Red Flavor(赤い味)』がBGMとして全世界に流れた。

その一方で3月にはメンバーのウェンディに人種差別行動疑惑がかけられた。韓国のテレビ番組に出演した際の言動が、韓国ではなく、海外のK-POPファンが集まるコミュニティ・サイトで大炎上した。

海外のファンから人種差別行動疑惑をかけられる騒ぎもあったが、韓国のテレビ番組を海外のファンがリアルタイムでウォッチしていたのだから、裏返せばそれだけRed Velvetへの関心が高いとも言えるだろう。

アイスホッケー北朝鮮選手も聴いていた!!

それにしても数あるK-POPガールズグループの中で、なぜRed Velvetが今回の平壌公演の参加アーティストに選ばれたのだろうか。

韓国ではさまざまな推測と期待の声が上がっている。

そもそも北朝鮮では、「韓国の大衆文化を排斥しており、テレビやネットで韓国の文化コンテンツを見ることも徹底的に制限されていると知られている」(『文化日報』)という。

金正恩党委員長も、今年の“新年の辞”で「革命的な社会主義文学・芸術の力をもってブルジョワ反動文化を踏み潰すべきだ」と強調した。

近年、K-POPガールズグループはセクシー路線がエスカレートしているが、北朝鮮の論理ではそれが“ブルジョワ反動文化”と指摘されてもおかしくはない。

(参考記事:もはや度を超えている!! 韓国女性アイドルがますますセクシー路線に走っていくワケ)

ただ、「高位層は韓流コンテンツに関心が高い。ガールズグループを招待するのは全然おかしなことではない」「若い層はK-POPアイドルのファッションやダンスなどに関心を持っている」という脱北者たちの証言もある。北朝鮮の若い層の間でも、K-POPへの免疫は出来ているのだろう。

実際、平昌五輪で実現した女子アイスホッケー南北合同チームのロッカールームではK-POPの楽曲がよく流れ、北朝鮮選手の一人はRed Velvetの楽曲『Ice Cream Cake』を聞きながら、韓国選手に「すっきりしないね?」という感想まで述べていたというのだ。

そうしたK-POPへの免疫とRed Velvetの知名度なども手伝って彼女たちが選ばれたというのが韓国メディアの見方だ。

ちなみにTWICEが選ばれなかったのは、日本人メンバーや台湾人メンバーもいる多国籍グループだからという説もあるが、いずれにしても北朝鮮で15年ぶりにK-POPガールズグループがパフォーマンを披露した意義は大きい。

韓国メディアの中には、「Red Velvetの出演は重要な意味を持つ。北朝鮮におけるK-POP公演の幕開けになれるという期待感が出ている」(『NEWSIS』)との意見も見受けられる。

平壌公演をきっかけに、存在感をますます高めているRed Velvet。平壌公演に先立って3月28日と29日に日本で単独ライブも行なっており、5月には初の日本ツアー、7月には日本デビュー曲も発表するという。

もしかしたら今年は、TWICEに続く新たな韓流ガールズグループとしてRed Velvetが日本でも大ブレイクするかもしれない。

いずれにせよ、今回の平壌公演をきっかけに、南北文化交流がより良い方向へと発展していくことを願うばかりだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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