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日本初登場!「美しすぎる声優」にして“コスプレ女神”ソ・ユリとは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
ソ・ユリ(写真提供=Dmost Entertainment)

日本では近年、声優のタレント化が加速していると言われている。水樹奈々は今や紅白歌合戦には欠かせない“声優アーティスト”であるし、宮野真守などアイドル級の人気を誇るスターも出現した。かつて声でしか認知されなかった彼ら彼女たちが“見える存在”になっている。

だが、韓国ではいまだに「声優=裏方の仕事」という認識が強い。声に聞き覚えがあっても、顔はもちろん、名前も知られてない“声優”たちが実に多いのだ。

韓国のオタクたちが“女神”と呼ぶ存在

そんな韓国において、声優タレントとして広く知られているのが美女声優ソ・ユリだ。バラエティ番組やドラマにも“顔出し”出演して注目されている。

(参考記事:韓国ゲームマニアたちから“女神”と呼ばれる“美しき声優タレント”ソ・ユリとは?)

その多彩な活躍ぶりから“マルチ声優”の先駆者とも言われている。“オドック”と呼ばれる韓国のサブカルチャー好きからは熱烈な支持も得ている。

そんな彼女の目に韓国の声優事情やサブカル事情がどう映るのかを知りたくて、ソウル市内でインタビューを実施。開口一番に飛び出したのは、意外な言葉だった。

ドラえもんがデビュー作だった“コスプレ女王”

「私の声優デビューは『ドラえもん』のスネ夫のママ役だったんです」

いきなり『ドラえもん』という聞き慣れたアニメ・タイトルが登場して親近感がグッとわいた。韓国でも『ドラえもん』が人気だとは知っていたが、まさか彼女もその声優だったとは思わなかった。

実は筆者が彼女の存在を初めて知ったのは声優としてではなく、“コスプレ女王”としてその名を轟かせていたときだったので、『ドラえもん』がデビュー作だったということが余計に意外だった。

(参考記事:【画像あり】“女神”と呼ばれるコスプレ女王ソ・ユリの原点とは―!?)

聞けば『ドラえもん』だけではなく、『ドラゴンボール』のブルマ、『フェアリーテイル』のルーシィ・ハートフィリアなど、数えきれないほどのキャラクターを演じてきたという。当然、日本のアニメも詳しい。

「子供の頃に観ていた『セーラームーン』や『燃えろ!トップストライカー』『炎の闘球児 ドッジ弾平』などの韓国語吹き替え版は、今も記憶に残っています。

日本の文化が開放されてからは、『犬夜叉』『ONE PIECE』『名探偵コナン』なども楽しく観てましたよ。アニメを観るうちに声優さんにも興味を持ちはじめ、憧れるようになりました」

1998年に韓国政府が行った「日本大衆文化開放」以来、韓国では日本のサブカルチャーが着実に勢力を拡大してきた。今の若い世代が日本文化に関心を寄せ、好意的な態度を取るのは、そういった土台づくりがあった結果なのかもしれない。彼女も、そんな時代の変化を身をもって体験してきた一人なのだ。

女子アナ並みの狭き門を勝ち抜いた美女声優

「ただ、韓国で声優になるのは簡単ではありません。韓国の声優事情は非常に“狭き門”なんです」

ソ・ユリが声優デビューを果たしたのは2008年。23歳のころだったという。10代でも声優デビューできる日本では珍しいことではないが、韓国ではかなり異例らしい。30代でデビューすることが一般的な韓国では、かなり若かったほうだという。

「日本では作品の公開オーディションでデビューする方もいると聞きますが、韓国で声優という職業に就くためにテレビ局に採用されるのがオーソドックスです。

いわゆる女子アナのような感じですね。ただ、声優を採用するテレビ局は少ないですし、採用試験が毎年行われるわけでもないので、非常に狭き門なのです」

韓国では女子アナウンサーも“狭き門”となる人気職業だ。“韓国でもっとも美しいニュースキャスター”と呼ばれるアン・ナギョンも、「倍率が2000倍だった」と話していた。

声優たちもそんな女子アナと同じような競争にさらされるというのだから、その競争の激しさは想像がつくが、近年は若い声優たちが登場しているという。

映画『君の名は。』のヒロイン三葉役を演じたキム・ソヒョンは今年で19歳。その若さもさることながら、“清純美女”というルックスも手伝って話題になった。

日本アニメ吹き替えの難しさ

日本アニメの韓国語吹替を担当して一躍有名になった典型的なケースでもある。そしてソ・ユリもまた、そのひとりだった。『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』のエンヴィー役が、彼女の当たり役となった。

「エンヴィー役はまだテレビ局に所属する新人声優だった頃に受け持った役でした。

主人公ではないですが、とてもインパクトの強いキャラクターでしたし、日本版では『名探偵コナン』の江戸川コナン役で有名な高山みなみさんが務めていると聞いて、プレッシャーを感じずにはいられませんでした。

私はテクニックも経験も足りなかったから、もうダメでもともとだという覚悟でやるしかなくて。毎週のように、収録3日前から緊張でおどおどしていたのを今も覚えています」

ただ、そうした努力を重ねて挑んだエンヴィー役での演技力が高い評価を得た。吹き替えの場合、原作のファンに演技を比較されることも多いはずだが、彼女の声の演技はファンの間で語り草になるほどだった。

だからこそ気になるのは、日本のアニメを韓国語で吹き替える際の注意点や難しさでもある。数々の日本アニメの吹替を担当してきたソ・ユリは語る。

「韓国の創作アニメと違って、日本のアニメに韓国語吹き替えをする作業はすごくスピーディーに行われますね。1話30分の場合、20〜30分ほどかかりますから、ほぼリアルタイム収録といった感じです。その分、事前にしっかりと準備しなければいけませんけどね」

韓国アニメの制作現場は決して恵まれているとは言えない。劇場公開作品などで韓国産アニメが大ヒットすることも少なく、苦戦することも多い。

(参考記事:韓国アニメ業界が直視したがらない“黒歴史”と呼ばれる3つのアニメ作品)

韓国のアニメ声優事情

そうした中でもクオリティの高い作品を生み出そうと、現場ではさまざまな工夫がなされており、声優たちもベストを尽くす。日本アニメの韓国語吹き替えを多く担当してきたソ・ユリの言葉からも、現場の熱意が伝わってくる。

「原作の演技に影響されない、と言い切るのは無理がありますが、一概には言えませんね。

ただ、誰もが自分の演技にプライドを持っていることだけは確かです。韓国版の吹き替えの時は、日本との文化の違いを考慮して声優自らがセリフを変えたりもしますよ。

収録中にディレクターさんから指示をもらうこともありますが、声優に任せるという雰囲気。つまり、声優たちの力量も試されるわけです。力が入らないわけがありません」

にこやかな笑顔を浮かべていたが、“声優”として第一線を走る彼女のプライドを垣間見ることができた瞬間だった。

と同時に、声優としてだけではなく、女優やタレントとしてマルチに活躍する彼女のことをもっと詳しく知りたくもなってきた。

次回は“声優”というジャンルを離れた、ソ・ユリのもうひとつの顔について紹介したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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