日韓“女子高生対決”も。韓国がショートトラック大国となった本当の理由
「韓国の五輪ムードが盛り上がるためにはメダル獲得が欠かせない。そういう意味ではショートトラックが注目だよ」と語ったのは、旧知の韓国スポーツ新聞の編集局長だった。
昨日、ソウルにある編集部を訪ねたが、締め切りに追われていた編集部の面々の口からも、ショートトラックに期待を寄せる声が多かった。
ただ、それも当然だろう。何しろ、ショートトラックは韓国のお家芸だ。これまで韓国が冬季五輪で獲得した26個の金メダルのうち、実に21個の金メダルがショートトラックで勝ち取ったものなのだ。
強いから人気もあり、かつて女子500mで名を馳せたチョン・ジスなどは五輪出場経験がなくとも、 “美しすぎるショートトラック女神”として話題になったほど。
(参考記事:成熟した大人の魅力…31歳とは思えない美しすぎる”ショートトラック女神”チョン・ジス)
韓国ではショートトラックが“冬の花形スポーツ”として認知されているのだ。
知られざる韓国ショートトラックの選手層
では、なぜ韓国ショートトラックが強いのか。
現地では、膨大な練習量や体系的な選手管理システム、優秀なコーチ陣の指導など、様々な理由が挙げられているが、特筆すべきは国内の競争の激しさだろう。
前出のスポーツ紙編集局長も言っていた。
「国内の練習環境が整っていることもあって、韓国ではショートトラックの人気が高いんです。“スケートといえばショートトラック”という認識があるぐらいですよ。だから選手数も多くなり、自然と激しい競争の中に身を置くことになって、実力も高まる。そんな好循環があるんです」
実際、韓国のショートトラック選手数が多い。
大韓体育会によれば、昨年度の登録選手数は、563人(男子351人、女子212人)。スキージャンプ(18人)やスノーボード(171人)など雪上競技をはかるに凌ぐ選手数を誇り、スピードスケート(404人)とも150人以上の差が付いている。
ちなみに、スケート競技でもっとも選手数が多いのはフィギュアスケートの648人だが、男子フィギュア選手はわずか44人と男女比率も偏っており、競技を断念する選手も少なくない。
逆に韓国ショートトラック界では、競争の激しさゆえ、代表入りが叶わず、外国に国籍を変更する選手も珍しくないほどだ。
(参考記事:「かわいすぎませんか」との話題も。国籍を“韓国”に変更して平昌五輪に挑む選手たち)
そんな過酷な競争を勝ち抜いた選手たちばかりだけに、韓国は今大会もショートトラックに大きな期待を寄せている。前出のスポーツ新聞編集局長も言っていた。
「全競技の中で、ショートトラックがもっとも注目されていることは間違いありません。韓国は平昌で歴代最高となる金8、銀4、銅8のメダル獲得を目指していますが、ショートトラックが5個は取ってくれると国内では期待を集めています」
事実、現地メディアが選定した「韓国のメダル候補12人」にも、女子1500mで世界ランキングのトップ2を独占しているチェ・ミンジョンとシム・ソッキをはじめ、ショートトラック選手が多数、名を連ねている。
日韓“女子高生対決”もあるかもしれない
現役高校生選手として話題を呼んでいる日本代表の神長汐音は、個人種目と3000m団体追い抜き(チームパシュート)でのメダル獲得を目指しているが、韓国代表にも、女子高生スケーターがいる。
キム・イェジンとイ・ユビンだ。
今月6日に高校を卒業したばかりのキム・イェジンは昨季、W杯6次大会の500mで金メダルを獲得した新星。今季シニアデビューしたイ・ユビンも、初舞台となったW杯2次大会では1000mで銅メダルを獲得している。
二人は平昌で3000m団体追い抜きに出場し、神長ら日本代表チームと対戦する。
韓国は同種目で、五輪2連覇を狙う。日本も昨年の世界選手権3位、今季W杯第1戦で4位に入っており、メダル圏内だ。
日本と韓国は過去に、日本のコーチが韓国選手を教え韓国を永久追放になったコーチが日本選手を指導するという、奇妙な縁もあるだけにも、日韓の女子高生の対決の行方にも注目が集まりそうだ。
(参考記事:日本選手を教える韓国人コーチはワケあり!? 互いに指導し合う日韓ショートトラック事情)
いずれにしても、ショートトラックが韓国中の視線を集めていることは間違いない。韓国はお家芸でホームを沸かすことができるか。まずは本日の女子500m決勝に注目したい。