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「Jリーグと類似しすぎ」「差別化できない」韓国プロサッカーがまさか9度目の名称変更へ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
「クラシック」という呼び名も昨季まで(写真提供=FA photos)

韓国プロサッカーのKリーグが、またもやその名を変えることになったことをご存知だろうか。韓国プロサッカー連盟は、今季から1部リーグを「Kリーグ1」、2部リーグを「Kリーグ2」に変更するとした。「Kリーグ」ということに変わりはないと思われるかもしれないが、実はこれでなんと9度目の名称変更なのだ。

『キャプテン翼』も通用しなかった韓国の意地

そもそも韓国のプロサッカーはJリーグより10年早い1983年にスタートしている。創設時は当時の政府も関与し、「スーパーリーグ」(83〜85年)が正式名称だった。

それが1986年は「チュック(蹴球)テジェジョン(大祭典)」、87年から93年までは「韓国プロチュック大会」、94年と95年には「コリアン・リーグ」、96年と97年にはふたたび「プロチュック大会」に戻り、98年から「K-リーグ」となった。

「K-リーグ」と改称したのは、言うまでもなくJリーグの影響もなかったとは言えなくもない。当時、私も韓国プロサッカー連盟を訪ねることが多くなったが、行く度に聞かれたのはJリーグのことだった。

取材に行ったのに、取材される側になることが多かったほどだ。口に出さなかったがJリーグを意識していたことは感じられたが、当時は「韓国こそアジアの盟主だ」というプライドが強かった時代。

その対日感情ゆえに、漫画『キャブテン翼』も翼たちがある年代になると韓国版の出版が打ち切りになったほどである。

(参考記事:『スラムダンク』は今でも人気で『キャプテン翼』は拒絶されたワケ

「K-リーグ」に「-(ハイフン)」を入れたのも、Jリーグに類似・追随するという指摘を避けたかった韓国側の意地が見え隠れしていた。

「クラシック」と「チャレンジ」になったが…

この「K-リーグ」表記が10年近く続き、2010年から「Kリーグ」とハイフンなしの表記に変わったが、13年度からリーグ待望の1部・2部昇格制度が導入されることになったことにあわせて、名称を大変更。当時はリーグ創設30周年という節目でもあり、ファンから名称公募なども行ったほどだ。

それで最終的に発表されたのが、1部リーグを「Kリーグ・クラシック」、2部リーグを「Kリーグ・チャレンジ」と区別する名称だったわけだが、韓国プロサッカー連盟関係者によると、当初は1部リーグを「Kリーグ・クラシック」、2部リーグは「Kリーグ」で進めようとしたらしい。

イングランドが最上位リーグを「プレミア・リーグ」とし、その一つ下のディビジョンを「フットボールリーグ・チャンピオンシップ」としているような感覚だ。

ただ、「1部リーグには“クラシック”という呼び名があるのに、2部リーグにはないのはおかしく、どっちが“Kリーグ”なのか、わからない」という指摘が上がり、2部リーグを「Kリーグ・チャレンジ」とすることになった。属するリーグが「2部=下部」という印象を世間に与えることは避けたいと要望したクラブも、いくつかあったと聞く。

いずれにしても、「クラシック」と「チャレンジ」は苦心の末にようやく決まった節目30年目の“CIプロジェクト”だったわけだが、その呼び名もわずか5年で終了。

ファンの間では「紛らわしい」「クラシックとチャレンジが、1部と2部を連想させない」と不評で、肝心のクラブ側からも変更を求める声が多かったというのだから、それも仕方ないだろう。

今季は豊田陽平など日本人選手もプレー

ただ、皮肉じみているのは9度目の変更となるその名称だ。「Kリーグ1」「Kリーグ2」は実は前出した13年の名称公募で最優秀賞に選ばれたものなのだ。

あのとき最優秀賞に選ばれても採択されなかったのは、「K1、K2と短縮されて呼ばれる可能性が高く、そうなると格闘技(K-1)やアウトドアブランド(韓国には“K2コリア”という登山ウェアブランドがある)を連想させる可能性がある」ということだったが、何よりも懸念されたのは、「K1、K2ではJ1、J2と類似し差別化が難しい」ということだったのは言うまでもないだろう。

そうした意地というかメンツさえもかなぐり捨てて、事も無げに「Kリーグ1」「Kリーグ2」への名称変更に踏み切ったKリーグ。

今季は、「最初は別の日本人FWを狙っていた」という蔚山現代に豊田陽平が期限付き移籍で加入。日本人選手たちの活躍にも注目が集まりそうなので、その呼び名がシンプルになったことは歓迎するが、名称変更はこれで最後にしてもらいたいものだ。

(参考記事:“多国籍化”が進む韓国Kリーグに日本人選手はどれだけいるのか)

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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