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「韓国にH組を引き当ててほしかった…」日本のW杯組み分けに韓国メディアが嫉妬?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
ハリルホジッチ監督(写真:つのだよしお/アフロ)

E-1選手権の男子の部は、韓国の優勝で終わった。昨日12月16日に行われた日本対韓国戦で、韓国は4-1の大勝。日本は前半3分にPKで先制するも、その後は前半だけで3失点を喫し、後半24分にはダメ押しの4失点目を喫して大敗した。

ともにヨーロッパでプレーする主力組を欠いた布陣だったとはいえ、日本が韓国に敗れるのは7年7か月ぶりだ。それだけにハリルホジッチ監督率いる日本代表の今後に関して雑音や不安も尽きない。

試合直後の記者会見では、「我々、日本人は今日の試合結果に絶望しています。ロシア・ワールドカップは大丈夫なのでしょうか」との質問が、ハリルホジッチ監督に投げかけられた。

果たしてロシアでハリル・ジャパンに勝算はあるのか。それについて組み分け決定後に韓国のサッカーメディア関係者に話を聞いていた。ひとつの参考に。

「韓国にH組を引き当ててほしかった…」

ロシアW杯のグループリーグ組み合わせ抽選の結果、H組に入った日本。コロンビア、セネガル、ポーランドと同組で対戦することとなったが、日本の抽選結果は、お隣・韓国でも報じられている。

「日本、“W杯優勝国なしのH組”にホクホク顔」(『東亜日報』)

「日本、2大会連続“蜜の組”、FIFAランキング13位のコロンビアと再び激突!」(『SPORTSQ』)

「H組に入った日本、今回も最高の攻撃陣を相手にする」(『sportalkorea』)

といった具合で、H組は、比較的突破が容易なグループだと評価するメディアが目立つ。

今回の抽選会では、出場32カ国中、31番目にくじを引いた韓国と32番目の日本が最後に残り、韓国が「死の組」と呼ばれるF組(ドイツ、メキシコ、スウェーデン、韓国)に入ったことを受けて日本の組分けが決まっただけに、「2018W杯組み合わせ抽選で明暗が分かれた日韓…“50%の確率でも日本に負けた”」(『朝鮮日報』)、「2018ロシアW杯組み合わせ抽選、小さなボール一つで韓国と日本の運命が分かれた…“日韓戦の気分”の声も」(『グローバル経済』)と、両国の結果を比較するメディアもあるほどだ。

(参考記事:「鬼神」「アンチ・フットボール」「日本の良さを置き去りに」韓国が報じてきたハリル・ジャパンへの“無慈悲”な指摘の数々)

そんな韓国メディアの本音を探るべく、現地のサッカージャーナリスト3人に話を聞いた。

「韓国にはH組を引き当ててほしかったです」と話すのは、大衆一般紙『中央日報』スポーツ部のサッカー班チーム長のソン・ジフン記者だ。

「韓国が対戦するF組のチームに比べ、H組のコロンビア、セネガル、ポーランドは、まだW杯でこれといった成績を残したことがありません。H組は、ポット4に属す国の立場からすれば、A組と並んで16強入りの可能性がもっとも高いグループだと言えます」

実際、韓国は11月にコロンビアと対戦し、2-1で勝利している。この一戦は、それまで不振が続いていた韓国代表が息を吹き返すきっかけにもなったが、韓国がH組を望んだことには、“死の組”を避けたかったという思いだけでなく、こうした成功体験も関係しているのかもしれない。

韓国のサッカー専門メディア『FOOTBALLIST』のリュ・チョン記者も語る。

「ポーランドとセネガル、コロンビアも強いですが、浮き沈みがあるチームでもあります。相手が自らプレーを乱して、チャンスを得られるかもしれません。韓国人ならば、H組に入りたいと願うのは、自然なことでしょう」

(参考記事:勝点3どころか1も難しい…韓国の“死の組”入りを現地記者たちはどう受け止めているのか)

ただ、サッカー専門誌『FourFourTwo』のホン・ジェミン編集長は、H組は混戦模様となると見ている。

「H組は、全チームに16強入りの可能性がありますから、実際はどうなるかわからない。その意味では、H組こそ本当の“死の組”と言えるかもしれませんね。それでも、あえてH組の順位を予想するなら、上からポーランド、コロンビア、日本、セネガルとなるでしょうか。日本は、コロンビアとポーランドに敗れ、セネガルに勝利。1勝2敗でグループ3位に入ると考えています」

一方、前出のリュ・チョン記者は、「日本は、コロンビアに負けなければ2位に入れる可能性もあるが、コロンビアに負けた場合は、最下位に終わるかもしれない」と予測する。

なぜ、そこまでコロンビア戦が重要になるのか。リュ・チョン記者は続ける。

「第2戦で当たるセネガルは、かつてのような強さはありませんし、守備も不安定。日本が勝てる見込みも十分にあります。また、ポーランドもFIFAランキング(7位)からイメージするほどの強敵ではありません。レバンドフスキーを組織的に抑え、ボール占有率を高めれば、日本も勝ち点1以上を獲得できるかもしれません。その点、コロンビアは、日本が前回大会でも敗れている強豪国です。コロンビアとの初戦で勝ち点1以上を得られれば、決勝トーナメントに進出する可能性も広がりますし、勢いにも乗れるでしょう」

セネガル、ポーランドとの2試合では勝てる可能性が高いからこそ、初戦を落とさずに弾みをつけることが大切だということだ。

それは裏を返せば、日本はH組で十分に戦える実力があるという評価でもある。ソン・ジフン記者もこう分析する。

(参考記事:「韓国よりレベルが高い」と現地記者も絶賛したハリル・ジャパンのクオリティ)

「ポーランドとコロンビアは、欧州リーグでプレーする選手が多いため、組織力に重点を置いたサッカーに慣れています。日本の組織力は、欧州でも上位に入るレベルにあるので、日本は両国とも十分に争えるでしょう。少なくとも、ポーランドには勝てるのではないでしょうか。ただ、アフリカ勢のサッカーはまったくスタイルが異なるので、セネガルには注意したい。個人技とスピードを止められなければ、思わぬ敗北を喫するかもしれません」

はたして、ハリル・ジャパンはロシアW杯で、グループリーグを突破することができるだろうか。その行方には、韓国も注目している。

(初出:『サッカーダイジェストWEB』2017年12月7日掲載)

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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