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ファンクラブもある“アイドル選手”が主軸!なでしこと対戦する韓国女子代表の実力は?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
キプロスカップでの韓国女子代表(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

今日から日本で開幕する「EAFF E-1選手権」。男子・女子ともに日本、韓国、中国、北朝鮮の4カ国が東アジアの頂点を争うが、なでしこジャパンは、初戦で韓国代表と対戦する。

なでしこジャパンは“リスペクトの対象”

現在、韓国のFIFAランキングは15位。8位の日本ばかりか、北朝鮮(10位)、中国(13位)よりも順位は低い。大会出場国の中では、日本がトップで、韓国が最下位である。

また、日本との通算戦績も、4勝9分14敗と劣勢に立っている。それゆえ韓国では、男子サッカーでは「日本には絶対に負けられない」と対抗心を燃やす一方で、女子サッカーに関しては、「日本を見習え」という論調のほうが多いのが特徴だ。

(参考記事:韓国が見た“なでしこジャパン”「日本はリスペクトとお手本の対象」

ただ、直近の日韓戦では韓国の健闘が目立つ。

2013年にソウルで開かれた同大会の対決では、韓国で“日本キラー”と呼ばれるチ・ソヨンが2ゴールを挙げて2-1で勝利。2年後の同大会でも同じスコアで日本を破り、昨年3月のリオ五輪予選では1-1で引き分けている。

(参考記事:“韓国のメッシ”ことチ・ソヨンが“日本キラー”と呼ばれているワケ

こうした戦績には、韓国メディアもスポットライトを当てている。「“韓日戦の無敗行進を続けよう”女子サッカー代表、8日に日本と激突」(『聯合ニュース』)、「“E-1選手権”日本はない…韓国女子代表、同大会での韓日戦3連勝に挑戦」(『スポーツソウル』)といった具合だ。

「韓国女子サッカー界のアイドル」がチームの軸

それだけに気になるのは、今大会に臨む女子韓国代表の現状だろう。

2012年12月からチームを率いているのは、ユン・ドクヨ監督。2015年女子W杯では、韓国を史上初めて決勝トーナメント進出に導いた指揮官だ。

以前、韓国の人気女子アナウンサーで、ベルギー代表のアドナン・ヤヌザイに似ていることから“イェヌザイ”の愛称で親しまれている韓国の“サッカー女神”チャン・イェウォンが司会を務めた2015年KFA授賞式でも、その功績を称えられていた。

決して選手を怒鳴りつけず、むしろ優しく包み込むようなその指導は、“アッパ(お父さん)・リーダーシップ”とも称されている。その人柄ゆえ、選手からも信頼が厚い。

筆者も以前、ユン監督がKリーグの蔚山現代でコーチをしていたときに何度が取材したことがあるが、物静かでソフトな印象だった。

ちなみに現役時代のあだ名は“コプルソ”。動物のサイのことだ。現役時代はアグレッシブな守備で知られ、韓国代表のDFとして出場した90年イタリアW杯のウルグアイ戦では、一発レッドで退場したこともあったが、指導者に転身してからは真逆のイメージが付いているというのは面白い。

ユン監督は、「客観的には足りない部分も確実にあると思いますが、勝利に対する思いはどのチームよりも強い」と話しているが、実際、今大会の選手構成はベストとは言い難い。

海外リーグでプレーする前出のチ・ソヨン(チェルシー)とチョン・ガウル(メルボルンV)が招集されなかったのだ。

もっとも、その空白を埋めると期待されている選手もいる。イ・ミナだ。“韓国女子サッカー界のアイドル”といわれるビジュアルも話題を呼んでいるが、来季からはINAC神戸に所属する彼女は実力もある。

(参考記事:なでしこジャパンとも対戦した“韓国女子サッカー界のアイドル”イ・ミナが超絶かわいい!!

仁川現代製鉄でプレーした今季は、国内WKリーグで14ゴール10アシストを記録。得点ランキング2位に入った。「技術やパスなど精密なサッカーにおいては国内最高レベル」(『Interfootball』)と評されるだけに、なでしこジャパンの守備を翻弄するかもしれない。韓国メディア『韓国スポーツ経済』などは、「E-1選手権の日韓戦、決め手はイ・ミナ」と報じているほどだ。

また、DFで“美女サッカースター”と呼ばれるシム・ソヨンは今回、招集されなかったが、豊富な運動量から“女子版パク・チソン”と呼ばれる主将のチョ・ソヒョン、2010年のU-17女子W杯優勝メンバーであるシン・ダミョン、チャン・スルギ、イ・ソダム、イ・ジョンウンなど、なでしこジャパンの脅威となり得る選手は少なくない。

ユン監督は、イ・ミナを軸に、基本のフォーメーションである4-1-4-1に加えて4-2-3-1も使い、海外組が抜けた穴をカバーすると明かしているが、結果はどう出るか。

今大会、優勝を目標に掲げている韓国代表。早々に来日し、最終調整を行ってきたが、特に初戦の日本戦は大事な一戦になるという。ユン監督はこう語っている。

「日本戦の結果によって、その後の成績も左右されるでしょう。日本も初戦である分、全力で試合に臨むはずです。相手はホームで有利な点も多い。しかし、あきらめずに、最後まで戦い抜きます」

そんな韓国女子代表を、なでしこジャパンはどう迎え撃つか。キックオフは今夜18時55分。勝負の行方に注目したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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