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ロシアの“出場禁止”に揺れる韓国・平昌五輪…「客足に赤信号」か「メダルのチャンス」か

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:ロイター/アフロ)

開幕まで2カ月となった平昌五輪に、大きな注目が集まっている。

国際オリンピック委員会(IOC)がドーピング問題に揺れるロシアを平昌五輪から排除すると発表したのだ。ロシアの選手団の派遣は禁止となり、一定条件をクリアした選手だけが個人として参加することになるという。

「平昌ダウンコート」で盛り上がっていた矢先に

韓国にとっては、良くないタイミングだろう。

入場券の販売率が50%を超えたり、ロッテ百貨店の企画した「平昌ダウンコート」が飛ぶように売れたりと、長らく低かった韓国国内のオリンピックへの関心がようやく高まっていた矢先のことだったからだ。

(参考記事:あの美女も着た!! 韓国で大人気の「平昌ダウンコート」に身を包む“ふかふか女子”がかわいい

現実問題としてロシアの出場禁止は、韓国にとって痛手としかいいようがない。

『聨合ニュース』が「ロシア、平昌冬季五輪の出場禁止…NHLの不参加に続き、興行に“直撃”」と見出しを打っているように、観客動員に影響を与える可能性が高いのだ。

例えば、冬季オリンピックの“花形競技”といえる男子アイスホッケーだ。韓国は男子アイスホッケーで好成績を残そうと、「特別帰化政策と移民監督」という2本柱で強化を進めてきたが、ロシアが不出場となれば、男子アイスホッケーへの関心低下は免れない。

KHL(コンチネンタル・リーグ)でプレーするロシア人選手たちもオリンピックのリンクに立てなくなるからだ。

外国人の韓国籍変更を推し進めていたが…

ただでさえ平昌五輪には、世界最高峰のプロホッケーリーグであるNHLが選手を派遣しないことが決まっているが、「NHLに続いてKHLまで、リーグ所属選手のオリンピック出場を認めない場合、平昌冬季五輪のアイスホッケー大会のレベルは、従来の大会と比較できないほど落ちる」(『聨合ニュース』)ことになってしまう。

NHLに続きKHLも欠けるとなれば注目度は大きく下がり、たとえ韓国が好成績を残せたとしても、そのインパクトは弱いものとなるだろうというわけだ。韓国の帰化政策は男子アイスホッケーだけではないのだが、何とも皮肉なことだ。

(参考記事:平昌五輪のために外国人の“特別帰化”を続々と許可せざるを得ない韓国の実情)

ちなみにアメリカの『ニューヨーク・タイムズ』紙によれば、ロシアには平昌五輪の全102種目のうち、32種目でメダル圏内の選手がいるとのこと。女子フィギュアのエフゲニア・メドベデワなどは、その筆頭だろう。

そういったメダル候補がオリンピックに出場しないとなれば、「オリンピックの興行に赤信号」(『SBS』)と韓国メディアが嘆く気持ちもわからなくはない。

ロシアがいないならライバルは…日本!?

ただ興行はともかく、自国のメダル獲得という側面だけを考えれば、ライバルは少ないほうがいいという考えもあるようだ。

ネット上には「女子フィギュアに関してはロシアがいなければ少しはチャンスが出てくる」「むしろ見にいく人が増えるのでは?」といったコメントもあった。

それほど開催国である韓国は、メダル獲得に執念を燃やしているといえよう。韓国でメダルの期待が高い女子スピードスケートでは、日本の高木美帆を“目の上のこぶ”扱いするほどだ。

(参考記事:女子スピードスケート高木美帆を韓国が“目の上のこぶ”扱いする理由

女子スピードスケートでいえば、高木美帆だけでなく、小平奈緒を見つめる韓国の視線も複雑だ。

韓国で小平は“氷上の女帝”と言われるイ・サンファの対抗馬で、韓国メディアの中には“異例の小平攻略法”を提言するところもある。ファンの間でも、ふたりの対決には早くも注目が集まっているようだ。

いずれにしても、開幕まで残り2カ月というところで、ロシア出場禁止という大きなイシューが出た平昌五輪。開幕を迎えるその日まで、これ以上の事件が起こらなければいいが…。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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