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韓国の“旭日旗クレーム”が過剰にグローバル化していることへの“危うさ”

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:ロイター/アフロ)

旭日旗を真っ二つに切り裂く映画が話題

7月に韓国で公開予定の映画『軍艦島』の予告映像が物議を醸している。予告映像の最後に、旭日旗を真っ二つに引き裂くシーンがあるのだ。

映像を見た韓国ネット民たちは、「旭日旗を切る瞬間、鳥肌が立った」「早く(映画を)観たい」「予告編を見て鳥肌がたったのは初めて」などといった反応を見せているという。同映画は何かと話題になっていたが、今回公開された予告映像のラストシーンはインパクトが強すぎた。

(参考記事:日韓関係に新たな亀裂が…今年最大の反日映画とされる『軍艦島』をめぐるバトル

そんな映像や反応を見ればわかるように、旭日旗は現在、慰安婦問題や竹島問題と同じような韓国の政治イシューとなっている。

少しでも旭日旗を連想させるようなデザイン、模様、形があれば、激しいクレームが飛んでおり、その動きが日を追うごとに過剰に、そしてグローバル化していると感じてしまう今日この頃でもある。

“旭日旗クレーム”に世界が困惑

例えば去る6月20日、アメリカの有名歌手ケイティ・ペリーがインスタグラムに、自らがデザインを手がけた靴の写真をアップしたのだが、韓国ではその写真の赤白の背景が「旭日旗」を連想させるとして、非難の声が上がった。

韓国ネット民たちは「どう見ても戦犯旗じゃないか」「逆立ちして見ても旭日旗だ」などとコメントをしている。見方によっては確かに旭日旗のデザインによく似ているかもしれないが、写真をアップしたケイティ・ペリーからすればいい想像するらしていなかったクレームであり、いい迷惑だろう。

ただ、こうしたことは今回のことに限ったことだけではない。言いがかりとしかいいようがない“旭日旗クレーム”が飛んだ出来事は、パリのファッション展示会で発表された展示物や映画『ベイマックス』の風景のひとコマなどなど、枚挙に暇がないほどなのである。

(参考記事:狙いは日本だけではない!! グローバル化する韓国の“旭日旗クレーム”に世界が困惑

つい先日も、バーガーキングが韓国で発売開始したズワイガニワッパーの包装紙がターゲットになっている。白の背景に赤いズワイガニが描かれている包装紙なのだが、それが旭日旗を連想させるというクレームだ。

『韓国経済』によると、一部のネット民たちはバーガーキングを“親日企業”などと称して攻撃中とのこと。バーガーキング側は「カニの形を見たままに描いただけ」と困惑しているという。当たり前の話だろう。

原因は“嫌日”感情…若者は気にしない!?

もちろん、過剰すぎる旭日旗クレームに対して、苦言を呈する声も多い。

韓国のとある文化批評家は、「カニの形から旭日旗を連想するのはナンセンス。民族主義に傾倒した“嫌日”だ」と指摘した。

また、韓国メディアの質問に答えたソウル大学名誉教授も「いつものように、旭日旗をめぐる議論も日本に対して抱いている一種のコンプレックスの作動」と非難している。そんなところに原因があるわけだ。

つまり、過剰な“旭日旗クレーム”をしているのは、現実的に考えても、ごく一部の人たちなのである。

中央日報系のテレビ局JTBCのニュース番組が伝えたところによると、韓国の若者たちは旭日旗に対して「名称は知らない」「日本をバカにするために、日章旗にストライプを合成したもの?」「(旭日旗の模様が)服に入っていても、ただのデザインだなと思う」とコメントしている。

旭日旗を連想させるファッションを取り入れるなど、韓国アイドルたちは旭日旗にオープンすぎるほどなのだ(韓国国内では後にバッシングされるが)。

「慰安婦は売春婦」と主張した女性教授が…

とはいえ感情的な言いがかりは、表現の自由を締め付ける危険水位まで進行中との危惧もあり、看過できるものではないだろう。

思い出されるのは、『帝国の慰安婦』という書籍で、慰安婦を「売春婦」と主張した韓国の女性教授だ。名誉毀損で訴えられた彼女が一審で無罪になった際、「韓国の司法は親日派だ」などという非難が殺到するほどの事態になったこともあった。

(関連記事:韓国で慰安婦を「売春婦」と主張したらどうなるのか。とある女性教授の“末路”とは

韓国の人々が抱く旭日旗に対するネガティブな感情を否定はしない。サッカーの現場で旭日旗が問題になるたびに、「なぜ相手が嫌がり挑発することをあえてするのだろうか」と、さびしく残念にも思う。

ただ、世界中で過度な“旭日旗クレーム”が展開されていくことは、結果的には韓国のイメージを悪化させることにもなる。韓国の側も感情的な非難は是正していかなければなければならないと思うのだが…。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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