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SMAP分裂と韓国国民的グループの悲劇と相違点。独立メンバーに待ち受けるものとは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

解散したSMAPのメンバーが大きく2つに分裂するという。ジャニーズ事務所に残留する中居正広・木村拓哉と、退所を決めた稲垣五郎・草なぎ剛・香取慎吾だ。一時、残留派は木村拓哉だけで、その他の元メンバーは独立派といわれていたが、最終的には2対3という構図となった。

日本のトップアイドルの騒動だけに、お隣・韓国でも注目を集めている。

(参考記事:「香取は手が付けられない」SMAP”分裂”報道に対する韓国メディアとファンの本音

国民的アイドルグループの分裂と聞いて思い出すのは、東方神起の解散・分裂騒動だ。

東方神起は、奇しくもSMAPと同じ5人で2004年1月に韓国でデビュー。同年末には韓国の歌謡賞を総なめにし、2005年に日本デビューするとそこでも人気を集めた。NHK紅白歌合戦にも出場している。

韓国で国民的アイドルとなり、日本でも人気を博した東方神起だったが、2009年7月末、ジェジュン、ユチョン、ジュンスが所属事務所SMエンターテインメントへの専属契約の効力停止処分を申請。それによって、分裂の危機に立たされることになる。

裁判所は和解を勧告するなどしたが、結局のところ調停は失敗。ユンホとチャンミンは「東方神起」としてSMに残留し、他の3人は「JYJ」として独立することになった。単純に残留派と独立派の人数を比べると、SMAPと同じ状況になることがわかるだろう。

今では東方神起とJYJともに日韓で絶大な人気を誇っているが、注目したいのは、分裂後に独立した3人が置かれた状況だ。

JYJはSMとの専属契約問題や日本国内での独占マネージメント権利など訴訟問題が長引くのだが、2012年11月、JYJとSMの法廷闘争は事実上終結。当時SM側は「3人が東方神起として活動する意思がなく、SMがこれ以上3人のマネージメントをする理由がないと判断した」とコメントを発表したのだった。

これに対して多くの韓国メディアが「JYJは葛藤を乗り越えて自由に活動できるようになった」と報じた。

しかし、そんな楽観的な推測は裏切られる。JYJは業界トップクラスのCD売り上げを誇ったにもかかわらず、音楽番組に出演できないという状況が続いたのだ。

SMをはじめとする放送業界全体がJYJに圧力をかけている――。そんな噂が流れた。韓国において大手芸能事務所は、韓国芸能界において絶対的な影響力を持っているといわれているからだ。

(参考記事:東方神起の帰還に、BIGBANG不在…。韓国3大芸能事務所の最新事情

そんな噂に拍車をかけたのが、韓国・民主党パク・ソンスク議員による告発だった。

それは、「大衆文化関連の協会で構成される韓国大衆文化芸術産業総連合会は、東方神起出身のJYJとの放送出演および交渉など一切の行動を自制するよう明記した公文を放送各社および芸能関連事業者に送付した」というもの。

告発を受けた韓国公正取引員会は2013年7月、JYJの放送出演および歌手活動に支障を来しているとして、SMと韓国大衆文化芸術産業総連合に対して是正命令を下している。

国の公的機関が、芸能事務所に是正措置を出すのは異例の措置だが、SMは本当にJYJに圧力を加えたのだろうか。

それについてはさまざまな意見があるが、ただでさえ“雨後のタケノコ”のようにアイドルグループが毎年デビューする韓国芸能界である。だけに、大手事務所としての論理や主張も働いただろうし、JYJの側の言い分にも一理あっただだろう。

どちらが悪くどちらが正義だと白黒はっきりつけることは難しいが、この東方神起騒動がK-POPアイドルグループのひとつの実態を浮き彫りにしたのには変わりはなかった。

(参考記事:成功できるのは一握り!! K-POPアイドルグループ凄絶サバイバル競争の実態

いずれにしても、大手事務所から独立して結成された新グループには、少なからぬ紆余曲折や試練か待ち受けることになるという事実が韓国にはあった。

韓国の事例を日本にそのまま当てはめるのはあまりに強引だろう。それでもSMAP関連報道のコメントを見ると、「ジャニーズの圧力を受けず、仕事があることを切に願います」などとあるだけに、心配は尽きない。

韓国ではSMAPメンバーたちの人気と信頼が厚く、看板番組『SMAP×SAMAP』終了時には、多くのファンたちが悲しみに暮れた。「ビートルズが解散したときもこんな感じだったと思う」という韓国ファンたちのSMAP評が出たほどだった。

東方神起とJYJが今でも高い人気を誇っているように、SMAPの元メンバーがこれからも活躍してくれることを願うばかりだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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