Yahoo!ニュース

文在寅大統領は自国を“ヘル朝鮮”と揶揄する韓国の若者たちを救えるのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

新たな大統領が就任し、心機一転といった雰囲気のある韓国。今回の大統領選挙に関してKBS・MBC・SBSが共同で行った出口調査があるのだが、世代間の支持率が興味深い。

若者から絶大な支持を受けて当選

大統領に当選した文在寅(ムンジェイン)氏と、2位だった洪準杓(ホン・ジュンピョ)氏の世代別支持率を比べてみよう。前出の出口調査によると、以下のようになる。

20代:文在寅47.6%-洪準杓 8.2%

30代:文在寅56.9%-洪準杓 8.6%

40代:文在寅52.4%-洪準杓11.5%

文在寅が若者から圧倒的な支持を受けていたことがわかる。しかし、50代以上になるとまったく別の結果となった。

50代:文在寅36.9%-洪準杓26.8%

60代:文在寅24.5%-洪準杓45.8%

70代:文在寅22.3%-洪準杓50.9%

50代こそ文在寅の支持率が上回ったが、40代の結果とは雲泥の差であることがわかるだろう。60代と70代では、洪準杓を支持する人のほうが多かったという結果だ。この世代間の格差は、前回の大統領選挙(2012年)でも見られた。

つまるところ、韓国の若者たちが文在寅大統領を圧倒的に支持していたわけだ。

そこに、自国を“ヘル朝鮮”と揶揄する韓国の若者たちの苦悩がにじみ出ているような気がしてならない。

「地球上で真っ先に消え去る国」とも…

というのも昨年、OECDは韓国の青年失業率(15~29歳)を10.7%と発表した。2012年から右肩上がりの数字だ。日本が5.2%であることを踏まえると、倍以上の失業率ということがわかる。

職がないだけでなく、給料も低い。韓国国民年金公団の統計によると、25~29歳の男性53%、30~34歳の男性36%が年収2400万ウォン(240万円)以下だという。

仕事が少なく、給料も低い。そうなれば当然、結婚しようとする若者は減らざるを得ない。

実際に韓国では“結婚氷河期”が到来しており、少子化が加速中。イギリスのオクスフォード人口問題研究所などは「地球上で真っ先に消え去る国は韓国」と指摘しているほどだ。

(参考記事:「地球上で真っ先に消え去る国は韓国」…3年後に迎える“人口絶壁”の原因は

働く場所がなく、給料が低いのならば、自ら起業すればいいと思うかもしれないが、それも難しいのが韓国社会の現状だ。

起業を後押しする社会制度が貧弱と指摘されており、韓国貿易協会国際貿易研究院の報告書によると、韓国の大学生・大学院生のうち、起業を希望する人は6%にすぎなかった。

韓国の若者たちのモチベーションが低いからではない。起業しても大富豪になれる可能性がほとんどないからだ。日本や世界の大富豪と比べてみると、韓国の大富豪だけが“異質”であることがよくわかる。

(参考記事:日本と韓国の大富豪は何が違う? 億万長者の成り立ちに見る韓国の経済格差

現在の韓国は若者たちにとってまさに“ヘル朝鮮”なのだが、「それを変えてくれる人物」として文在寅大統領は大きな期待を集めているわけだ。

もし期待を裏切られたら“脱韓国”!?

その期待が裏切られるようなことがあれば、近年、高まっている移民志向がさらに進む可能性があるだろう。

とあるアンケートで「チャンスがあれば海外へ移住する意向がある」と答えた20代、30代が7割以上もいただけに、“脱韓国”を実行する若者が次々と出てくるかもしれない。

(参考記事:「ヘル朝鮮はもうこりごり…」“脱韓国”を夢見る韓国の若者たちが選ぶ「移住先」とは?

だからこそ、新たに就任した文在寅大統領には、若者たちの期待を裏切ってほしくはないが、はたして。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

慎武宏の最近の記事