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美しき「感動マッスル美女」も誕生…絶望を希望に変える!?韓国マッスル・ブーム

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
『マッスルマニア』授賞式の様子(写真提供:SPORTS KOREA)

その健康志向の高さから近年は空前の“マッスル・ブーム”に沸く韓国。そのブームの牽引役と言える『マッスルマニア・アジアチャンピオンシップ』が4月28日・29日の2日間に渡って行われたが、今回はいつもと違って意外な感動エピソードが多かった。

過去に本欄でも何度か紹介していきたが、『マッスルマニア』はボディビル&フィットネスで鍛えた肉体美を競う大会として1991年からアメリカで始まり、韓国では“奇跡のDカップ女神ボディ“ユ・スンオクが2011年に東洋人としては初となるトップ5入賞を果たしたことで広く知れるようになった大会である。

特に今回からは『アジアチャンピオンシップ』の言葉通り、大会の格付けもアップ。そのため、主催者側は今回から審査員を72名に増員して厳選なる審査を行なうとしたほどの関心と熱気が集まったようだ。

(参考記事:今年のマッスル美女は誰だ? 韓国で行われたマッスル・マニアの熱い現場を見よ!)

そんなメジャーな“マッスル・コンテスト”で大会前からメディアで注目されていたのは、チェ・ミンジだった。

実は彼女、韓国ではちょっとした有名人だ。韓国のプロバレーボールやプロバスケットボール(KBL)などでチアリーダーとして活躍し、現在はプロ野球KIAタイガースのチアリーダーを務めている。

身長170センチということから韓国では“長身チアドル”、“美脚の健康美女”と言われ、その風貌がどこか日本のアイドル・グループのメンバーに似ていることもあって筆者もその名前を知っていたが、そんな彼女が『マッスルマニア』に出場したのだ。

プロ野球のチアリーダーの“マッスル美女”と言えば、韓国のリアルタイム検索ランキングで1位になったこともある“波乱万丈の人妻チアドル”ペ・スヒョンが有名だが、チェ・ミンジの『マッスルマニア』挑戦が話題になったのは、彼女が早くからそのための準備を重ねてきたからだった。

なんでも昨年夏頃から筋肉美を磨くほかの女性たちに刺激を受け、11月頃から本格的なトレーニングを始めたという。ボディビル国際大会出場歴もあるパーソナルトレーナーからレッスンを受けてきただけに、かなり本格的だった。

(参考記事:“健康美チアドル”チェ・ミジンに完全密着!麗しきマッスル・クイーンへの道)

そんな努力が実ったのかチェ・ミンジはファッションモデル部門で2位に輝いている。「自分の限界に挑戦したくて『マッスルマニア』に出場しました。今は達成感でいっぱいです」という受賞のコメントは、野球ファンはもちろん、一般女性たちを大いに感動させたという。

ただ、このチェ・ミジン以上の話題となったのは、『マッスルマニア』ファッションモデル部門でグランプリに輝いた女性だった。

彼女の名はイ・ヨンファという。その美しい顔立ちとボリューム感あふれるボディラインもさることながら、審査委員や観客たちが驚かされたのは彼女が受賞スピーチで放った衝撃の事実だった。

「実は2年前、右耳に聴覚障がいがあるという判定を受けました。学生時代は生徒会長を務めるなど何事にも積極的でポジティブな性格ですが、あのときは人生を放棄したいくらい辛かったです」

ただ、そんなときに目にしたのが“マッスル・コンテスト”であり、それに影響を受けて体を鍛えるようになったという。

「運動は、私にふたたび仕事と人生を始めるキッカケを与えてくれたありがたい存在です」

まさに彼女は、絶望の中で希望を見つけ、体を鍛えることで降りかかった困難を乗り越え克服したわけだ。

韓国メディアも、「イ・ヨンファ、聴覚障がいを乗り越え“マッスル・クイーン”に。絶望から希望に」(スポーツ新聞『スポーツ・ソウル』)、「聴覚障がいを宣告されゴッホを思い浮かべたひとりの女性、マッスル・クイーン優勝に」(『中央日報』)など、大手スポーツ新聞や一般紙までもがその感動ストーリーを報じている。まさに、感動マッスル美女の誕生といったところだろう。

(参考記事:障がいを乗り越えてマッスル大会のグランプリ!! 次世代マッスル美女イ・ヨンファがすごい!)

そして、こうした感動秘話を目の当たりにすると、韓国の“マッスル・ブーム”が単なる健康志向や筋肉自慢の範疇では収まらなくなる。

今年もボディビルダーはもちろん、フィットネス・トレーナーやインストラクターなどが参加しただけではなく、サラリーマンやOL、主婦や高校生まで参加したというが、きっと、参加者の数だけ“さまざまな物語”があるのだろう。

もしかして韓国で“マッスル・ブーム”が衰えないのは、そこに涙と感動の“人生劇場”があるからなのかもしれない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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