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強くて美しく社会貢献にも積極的なイ・ボミ5冠の快挙を韓国はどう報じたか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
今年は韓国でも試合出場したイ・ボミ(写真提供:KLPGA)

2016年の日本女子プロゴルフツアーも、イ・ボミの活躍が目立った1年となった。12月20日に行われた『LPGAアワード』でも、イ・ボミの独壇場。2年連続の賞金女王に加え、平均ストローク第1位、メディア賞のベストショット部門、年間最優秀選手、『LPGA SHISEIDO Beauty of the Year』と5冠を達成した。

この快挙はもちろん、韓国でも詳しく報じられている。「イ・ボミ、JLPGA受賞式で史上最多5冠王に登録」(『マイデイリー』)、「イ・ボミ、史上最多の5冠王に」(『Newsen』)、などだ。2年連続して賞金女王に輝いたときは、一部のメディアが物足りなさを指摘したりもしたが、さすがに今回はそうした指摘も見当たらない。

(参考記事:イ・ボミ2年連続“賞金女王”の快挙を韓国メディアはどう報じたか)

『アジア経済』などは「イ・ボミ、“私が日本のゴルフ女王”」(『アジア経済』)と堂々と報じたほどである。

韓国メディアは「ハンボクを着て日本の受賞式に」(『スポーツ韓国』)、「化粧にハンボクまで〜華麗な5冠王イ・ボミの微笑み」(『THE FACT』)といった具合に、イ・ボミの衣装も取り上げている。

ハンボクを漢字で書くと「韓服」となる。日本ではどういうわけかチマ・チョゴリと表現されることが多い(間違いではないが)韓国の伝統衣装だが、「韓服」と表現したほうが正確で品がある。

ちなみにイ・ボミが公の場で韓服姿を披露したのは今回が初めてではない。昨年のKLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)アワードでも美しい韓服姿を披露している。

そのときはKLPGA海外特別賞を受賞したが、今回のLPGAアワードで受賞した『LPGA SHISEIDO Beauty of the Year』はイ・ボミにとっても嬉しい賞になったに違いない。

何しろ成績だけではなく、社会への貢献姿勢や内面・外面の美しさを兼ね備えた選手に与えられる賞である。

言わば「強さと美しさと健やかさ」の三拍子を揃えていることの証でもあるが、イ・ボミは強くて美しいだけではなく、寄付やチャリティー活動にも積極的で日本社会に貢献しようという意識も高い。

(参考記事:イ・ボミや申ジエなど日本で活躍する韓国女子ゴルファーたちの「深イイ話」)

イ・ボミ本人は「自分じゃないと思っていた」と謙遜したようだが、彼女は第1回目の受賞者にふさわしいと言えるだろう。

そんなLPGAアワードで満面の笑みを浮かべていたイ・ボミの姿を見てふと思い出したのは、彼女と初めて行なったインタビューだ。日本初挑戦を控えた2011年1月、東南アジアでキャンプ中のイ・ボミに電話インタビューしたあと、彼女からこんな文面のメールが返ってきた。

「まだ日本で活躍していない私に関心を持ってくださって、ありがとうございます。日本で良い活躍をお見せできるように頑張ります」

絵文字が入っているあたりが、今どきの女の子らしかったことを今でも強く覚えている。

あれから5年。今やイ・ボミは日本で活躍しているどころか、多くの賞賛と愛情を集める女子プロゴルファーになった。

この5年間のことや関係者が語ってくれたイ・ボミの魅力については、今月15日に上梓した『イ・ボミはなぜ強い?〜知られざる女王たちの素顔』でも触れているが、彼女の活躍と人気のおかげで、日本で韓国女子ブロゴルフへの関心も高まり、その名が知られるようになった選手も増えてきている。

(参考記事:イ・ボミ効果で注目され始めた韓国女子プロゴルフ界の美女ゴルファーたち)

それもすべてイ・ボミ効果であり、イ・ボミこそ日本と韓国のゴルフ交流を盛り上げる “架け橋”になっていると言えるだろう。

2015年に続き、2016年も日本の女子ゴルフを大いに盛り上げてくれたイ・ボミ。早くも3年連続の賞金女王のタイトルを期待する声もあるが、当分はしっかり休んでリフレッシュしてふたたび最高のスマイルを見せてほしいものである。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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