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芸能人とスポーツ選手の呆れた不正回避のせいで、韓国の兵役ルールが変わる!?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
兵役は成人男子の義務である以上、不正回避は許されない。(写真:大韓民国国軍/ロイター/アフロ)

韓国では成人男子に約2年の兵役義務があるが、K-POPアイドルやスポーツ選手の兵役に関する事項に変更が加わることになるかもしれない。

12月6日、韓国政府は国務会議を開き、現行の兵役法改定案を審議。それまで地域別に行われていた兵役入営時期を全国規模で管理していくことなどを決めたのだが、そのなかで芸能人やスポーツ選手の兵役事項を管理することを目的にした条項も、別途に設ける方向だというのだ。

韓国政府がこうした決定に踏み切った背景には、芸能人やスポーツ選手の兵役トラブルが絶えないからだろう。

例えばスポーツ界の場合、サッカー選手たちの兵役逃れ大量摘発事件が起きたり、2004年には不正に兵役を逃れようしたプロ野球選手が51人もいたことが明らかになったことがある。

(参考記事:韓国スポーツと兵役 追い詰められた選手たちの兵役逃れスキャンダル

芸能界でも兵役トラブルは後を絶たない。有名芸能人たちの不正回避もさることながら、2014年には不祥事が続いた結果、「芸能兵制度」が廃止さている。

現在、東神神起のユンホやJYJのキム・ジェジュンなどが陸軍で兵役を務めているが、もしも芸能兵制度があれば、彼らもそこに属していたことだろう。

「芸能兵制度」とは韓国国防部のPR活動などに協力するという理由から、一部の芸能人は実戦部隊への配属が免除される制度だったが、もともと「芸能人たちを優遇している」として賛否両論が多かった。

そんななか、2013年に兵役期間中だったタレントたちが規律違反を犯してデートしていただけではなく、ほかのK-POPアイドルは風俗店などに出入りしていたことが発覚したことで、世論の反発が噴出。廃止されるに至った。

(参考記事:軍隊で芸能人の特別扱いがなくなる…“芸能兵制度”の廃止

こうした不祥事が続出していることもあって、韓国では「スポーツ選手や芸能人の兵役不正回避は多い」ということが都市伝説のようにまことしやかにささやかれてきた。

その一方で近年は進んで兵役の義務を務めるスポーツ選手や芸能人が増え、そうした偏見が払しょくされつつもあった。

代表的なのが、ヒョンビンである。自ら志願して海兵隊に入隊したヒョンビンは、兵役生活を模範的に送り無事に務め、一気にその株を上げている。

だが、そんなヒョンビン効果もむなしく、今年9月には野党「国民の党」キム・ジュンロ議員によって衝撃の事実が明らかになっている。

同議員が兵務庁から入手して公開した資料によると、2012年から2016年8月までの間に兵役の不正回避の疑いで摘発された若者が178人おり、そのうちスポーツ選手と芸能人が27人もいたというのだ。

しかも、その回避方法が呆れるものだった。13人の芸能人のうち、11人が健康診断時に「精神病を患っている」という病院診断書を提出して、それを理由に兵役を回避しようとしていたという。

韓国の兵役は徴兵検査により、1~7級の判定が下り、1~3級は精神的・肉体的に「問題なし」、4級だと「補充役」と呼ばれる公益勤務につくことになるが、とある芸能人は「幽霊が見えるなど、幻覚症状がある」という診断書を提出し、4級判定を受けていたというのだから、呆れてしまう。

また、スポーツ選手の不正回避は14人いたが、そのうち13人が故意に体重を急激に増やしてBMI(体重と身長の関係から肥満度を示す体格指数)の基準値を超過した診断書を提出。兵役を回避しようとしていたという。

こうしたことから今回の改定案では個人提出の診断書ではなく、兵役対象者の出身校に学生時代の健康記録の提出を要求できるようにすることも盛り込まれているが、関係者たちは「それとは別に、芸能人やスポーツ選手たちの兵役事項は別途管理していく」としている。

近年、韓国では進んで兵役の義務を務めるスポーツ選手や芸能人が増えており、除隊後も予備役活動を積極的に務めてきた。ソン・ジュンギやコン・ユなどは兵役を務めたあとも予備役訓練に参加している姿がネットで公開になって好感度がさらにアップしている。

(参考記事:ソン・ジュンギの軍服姿にファン大興奮!! 芸能人も避けて通れない予備軍訓練

その一方で、あの手この手を使って不正に兵役を逃れようとする事例が後を絶たない現実が、今回の改定案に至っているという見方だ。何かと優遇論が囁かれる芸能人やスポーツ選手の兵役不正を徹底的に取り締まっていく姿勢を示しているが、はたして…。

K-POPアイドルや韓流スターたちの兵役問題は、日本のファンたちにとっても気になる話題なだけに、その動向には注目が集まりそうだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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